第6話 断片

彼のことは時々思い出します。ただ、恋とか愛とか浮かれた気持ちや、未練や憎しみなどの苦しさもまるでありません。


さっき、最後に彼の家に行った日のことを思い出していました。


クリスマスも近い雨の日だった。家に着くとバスタオルと靴下を貸しながら、もう終わらしたほうがいい、と言われました。


私はわかっていたが、彼の心の深くの理由はわかってなかったのではないか、と考えたりします。


もう5年が過ぎました。このまま一生会いたくはないです。それくらい傷つきもしたのでしょう。


最後のセックスで私はとても濡れていた。

彼はテレビのサッカーをちらちら見ていた。気持ちいい と彼は言葉にしていました。


彼の動きが速まって、気持ちよくなってと言われたけれど、なれなかったです。


彼は自分だけ済ますことはなく停止しました。


服をひとつずつ身に付け白いセーターにうずくまる形になり私は泣いていた。


彼はベランダでたばこを吸って、帰ってきたときの私を見た。


どうしたん


私が泣いていたのに気づき、彼はその場で一瞬の男泣きをしました。


気持ちがしんどい


最後にそう言って私は帰ることにした。バス停まで送ってくれたけど、二人してバカ話しかしていないので、覚えていない。


ほんの断片を切り取りたく書きたくなりました。

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