境界を征く者。その名は⋯⋯


 本作は筆者の永遠のテーマである、生者と死者の関係を、これでもかと渾身の筆致で描ききった大作である。

 主人公朧川六文は、とある事情から死神と契約を結び無念に死んだ犯罪被害者の迷える魂を、再び輪廻の輪に戻す仕事を請け負う事になる。

 こう書くとファンタジックな内容に想えるが、本編はどこまでも五速節溢れるハードボイルド作品となっている。

 筆者の代表作の1つ、いきぞこないゾンデイーを読まれた読者なら、すんなりと作品世界に没頭出来るのではないだろうか。

 本作の主人公六文は、時折自嘲気味に笑う。
 死ぬべき時に死ねなかった男の悲哀に満ちた背中を癒す女は、果たしてこの先現れるだろうか。
 続きが気になる一作が、また生まれた。


 

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