第44話とりとめのない日々


「よしっ!新しい魔法を覚えたぞ!レベルアップでHP・MP回復したし・・早速使ってみよう!」


高鳴る気持ちを抑えきれず、僕は新しい事を試すことに。


「ベリリウム(Be)!!」


魔法を唱えると、白いエフェクトが僕の体を包み込んだ。

そして右手に持っている剣が、淡白い光を放っている。


「へぇ・・・なんだろう・・・え?ぐぇぇ!」


急に吐き気が・・・?なんで?

敵は近くにいないのに?

僕は慌ててメニュー画面を開き、魔法の欄を確認した。


「・・・なになに・・・ベリリウム(Be)は・・使用武器の攻撃力上昇と・・10%の確率で毒になる・・・!ってなんでやねん!」


「坊ちゃん!持ってますね♪10%を引くとは・・・流石毒男!ベェ!ベェ!ベェ!」


何だよ毒男って、お前の方がいつも毒づくんじゃねーか!

あ、よく見るとホントにメニュー画面に『毒 poison』と表示されている。

え?なんで?毒になるの?わざわざ?でも死にそうなぐらい気持ち悪いからな・・・。


「り、リチウム(Li)!!」


はぁ・・・なんでやねん!

まったく、MPもったいないな。

今レベルが5で、HPが34でMPが14・・・・。

でも今の不毛なやりとりでMP8減って残り6って・・・。

しかも剣のエフェクトは消えちゃったって言うね・・・。なんの成果も得られませんでした!

・・熱狂的なファンにパクつかれるかもしれないから、これぐらいにしておこう。分かる人だけわかればいいスタンスで・・。

さっきから・・僕なに言ってんだろう・・・?まだ、毒が残ってるのかもしれないな・・。


「カァ!カァ!カァ!」


鳴き声に気が付いて、僕は振り返った。

見るとカラスが2匹空から威嚇している。


「よっしゃ!やってやる!」


一回勝利したモンスターのカラス、倒し方はだいたい覚えたし。

僕は近くに落ちている岩のオブジェクトに向けて魔法を唱えた。


「ヘリウム(He)!!」


すると、魔法を吸収した岩が上空に向けて上昇した。

片方のカラスに命中して、地面へと落下してくる。

タイミングを合わせ僕は走り込んだ。

そして落ちてくるカラスの体を目掛け剣を振り抜いた。


「ガァ!!!」


今際の音を発して、カラスは僕に倒された。

もう一匹のカラスは僕を警戒して固まっている。

視線を上に移すと先ほど飛ばした岩がまだ宙に浮いていた。

新しい事をひらめいた僕は早速試すことに。


「ヘリウム(He)!!」


自分に向けて魔法を唱えた。

緑色のエフェクトが体の周りに発生した。

僕は必要な分だけ、緑の風を吸い込んだ。

瞬間体が浮き始める。

僕は宙に浮いている岩をめがけて、宙へと舞い上がった。


「うらぁあああ!!」


空中で体を反転させ、足で浮いている岩を力強く踏み込んだ。

ヘリウム(He)の魔法で浮力が付いた僕の体は、素早い速度でカラスへと移動した。

狙いを定めカラスの体を剣で切り裂いた。


「が、ガァ!!!!」


自分でもほれぼれする、一連の流れ。

僕はカッコつけて地面へと着地した。


「き、決まった!↑」


「あはははは!坊ちゃん!途中までかっこよかったのに、声が・・裏返ってますよ!ベェ!ベェ!ベェ!」


う、うるさいな!

あれれ・・体が宙に・・・・・!!


「あ~~れ~~!!↑」


ヘリウム(He)の魔法の効果で、僕はしばらく空中散歩を楽しんだ。

しばらくすると地面に着地した。


「ふぅ・・声も元に戻ったし・・でも、ヘリウム(He)の魔法はプレイヤーが好きに切り替えで切れば便利なんだけどな・・・」


「え?できますよ?坊ちゃん?メニュー画面に表示されている現在の魔法をタップすれば、魔法の効果を消す事が出来ますよ!ただし、次に使う時はまたMPを消費しますけどね!ベェ?気が付きませんでしたか?」


そう言えば画面の端に(He)って表示して合ったけど・・そう言う意味だったのね。

これでまた、戦闘の幅が広がるな。面白い!

でもちょっと用事が・・・。


「ご、ごめん!バフォちゃん、ちょっとトイレに行きたくなったから・・ここで待っててね。海岸沿いの岩の陰でお手洗いを済ませてくるから!」


「は、はい!わかりました!坊ちゃん!でも・・付いてきましょうか?ベェ!一人で大丈夫ですか?」


「だ、大丈夫だよ!なんでついてくんだよ!一人でできるよ!見られたら、小さい僕がさらに小さく・・・ってナニ言わせるんだよ!」


はぁ・・・まったく、デリカシーの無い奴!

僕は人目がないような岩場の影を目指して歩き出した。

ったく、僕のナニを見て何をしようとしてるんだか・・・趣味なの?僕と一緒で変態なのかな?バフォちゃん?

後ろを振り向けば地縛霊の様なバフォちゃんが・・・なんちゃって・・チラッ!


「な!?なんでついてくんだよ!頼むから一人でさせてくれる?ねぇ?見たいの?ナニしたいの?変態なの?」


「ちっ!ベェ!?気づかれたか・・そんなに一人でしたいんですね!!・・早くしてくださいよ!こっちも時間がないんだから!」


いやいやいやいや!

お前が・・・クッソ!マジでアルデバランしてやりたいよ!このクソ羊!いやクソヤギ!

その意味深な言い方やめろや!

あ・・あ・・漏れる漏れる・・・僕の膀胱がクライマックスシリーズ突入だよ!ってなんの話だよ!

急げ!急げ!


~小用を済ませバフォちゃんがいた場所~


「ふぅ!お待たせ!バフォちゃん!」


「は?!お手洗いですよね?手洗いました?!坊ちゃんの手に、今、夥(おびただ)しい数のタマ菌がいるんですよ!ベェ?」


「ナニの話だよ!銀魂かよ!手は・・・あ、洗ったよ!」


「いやキン魂(たま)の話だよ!坊ちゃん!ベェ?汚い菌魂(たま)野郎だな!だからもてないんだぞ♪」


バフォちゃんがじとーっとした目で僕の事を蔑(さげす)んでいる。

え?トイレに行っただけなのに・・何・え?

そんなに攻められないといけないの?これぐらいで?

ああ、やだやだストレス社会って・・。

僕はあきらめて海の水で手を洗う事に・・・。


「はい!手洗ってきたよ!バフォちゃん!」


「イヤイヤ!ベェ?海の水も汚いでしょ!」


「どうしろってんだよ!!」


必死な僕の顔を見てバフォちゃんが爆笑してる。

え?今の全部がワンセンテンスなの?

・・・・くっそ・・・何この敗北感?

え?僕が魔王であなたはコンシェルジュなんでしょ?

な、なんだかな~!!・・・ま・・楽しいけど・・。



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