没頭する

 視点キャラが没頭していることを表現する技法。


1. 視点キャラ、または対話相手のセリフを省略する(p411)。発言内容を類推できるようにすること。話者が誰であるか読者が混乱しないように注意。


「死亡推定時刻は十日午後八時、死体の発見時刻は翌朝午前六時半。使用人が被害者を起こしに行ったところ、返事がなかったためドアを破ったとのことです」

 僕は尋ねた。

「被害者の妻によると、彼は猜疑心の強い性格で、自室にこもると部屋のドアに内側から鍵をかけ、誰にも寝室に立ち入らせません」

 部屋を見回しても他に入れそうなドアはなし。窓にも鍵がかかっている。いわゆる密室殺人だ。もちろん使用人の証言が信用に値するものであれば、だが。部屋の中に異常がないか確認しながら、僕はまた尋ねた。

「被害者と使用人は三十年来の親友で、立場的にはともかく普段はとても仲が良く、前日も特に変わったところはなかったそうです」

 気の置けない友人か。だがそんな関係だからこそ、いったんこじれたら一線を越えてしまうこともあり得るだろう。僕は使用人に直接会ってみることにした。

 

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みんなで作る「レトリック事典」 効果別まとめ かやのチノ @kayanochino

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