第43話電気玉


「さぁて、到着っと!アイテムもたんまり買い込んだし・・・・強くなってダンジョンに行かないと・・」


「そうですね!ベェ!坊ちゃん!脱線ばっかりしたら、駄目ですよ!メッ!」


子供みたいに言いやがって!

お前が見ていこうって言ったんだろうが!クソ執事もどき!

全然役になってないな、コイツ!

ま、盛り上げ役としては十二分な働きだけど・・。賑やか師とか・・・ラジオみたいな存在かな?バフォちゃんは?

ま、面白い羊・・・ヤギなんだけどね・・。


「アイテムも買い込んだしっと・・・ひさしぶりの冒険だな・・ちょっと忘れてるって言うね・・・。あははは・・・はぁ・・」


いろいろな事があったけど、目的を忘れないようにしないと・・・。

早く強くなって、ダンジョンに行かないと・・・。

でもまだ、レベルが低いからな殺されそうだから・・・もうちょっと強くなってから挑戦しよう。


「よし、今日は海方面に行こう!」


まだ試してない事もあるしな・・・。

僕はフナ虫が蠢く海岸を目指した。

感情ゲージが今2ゲージか・・この前、蛇を倒した時に大き目の感情玉が出たからな。

あとは、リチウム(Li)の魔法を試したいな!

自分に使うと解毒魔法だったな、残りのオブジェクトと敵に使うとどうなるんだろう?


僕はメニュー画面のステイタスを確認した。

HPが30とMPが9か・・アイテムは99個大人買いしてきたから・・・。

初めて大人買いってしたけど・・・気持ちいいな・・その内、またしたいな。

HPの回復薬(小)のクールタイムが5秒で、MPの回復薬(小)がクールタイム10秒で設定してあるんだったな。

感情ゲージは残すように戦って行こう、MPは気にせずどんどん、じゃぶじゃぶ、じゃぶりんぐで使って行こう!

よし!


僕は敵を求め海岸沿いを歩いた。

晴れ渡る空、よせては返す波の音、そして蠢くフナ虫。

こうやって何かに没頭している時は、いろんな感情を忘れる事が出来る。

そんな時間が僕は好きなのかもしれない。


「出たな!」


僕の目の前にカニのモンスターが現れた。

モンスターの頭の上に『サワガニ』と表示されている。

よく海辺の家に現れる、小さめのカニだ・・こいつ、目の前の奴は大きいけど・・。

家の中にまで入ってくるからな、コイツ。懐かしい。


「あらら?1匹じゃないのかよ!」


正面からじゃわからなかったけど・・。

サワガニの背後からサワガニが現れて・・・・。

巧みな動きで横移動を繰り返している。

いや・・・見た目が同じだから・・目が回りそう。


「3・・4・・5・・6匹もいるし!上等ッ!」


サワガニ達は僕を円状に取り囲みクルクルと横移動をして来る。


「・・・目が回りそうだな!早速!リチウム(Li)!!!」


僕はサワガニをめがけてリチウム(Li)の魔法を唱えた。

瞬間手のひらから、球体上の青い電撃が放出される。

そして横移動をしていた1匹に、リチウム(Li)の魔法が直撃!

魔法が当たったサワガニは、感電して僕に倒された。


「よしっ!まずは一匹っ!電気魔法みたいだな!リチウム(Li)!」


新たな魔法で敵を倒し喜んでいたが、僕の背後に1匹のサワガニが忍び寄っていた。

気が付かなかった僕はそのまま、カニの鋭いハサミで攻撃を受けた。


「痛っ!この野郎!」


僕は攻撃を受けつつも、剣で反撃した。

しかし、カニの固い甲羅で剣が弾かれる。


「固っ!・・・どうしようかな?ゲージは使いたくないしな・・・。カニ・・カニ・・カニ」


僕はカニを食べる時を考えた。

わざわざ固い部分を狙わなくてもな・・・よし!やわらかそうな腹を狙ってっと!

敵を分析しつつ、ダメージを与えれそうな部位に狙いを定める事にした。

カニのハサミ攻撃を左手の盾で防ぎつつ、僕はサワガニの懐に潜りこんだ。

そしてそのまま、狙いの腹に剣を突き立てる。


『グシャ!!』


僕の放った剣での突き攻撃は、カニの体を貫いた。

そのまま2匹目のサワガニを撃破!

残るは4体!


仲間を倒されたサワガニ達は、目くばせをしている・・ように見える。

そして体を横に向けて、僕目掛け同時に突進してきた。

いきなりの攻撃で虚をつかれた僕は、突進を受けて吹き飛ばされてしまった。

約2メートルほど飛ばされて、僕は地面に倒れた。


「・・・痛いな!クソッ!って・・HPがやばいな、半分も減ってる!回復薬(小)をプッシュ!っと」


僕の体が緑色のエフェクトに包まれて、HPが30回復した。

目の前のメニュー画面に、5秒間のクールタイムの時計が表示されている。

時間が経つごとに数が減っていく仕様になってるみたいだ。

その間にもサワガニは僕に向かって突進してくる。


「ちょっとは待てよ!クソっ!ちょっと逃げないと!・・ひえええぇ!!」


僕はサワガニに追いかけられて、右に左に右往左往した。

逃げ回っている内に、5秒経過してクールタイムの時計がメニューから消えた。

意を決してサワガニを迎え撃つことにした。

数を減らさないとな・・。


サワガニの突撃を盾で防ぐ、衝撃が凄く僕の体は一瞬よろめいた。

その隙に他のカニたちが僕の周りに一斉に集まってくる。

ハサミの攻撃を受けながら、僕は正面のサワガニの腹を剣で突き刺した。


「3匹目!ちっ!HPが結構減ってるし・・・プッシュ!回復~!・・・じゃぶじゃぶ、じゃブリングだな。こりゃ」


残りの3匹の追撃をかわしながら、僕は試した事をしてみる事に。

地面に落ちている大き目の岩に、新しい魔法リチウム(Li)を放った。

手のひらから放出された、青い電気玉が岩に吸収された。

そして岩は熱を帯びたように赤い色に発光して、そして周りはバチバチと電気が流れている。


「これは・・・触ったらダメな奴だな」


リチウム(Li)を吸収した岩にサワガニを誘導する。

僕は岩の前に立って、サワガニが突撃したくなるような・・バカにした表情をした。

たぶん怒ったんだろう・・サワガニが僕に突撃してきた。

サワガニが突撃してくるタイミングを見計らい、僕は左の地面に倒れ込んだ。

サワガニ達はそのまま、リチウム(Li)を吸収した岩に激突した。


岩に当たったカニたちは、ビリビリと電気で痺れている。

しばらく様子を見ていると、そのまま残りの3匹は息絶えた。


「・・ふぅ・・勝った」


サワガニ達はその場で霧散して、感情玉を放出。

そして僕の右手の剣の宝石に吸収された。

感情ゲージが3ゲージ溜まった、良かった。

でも、いつ強い敵が出てくるか分からないからな。

そんなにすぐすぐ使えないな。


今後の事を思案している僕の耳に、嬉しい音声ガイダンスが届いた。



『レベル!UP!!!新しい魔法・ベリリウム(Be)を覚えました!』

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