003 ガソリンスタンド

ローンを組んで購入したマイカーで市外へでて30分

大分、交通量も減ってきたところでガソリンがほとんどない事に気づく


「財布にお金あったかな?」


先ほどよったホームセンターで買い物したときにほとんど使い切った気もする。

車を停めて確認したところ、ちょうど千円だけは入っていた


ただ車はもう林の中の一本道、ここを進んでいくべきか、引き返すべきか考える


僕は突き進むことを選んだ、止まってしまったところでその後は歩けばいい

そう判断したからだ。

と、思ってたところで案外にもガソリンスタンドが見えてきた


セルフではない仕様のようだが店員が見当たらない

僕は免許を取得して公道にでて以来、一度もクラクションを鳴らした事はないので今回も鳴らすべきかどうか少し悩んだ


結果、鳴らさなかった


もういいや、そのまま走り続けよう

コンコン

助手席側のガラスをふとノックされた

そこには浅黒くやけキャップを深くかぶった老人が立っていた

ほほにまっすぐ刻まれたしわがやけに印象的だ

精錬にもみえるしただやつれている様にもみえる


「あ、レギュラー千円分いいですか?」

「、、、」

老人から何もリアクションはない


「あの、レギュラー千円分いいですか?」

少し語尾を強めに発声してみる

老人はすでに視線を僕の車の後部座席にうつしていた

ホームセンターでの買い物袋が気になるようだ


コンコン

老人は今度は後部座席のガラスをノックした

おそらく、オイルの扉を開けろとの事だろう

僕はレバーを引き給油口を開いた

何も言わず給油を開始する


給油が終わると老人は車を一周して運転席のガラスをノックした

「領収書はいるかい?」

ハスキーがかった渋い声だったが、芯が残るというような気持ちのいい声だった


「いりません」

「そうだろうな」


僕はガソリンスタンドを後にした

バックミラーにはこちらを凝視し突っ立っている老人がたっていた

最後、目に付いてしまったので記憶してしまったが老人の胸につけらた

ピンタイプの名札には安達と記載されていた


安達は車がカーブに差し掛かり見えなくなるその時までもこちらを凝視していた

「気持ち悪」

僕は一言そうつぶやいた。

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シチ 吉田 陽一 @yohamoon

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