第4部 「摩天楼の決戦編」

22話




三回戦。桐生は対戦相手、『石ころ』の特殊ビームを受けてしまい、観客や審判など他の人間には認識されなくなってしまった。



「それじゃあそろそろオレっちの方から攻撃と行こう!!」



ギュルルルルルッ!!


石ころはその体の軽さを利用して猛スピードで火花を散らしながら桐生の足を狙い転がってくる。


「人間は足を攻撃されればバランスを崩す!喰らえええええ!!」


桐生は周りにばかり気を取られていたせいで足元に直径約十センチの敵が迫ってきている事に気がつかなかった。


「おっとぉ!」


桐生は咄嗟に飛び上がってなんとか回避する。


「まだだ!」


再びこちらの足を狙って転がって・・・・


来なかった。


「フェイントッ!?」


「かかったな!」


石ころは転がるふりをして、その場に止まったまま高速で回転を開始する。その摩擦で発生した大量の火花を撒き散らす。


「アチィアチィ!地味にあっちぃ!!」



『おーーとお、石ころ選手高速で回転したー!その摩擦でできた火花で攻撃してるようですが・・』



『桐生選手が見当たりませんねー。このまま見つからなかったら桐生選手の不戦敗って事になっちゃうんですが・・』


桐生は石ころの真意に気付く。


(まさかこれが本当の狙いか!!)


「その通り!やっと気付いたな。お前はだれにも認識されないまま敗北するんだ! オレっちはどんな手を使ってもこの大会に優勝して人間どもに石ころの恐ろしさを知らしめるのだ!!どうだ!?オレっちが憎いか?悔しいか!?早く決着つけないとお前は敗退だぜ?」


「くっそ、こうなったら秘密兵器を出すしか無いな」


桐生は何やらポケットからある物体を取り出した。


「ジャジャーン!『けん玉』〜!」


「な、なんだそれは!?」


そう。これは一度ロックオンしたターゲットを当たるまで追尾する鋼鉄の玉を飛ばすけん玉型のデバイスだ。基本構造は普通のそれとほぼ同じで、ガラスの"けん"と、鋼鉄の赤い玉が白い糸で繋がっている。実は桐生は、一回戦が終わった後、けん玉使い『秋山清史』からこれをこっそり盗んでいたのだ。(下衆の極みである。)


「それじゃあ使わせてもらうぜ秋山。」


桐生は鋼鉄の玉を石ころに向かって飛ばす。


「何ィ!?」


石ころは必死に逃げようとするが、この特殊なけん玉の前じゃ無意味である。


「追尾弾・・だトォ!?」


バカッ


そのまま石より硬い鉄の玉が石ころに当たる。


「やったか!!」


石ころは確かにバラバラに分解した。


だが、あたりに散らされた破片がカタカタと動き出し、みるみるうちに一点に集約していく。 そして石ころは破壊される前の姿に戻っていた。この間十秒である。


「再生能力か!?」


「その通り。オレっちがいかに万能かわかったろ!」


この試合のルール。勝つためには、

㊀ 相手が完全に動けなくなるまでノックアウトする。

㊁ 相手が自ら降参する。


㊂ 闘技場を取り囲む赤い金網に相手をぶつける (相手が場外負け扱いになる)


の、いずれかの条件を満たさなければならない。


再生能力を持つ相手をノックアウトさせるのは流石に無理だ。


かといってこの流れで相手の方から降参するわけがない。


じゃあ残された方法はたった一つ。



(あいつを捕まえて赤い金網に投げつければ俺の勝ちだ!!)


「じゃあそろそろトドメと行こうかな。」


ギュルルルルルッ


石ころは再び自らを高速回転させ体当たりを繰り出してくる。 今奴は桐生を倒すことだけに気を取られている。


(イチかバチかだ!)


「勝負だ、石野郎!」


桐生はけん玉を射出し、再び石ころを分解する。


「フン、まだわからんのか。何度同じことをしても無駄骨だと言ってるだろう!!


石ころが分解されては再生、分解されては再生のサイクルを二十回ぐらい繰り返したところ、異変が起きる。


『おーっと、石ころ選手!見えないところから現れるけん玉に何度も被弾しては再生を繰り返しているため疲れが見え始めたか!?」


「はぁ、はぁ、しつっこいな・・。」



やはり石ころは再生をすると体に負荷がかかるらしい。


勝機が見えてきた!!


最後に桐生が言う。


「そろそろ疲れたろ。さっさと勝負を終わらせてやっからお互い楽になろーぜ。」


「うるっせえ!!オレっちをなめんなあああああ!」


石ころは大回転し火花を散布して攻撃しようとするがもう遅い。桐生のけん玉がその小さなボディをバラバラにする。


(最初の頃に比べて再生速度が大分低下してる!今がチャンスだッ!)


桐生は石ころの元に突っ走り、敵が再生した瞬間を狙い、素手で見事捕まえる。


「は、はなせ、はなせえっ!!」


石ころは桐生の手の中で足掻くが桐生は気にせずそのまま赤い金網に向かって思いっきり『奇特な対戦相手』を投げつけた。


カシャンッ


金網に石ころが激突する。


「そんなバカなっ!!」



ビーーーーーーーーーーッ


『試合終了ーーーーーーーーッ!石ころ選手の場外負けにより、桐生選手の勝利!!

それにしても桐生選手は・・・』


「俺ならさっきからここにいるぜ。」


『あれれれれ!?さっきからそこに居たんですね!失礼しました(実況サボっちゃって)』


「ったく。厄介な相手だったぜ。」


実は今回の戦い。桐生はけん玉を振るうだけでよかったので大して動いて居ない。ただ身体的疲労よりも精神的疲労の方が溜まった。

これからもまだこんな感じで戦いが続くと思うとすこぶる気が滅入る。 ・・なんて甘えたことを言ってる暇はない。 次の四回戦に備えるため四階層に向かう。



そして桐生は次の試合で、 再び"アイツ"と合間見えるなんてこの時は予想だにしていなかった・・・。




皇楼祭 三回戦 対戦成績


第一試合 《勝》桐生 《負》 石ころ

第二試合 《勝》黒崎龍弥 《負》虎次郎



To be continued..

























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