萌香

 

白。一面の白。


だからこそ目立つのだろうか。


赤色の服を纏った“君”という存在が。


赤色の彼女はとても綺麗な顔をしている。いわゆる、“美女”だ。


しかし、その右手に握っている一つのキーホルダーが“美しさ”をかき消していた。


いかにも、「小さい頃は好きでよく集めてたけど今でも集めるのはちょっと,,,,,,」


という抵抗感を持ってしまうような、そんな感じ。


「ねえ。」


彼女が話しかけてくる。


「私って何色に見える?」


周りにいる人達がじっと僕を見てくる。


僕は黙って下を向く。


やめてくれ、君が僕に話しかけるのは。


僕がー。


僕が赤色に染まってしまう。


「白?それとも、」


「それとも?」


つい口が動く。


「君と同じ色?」


「どういうことだ。」


僕は白色のはずだ。


友達も作ってそこそこクラスでも人気者という立場を継続してきた。


「誤解を恐れずに言うよ。君は赤色だ。しかし今までずっとではない。」


「というと?」


「君は私と話した時から徐々に変わっていったんだよ。赤色にね。」


そんなはずはない。そんなはずは。僕はー。


「僕が赤色なはずはない!」



「そうやって噓の真実を言い聞かせることで君が満足するのであればそうすればいいよ。でもね、いくらそうしたってー。」



    周りの反応は変わらないよ。



立ち上がって周りを見渡す。


そこに真っ白の景色はもうなかった。


黒。黒色達が手をつないで僕を見下ろしている。


ここに僕の味方はもういない。


     



      そうか。




涙なんか出す気力もなかった。ただ走り続けた。


目の前にある崖に向かって。



       ここはそういうところなんだ。


勇気なんかいらない。


ただ底のない地面に向かって飛び降りただけ。


さようなら。赤に染まってしまった僕。



ーーーー彼女は僕が飛び降りる前に寂しそうな顔をしたそうだ。


     しかし、それはまた別の話。

                         fin.










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萌香 @hatikujisann

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