【推論】『自閉症の生物学・生理学的見地からの原因追究』

千菅ちづる

自閉症の原因追究(推論)

 p53のアポトーシスと自閉症の繋がり


https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/43


 上記の記事は『九大の研究チームが自閉症の発症の仕組みの一端を解明した』という内容のものである。

 このニュースを見て、感心しつつ、p53のアポトーシスと自閉症にはなんらかの因果関係があるのではないかと考え、この推論を綴る。


 CHD8がない、または少ないと、p53が活性化しアポトーシスが増加し、脳の発達を阻害する。

 そもそもアポトーシスが増加するということは、それすなわち生存の危機を意味する。

 特に、p53が活性化すると不安を強く感じたり、仲間に関心を示さなかったりする自閉症の傾向がある。

 慶應義塾大学にて、ラット胎児を1週間にわたり、1日1時間母親から隔離することによってRESTタンパク質の発現上昇が抑制され、その結果、NMDA受容体の成熟型へのサブユニットスイッチングが障害されることが判明している。

 RESTが異常に活性化するが、異常であるため小胞体ストレスが起こりアポトーシスが発生する。

 NMDAが成熟型にならないことで、p53の調節がきかなくなり、p53の効果が続いてしまい、自閉症に繋がる。

 更に、そこにミノサイクリンなどの薬を服用することで、ミクログリアの働きを抑制し、p53によるアポトーシスを進行させる。

 つまり、ただ単にRESTの働きを抑制する薬を作るだけでは、p53によるアポトーシスの調節が利かなくなるのではないか。

 全ての根底にある、『CHD8』に代わる薬を用意することが先決なのではないか。



 CHD8がないとp53の制御ができなくなり、アポトーシスが進み、生存の危機になる。

 だからといってありすぎると、悪性腫瘍のアポトーシスさえできなくなるため癌の発症率が上がってしまう。

 約0.4%の自閉症患者にはCHD8がないことが分かっている。

 ならば、自閉症患者の癌の発症率が健常者よりも"低い"ものなら、p53の肉体への効果と脳神経(いわゆる精神)への効果の繋がりを表すことの証明になる。

 もし、アポトーシスが精神疾患の元であるならば、精神疾患を、科学的見地から治すことが可能になるのではないか。


 自閉症患者に処方される薬:ミノサイクリン

 "ミノサイクリンの自閉症幼若マウスへのミノサイクリン40mg/kg(臨床用量相当)投与は、8時間後に脳細胞のアポトーシスや神経変性の促進が確認された。長期間の統合失調症を誘発させるNMDA受容体アンタゴニストと同様であった。"とオックスフォード大学の2016年6月27日に提示された論文に記載してある。自分はオックスフォード大学の学生ではないため閲覧は不可能だが、リンクだけは判明しているので参考に記載している。

 つまり、ミノサイクリンが自閉症と統合失調症に与える効果は同じものであり、用途も同様であると推測できる。

 そして、統合失調症患者の癌での死亡率が低いことがI.I.ゴッテスマン氏の研究で明らかになっている。

 統合失調症患者もミノサイクリンを服用するため、それによりミクログリアの働きが抑制されて、p53のアポトーシスが進む。

 ミノサイクリンによって、ミクログリアの働きを抑制し、癌の発症率低下を促してる{p53(CHD8で活発化を抑制可)によるアポトーシス増}。

 だが神経細胞死の抑制もしている(NMDA受容体によるアポトーシス減)。

 神経細胞死を抑制したら…発症率は極めて低いが悪性末梢神経鞘腫瘍に繋がるはずだ…。

 それに、p53の働きが増える(脳細胞のアポトーシス発生)ということは、アポトーシスによって細胞に少なからず影響を与えてしまうことになる。

 …そうか! NMDA受容体による神経細胞死を抑制するから神経変性するのか!

 ミノサイクリンでNMDA受容体によるアポトーシスを抑制するということは、過剰に増加したRESTによる神経細胞死すら抑制してしまう。

 RESTは過剰に増加しているから、本来ならミクログリアのアポトーシスを喰らうが、ミノサイクリンがそれを抑制してしまっているため、変性という形で具現化する。

 ミノサイクリンの副作用には、四肢や顔の浮腫がある。

 神経は中枢神経を中心に樹上に広がっているため、末梢神経が多い四肢や顔に浮腫が現れることにも頷ける。

 つまり、逆説的に、浮腫として、末梢神経上に腫瘍ができることはあるが、p53の働きは抑制されていないため、癌の発症率は下がる。

 しかし、p53によって脳細胞のアポトーシスが進んでしまうのならば、やはりp53への対応は免れない。

 ミノサイクリンは、自閉症や精神疾患への働きが良いとされている薬であるが、それだけでは足りない。

 p53の働きを促すのではなく抑制し、且つ、患者のCHD8の増加を促すような薬が今後は求められるのではないだろうか。



 参考

 がん抑制遺伝子p53の新しい制御機構を発見

 http://www.jst.go.jp/pr/announce/20090119/


 RESTタンパク質による遺伝子発現調節 ~遺伝子発現とシナプス機能~


http://www.med.keio.ac.jp/gcoe-stemcell/treatise/2012/20130213_01.html


 Minocycline Provides Neuroprotection Against N-Methyl-D-aspartate Neurotoxicity by Inhibiting Microglia


http://m.jimmunol.org/content/166/12/7527.full


 Minocycline exacerbates apoptotic neurodegeneration induced by the NMDA receptor antagonist MK-801 in the early postnatal mouse brain

 https://link.springer.com/article/10.1007/s00406-015-0649-2


 p53 expression and regulation by NMDA receptors in the developing rat brain.

 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10340750


 生後発達期におけるミクログリアの神経回路再編に対する役割の解明


https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J02038/


 Microglia Activation and Schizophrenia: Lessons From the Effects of Minocycline on Postnatal Neurogenesis, Neuronal Survival and Synaptic Pruning

 https://schizophreniabulletin.oxfordjournals.org/content/early/2016/06/27/schbul.sbw088.long


 分裂病の起源 著I.I.ゴッテスマン

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