テンポを遅くする

 物語の中で長い時間が経過したような感覚をもたらすための技法。


1. かっこやダッシュなどで注釈を加え、いったん立ち止まるような印象を与える。(p2)「感覚フィードバックの実装方法は、感覚神経および運動神経をVRMMOシステムに直接接続する方式―――いわゆる水槽脳ってやつだ―――これを採用している」


2. 簡単には言い表せないことをいろいろな観点で繰り返す。くどく、演劇風になるので会話では通常行わない。(p385, p417)「その新兵はいまにも泣きだしそうだった。また、安堵したようでもあり、誇らしげでもあった。彼は人生最初の殺人を体験し、生き残ることで自らの実力を示したのだ」「『おお、愛しの君。その笑顔は春の陽射し、夏の風、秋の木々、冬の小川のように私の心を震わせる』『はいはい(そのキャラなんとかならないの?)』」


3. 困惑・不承不承な感情を演出するためにまったく同じ内容の文を構造を変化させて反復する。反復のなかに新たな情報がなにも含まれていないことに注目。 (p374)「司令部は俺たちに住民の殲滅を命令した。保菌者キャリアかどうかは問わない。そうしなければならないなら、やるしかない。やるしかないなら、それはそうしなきゃいけなかったってことだ」


4. だんだんと程度が変化(大抵は激しくなる)してゆく様子を積み重なるように細かく描写する。(p346)「惑星に降り立った無人テラフォーム船は、まず小さな工場を作った。そしてその工場で自己を複製し、複製された船と連結した。さらにオリジナルは追加の工場を建て、複製された船はその船にとって最初の工場を建て、すでに建設されている工場は、二台目のクローン船を建造し、オリジナルとクローン1と新造のクローン船は三角形の形状に連結した。それが完了するとオリジナルは3つめの工場を、クローン1は2つ目の工場を、クローン2は1つ目の工場を建て、それぞれの工場はそれぞれ新しいクローン船を建造し、すべての船が近隣のクローン船と連結した。ついには惑星の表面全体を、テラフォーム船を頂点ノードとする巨大なネットワークが覆いつくした」

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