遠い世界の片隅の城の少女

天神シズク

第1話 座する少女

 遠く離れた世界。


 世界の片隅には、大きな城がある。


 暗く、広い部屋には大きな椅子がポツンと置かれている。まるでどこかの国の王様が座るような、立派な椅子だ。


 そこに1人の少女が座っていた。


 少女はこの城の主。ひとりぼっちでこの城に住んでいる。


 少女のすべきことは1つだけ。


 城への来訪者を左右の部屋へと案内することだけだ。


 そんな少女の元へ男性がやって来た。なにやら言葉を発している。少女は理解しているのかどうかわからない表情でそれを聞く。数分に渡り、男性の話を聞き終わると右の部屋を指差し、男性にそちらに行くように促した。


 次は女性が来た。とても静かな女性だ。少し話すと、少女は左の部屋を案内した。


 1日中、それを繰り返す。まるで光に群がる虫のように来訪者はやって来る。


 城の頂上にある鐘が鳴った。鐘の音が鳴ると来訪者はいなくなる。


 城の貯蔵庫にあるプリンを5つ食べると、少女は眠った。少女の寝顔は憂いを帯びていた。

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