コラム5 古乳記

「コノパイガ メニ ハイラァニュカ!」

「ヤメヨ! ヤメヨ! タレチチヲ ムケルノヲヤメヨ!」


 これは『古乳記』で描かれている乳名な乳争で、中の国の乳士オオチチノチチが、東の国の乳士ビチチノチチと、互いに乳争いしている場面だ。


 乳史上初めての乳争と言われている《デカシュの争い》は、最終局面において、乳将同士の一乳打ちをしたと伝えられている。


「コノパイガ メニ ハイラァニュカ!」

「ハイラニュ! ハイラニュ! チイサスギテ メニ ハイラァニュワ!」


 二谷は胸をはだけて乳房を見せ合うも、お互いに自分の乳房の方が上だと言って譲らない。

 そして両乳は決着をつけようと、自分の乳房を相手の顔に押しつけ合い、乳で乳を洗うような乳相となっていった。


「テイ! テイ! コノオオチチハ ヤワラカロウ! デカカロウ!」

「ゾンゼニュ! カンジニュ! テイ! テイ! コノビチチハ ハズムデアロウ! シュットシテオロウ!」

「タダタダ カタイバカリカナ!」


 二谷は一日中争うも、乳の押しつけ合いでは決着がつかなかった。

 ビチチノチチは自分の国へ帰る途中、相手の乳房を称えなかったことを後悔した。


「アノオオチチハ アカゴノヨウニ ヤワラカカッタ……」


 あんな暴乳を吐いてしまったら、もう二度とあの立派な巨乳を見せてくれないかもしれない。もう二度とあの軟乳を触らせてもらえないかもしれない。


 国に帰ると、大勢の乳民たちが喉を渇かせていた。中の国との幾多の乳争いによって、乳の枯渇が起こっていたのだ。


 ビチチノチチは、何谷もの乳民たちに乳を呑ませた。しかしそれでも全ての乳民の喉を潤すことは出来なかった。


「アァ ダレカニチチヲ ワケテモラワネバ タリニュ」


 そんなとき、オオチチノチチがビチチノチチの国に訪れた。


「オヌチノチチハ ウツクシイ! ワチハ! スマニュコトヲイッタ!!」


 オオチチノチチが乳房を下げると、ビチチノチチも乳房を下げた。


 するとオオチチノチチの乳房から漂う、美味しそうな乳汁の香りがビチチノチチの鼻を突き、腹がグゥゥゥッと鳴り響いた。

 ビチチノチチは乳を与えるばかりで、喉を渇かせていたのだ。


「イヤイヤ オヌチノチチコソ スバラシイ! ソノチチヲ ヒトクチノマセテハクレマイカ」

「ヨカロウ ヨカロウ タァント ノミタマエ」


 オオチチノチチは巨大な乳房を差し出した。ビチチノチチの口は迷うことなく、その巨大乳首を頬張った。


 すると乳汁がビチチノチチの口から溢れ出し、彼乳の全身に勢いよく浴びせかけられ、それはビチチノチチの体を吹き飛ばすほどであった。


 ビチチノチチは顔に付いた濃厚な乳汁を舐め取りながら、自分の敗北を悟る。


「イヤハヤ! スバラシキチチノデ オヌチノチチハ イッコクヲウルオスデアロウ」


 その乳の出しっぷりを見たオリゴ王国の子供らが、巨大乳に向かって群がってきた。

「ワッチモ ノミタイ!」「ワッチモ!」「ワッチモ!」


 オオチチノチチの乳汁は尽きることなく、オリゴ王国の乳民全員の喉をを潤していった。


「カタチチナキハカライ マコチニ チチガサガル ドウカ オレイヲサセテイタダケマイカ」

「デハ ワチノクニヘユキ タミニ ソノウツクシイチチヲミセテヤッテハクレマイカ」

「オヤスイゴヨウ デハ ソウシヨウ」


 こうしてビチチノチチは、オオチチノチチの住まうプロティーン王国へと、四谷の乳臣を連れて旅に出た。


 両乳はその後、他の二π王国にも旅をして、その乳の豊満さや美味しさを魅せて回った。

 そして互いの地に移乳し合い、その地の者と結ばれ、子を為した。


 これが乳渡りの起源である。



【参考文献】

『「古乳記」の世π』(訳:乳山呑子、乳首書房)

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