第15回 嵆侍中の血を洗うな

 漢文大系本、第3巻、84ページ。

 西暦304年。


 穎進兵入京師、為丞相。已而還鄴。顒表穎為皇太弟。東海王越奉帝命、征頴。穎遣兵拒戦于蕩陰。乗輿敗績。侍中嵆紹以身衛帝被殺、血濺帝衣。穎迎帝入鄴。左右欲浣帝衣。帝曰、「嵆侍中血、勿浣也。」


 えい、兵を進めてけいり、丞相と為る。すでにしてげふに還る。ぐうえいを表して皇太弟と為す。東海王越、帝の命を奉じ、えいを征す。えい、兵を遣はしてたういんふせぎ戦ふ。乗輿、敗績す。侍中のけいせう、身を以て帝をまもりて殺され、血、帝衣にそそぐ。えい、帝を迎えてげふに入る。左右、帝衣をあらはんと欲す。帝曰はく、「けい侍中の血なり、あらなかれ」と。


 えいは、兵を進めて都に入り、丞相となった。それからぎように帰還した。ぐうは、えいを皇太弟とした。東海王の司馬越は、帝の命を受けて、えいを征伐しようとした。えいは、兵を出してとういんで抗戦した。恵帝の戦車は負けてしまった。侍中のけいしようは、自分の体で恵帝をかばって殺されてしまい、血が恵帝の衣にかかった。えいは、恵帝を迎えてぎように入った。左右の従者が恵帝の衣を洗おうとすると、恵帝は言った。「けい侍中の血だ、洗うな。」

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