第6話 襲撃

 奴らより先に到着して、配置状況を確認していなければ多少は不利だったかもしれない。だが、相手の位置を把握しており、発砲のタイミングを予測していた俺にとって反応するのは朝飯前だった。右手を振って釘を投擲する。同時に3本の釘が飛び、目の前の男たちの眉間に深々と刺さる。同時に前方に跳躍して、男たちの側を駆け抜けた。


 戦闘は5分もかからずに終わった。わざと殺さなかった一人を尋問する。一番いい身なりをした男だ。

「さて、質問に答えてもらうか。誰の指示で動いている?」

「くそったれ。イキがっていられるのも今のうちだぜ。仲間が……」

「お前がファミリーの末端ですらない街のチンピラってことは分かってるんだ」


「なんだと?」

「それとも今回の件はファミリーの意向ってことなのか? それは驚きだな。じゃあ、お前のような下っ端に関わりあってる暇はないな。カミーロに直接聞くことにしよう。それじゃあ、安らかに眠るんだな」


 奴は俺が本気だということに今更やっと気が付いたようだ。

「待て。待ってくれ。何が知りたい?」

「だからさっきから言ってるだろう。今回の件は誰の依頼で俺を襲った?」

「それは……」


 答えに満足した俺は男を締め上げていた手を放して歩き出す。5歩歩いたところで振り返りもせず、後ろに釘を投げた。カチャリと何かが地面に落ちる音がして、ついでドタリと男が地面に倒れる。余計な事をしなければ長生きできたものを馬鹿な男だ。


 現場を離れある場所に向かいながら、マットに電話する。

「依頼人に伝えろ。5分だけ待つと」

「何があった?」

「ちょっとした手違いさ。報酬だけじゃなく、ちっちゃな鉛のプレゼントをもらったよ。その6人は今頃プレゼントの選択の誤りを地獄で後悔してるだろうがね」


「待ってくれ。俺は何も知らないんだ」

「慌てるなよ。マット。何もあんたが一枚かんでるとは思わないさ」

「ああ。脅かさないでくれ。急いで伝えるが5分では……」

「できるだけ急ぐよう伝えてくれ。このままだと100倍の人が死ぬとな」


 電話を切って、3分後電話が振動する。出るとあの耳障りな声の野郎だった。

「てめえ、何様のつもりだ」

「落ち着けよジョバンニ。今日俺に返り討ちにあって6人の男が死んだ。これはあんたの差し金かね?」

「なんだと?」

 ジョバンニの声に微かな驚きの響きが加わる。カミーロファミリーのナンバー3の名を俺が言い当てたことか、6人の男が死んだことか、どちらによるものなのだろう。 

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