僕自身の話

C-take

グレーゾーン

 最初に鬱だと思ったのは25歳の時だったかな。


 徒歩15分の職場に行くのに、30分かかるようになり40分かかるようになり。そしてある日、道半ばで動けなくなった。


 ゾンビみたいな歩き方で職場にはたどり着いたけど、過呼吸だし頭の中はぐちゃぐちゃだしで働ける訳もなく。人前だったけどボロボロと涙が溢れたのを今でも覚えてる。


 原因は人間関係。上司や同僚と上手くいかなかった。ありふれた理由でしょ?


 停職期間をもらって精神科の病院にかかることにした。診断は統合失調症とパニック障害。薬をもらって、停職期間いっぱいの3ヶ月間は落ち着いて過ごした。


 症状も落ち着いて20分くらいかかって出勤。仕事開始の準備も万端というところまで行って「さぁ行くぞ!」とはならなかった。またしても過呼吸。苦しくて仕事どころじゃない。


 結局、そのままその職場を辞めた。




 そのあとは派遣会社に入って多くの職場を転々とした。また人間関係がダメだったり、仕事がきつすぎたり、とにかく続けることができないくらいすぐに疲弊してしまう。


 どうして周りの人と同じようにできないのか。子どもの頃から抱いていた違和感が大きく膨らみ、思い切って発達障害の検査を受けることにした。


 結果はグレーゾーン。障害ではないと診断された。これをプラスに受け止められたなら、僕は今、この文章を書いていないだろう。


 僕にとって、この「グレーゾーン」という診断は一種の呪いだ。


 人より劣っている部分は確かにある。だが障害ではない。どちらでもない。中途半端。これが厄介だ。


 人は僕にを求める。でも僕にとってのは、一般的にはでないらしい。そして社会は、この差を埋めることを僕自身に求める。自己管理や自己責任ってやつだ。


 僕はがんばるのをやめ、引きこもることを選んだ。実家に閉じこもり、ただただ怠惰な生活を送ることにした。


 精神科の病院にも行かなくなった。


 次第に外に出るのが怖くなり、どこにも行けなくなった。




 それから1年。


 親に引きずられて前とは違う精神科の病院に行った。


 薬の服用を再開したら、一月ほどでこうして文章を考え、タイピングするくらいの元気は出てきた。


 そして今、僕はこうしてネット小説を書いている。読んでくれる人がいるだけで嬉しい。感想を書いてくれる人がいると楽しい。それが今の僕のほぼ全て。


 グレーゾーンの呪縛は、まだ解けていないけど――


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