第19話 なんかあれがあーなってこーなったらしい

 ブレイブ王国 王城内個室

 その中に二人の男女がいた

 男は嬉しそうな顔をして何かを食べていた


「それはなんですの?」


 女は気になり食べているものについて聞いた


「ん、これ? この前の雑用で見つけたんだ」


「珍しい袋に入っていますわね、一つ頂いても?」


「いいよ、君の口に合うかどうかはわからないけどね」


 赤い袋を女に差し出す

 中には小麦色の何かが入っており手に取ってみると何かを揚げたものだと分かる

 口に入れてみる


「素朴な味ですがおいしいですわね」


 さっぱりとした塩味が口に中に広がりまた食べたいと思わせる味だ


「そうでしょ、僕もまたこの味が食べれるなんて思わなかったよ」


「あらこれは故郷の食べ物ですの?」


「そうだね、作ろうと思えば作れるだろうけど、この味は再現できそうにないからね、食べれてよかったよ」


 男は嬉しそうに笑う

 久しぶりに見る笑顔に女は心配になった


「ここの食事は口に合いませんか?」


「んー、悪くはないんだけどね、パンばっかりだからすこし残念かなって」


「この国の特産品は麦ですからね、仕方ないのです」


「それもそうだね、わがまま言ったみたいで悪かったね、僕はこれから少し報告に行かないといけないからまた夜ね」


「はい」


 女は頬を赤くし男が部屋から出ていくのを恋しそうにみつめた



 それにしてもこれをやった奴は頭がいかれているとしか考えられない

 俺は地下からでて外で見つけたアロウの貼り付け遺体から杭をはがしていた、両手両足に杭で刺されており相当な力で打ち付けられたのがわかる、てこの原理を使い何とか遺体を杭から解放させた

 アロウの死体を地面に置き開いていた目を閉じてやる


(いい奴だったよお前は、いい思い出なんてないけど)


 さて一つやることを終わらせたところで一つの問題が出てきた

 地下にいたエルフはせいぜい30名程度、全員じゃない女、子供ばかりだ、ほかのエルフ族は一体どこに? アロウみたいにどっかで殺されているのかそれともどこかに連れ去られたのか

 どちらにしてもめんどくさいことには変わりない、とりあえず今の問題点は何があったかより、犬耳族にどう説明するかだ

 想定外とはいえこうなってしまった以上薄くもろい信頼が崩れるかもしれない、とりあえずアルネシアの父親の安否だけは確かめておかないといけないか

 話し合いの場であの男の存在は必要不可欠だ

 俺はあいつが一番いる可能性のある場所に探しに出かけた

 ここからそう遠くはないあいつの家だ

 中に入るとやっぱり誰もいない

 しかしこの家にも一応隠し通路が存在しており、その奥に避難場所へと通じていいる

 さっきの場所は魔力がないといけないがここは俺でも開けれる仕掛けである

 本棚の真ん中から左にある黒い本を奥に押す、すると本は奥に埋もれガチャという音とともに本棚が横に動いた

 地下への階段が現れた、壁にはところどころ木で補強していて先ほどの場所より時間をかけて作られているのがわかる

 俺は家に備え付けらえた、松明を手に取り地下にへと足を踏み入れた

 20メートルぐらい降りたところで階段が終わり通路が現れる、松明の明かりなので奥まで見えないがかなり長く掘られているのがわかる

 歩くと俺の足音だけがその場で聞こえ少し寂しさを覚える

 やがてその寂しさも終わるように通路の先に階段が現れる、今度は上がる階段だ

 階段を登りきるとそこに広がるのはまた通路、だが先ほどと違うところがある、ここは人の手によって掘られた通路ではなく天然にできた通路だからだ 

 まあここがどこなのかもうわかったと思う

 あの家に通じていた場所はあの黒龍の住まう洞窟というわけだ

 俺はエルフ族でも特に重要な人物はファフニールに守ってもらうように頼んだ

 ファフニールは宝を触らないならと約束してくれた


(あいつなら勇者が来ない限り負けることはないはずだしきっと大丈夫だな)

 


 そう思っていた時期が俺にもありました

 目の前に広がっていたのは地面に大量に流れ固まっていた黒い血だまりその出所には大きな黒い物体が転がっておりただ事じゃなかった


「ファフニール!!!」


 ファフニールが死んでいた

 うつろになった目には光がなく、もう生きてないと感じさせるほどの力がある

 体中には刺されたような傷がたくさんありそこから血が大量に流れたみたいだ


(嘘だろ......こいつを殺せる存在って......誰だ、くっどちらにせよ最悪だ)


「はは、もうおしまいだ、なにもかも」


 俺の計画にファフニールの変わりはいない、つまりもう俺の考えていたことはすべて白紙に戻されたということになる

 すべてを無に戻され脱力していた俺は頭の中で鳥さんを数えていた


(あはは、あれはインコさんだぁ可愛いなぁ、あははははそのまま僕を持ち上げてどうするの? あはははははその高さから落ちたら僕死)


「ようやく戻ってきたか、連」


「あ?」


 現実に戻された俺は声のする方を見る、そこにあるのはファフニールの斬死体

 なんだただの死体か、死体が話すわけもないな


「おい連、どこを見ているんだ、我の今の姿が見えないのか?」


(どこからかファフニールの声がする、ああ天国から俺の事を見ているのかな)


「おい、いい加減にしろ」


 死体が動いてって


「えぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!! お前生きてたの!?」


「当たり前だろう、我がこのくらいの傷で殺されるわけがないだろう」


 胸を張る黒龍だが


「その傷でよくそんなことが言えるな」


「しょうがないだろう本気が出せない上に傷が治らなかったからな」


(おいおいそういうのなんて言うのか知っているか? 言い訳乙だよ)


「そうかそれは大変だったな、はっはっはっはっは」


「まったくだ、ふははははは、ではないわ!!!」


(うおぉいきなり突っ込むなよ、びっくりするだろう)


「我のこの姿が見えんのか、傷だらけだぞ」


「そうだなそれが?」


「この傷を治さなければならん」


「でもそれ治らないんじゃないの?」


「我自身の治癒能力では無理だ、ちっ厄介な。だが治す方法はある」


(へ~便利な世の中だなぁ、儂はもう時代に置いておかれたのう)


「だが我はこの通り動けないのでな、連が返ってくるまで待っていたのだ」


「何をすればいいんだ?」


「我の寝床にある金色のツボを持ってきてほしい、中に命の秘水が入っておる」


「いいのか? 宝なんだろ、触ってしまうことになるが」


(これで殺されるなんてとんだとばっちりだからな)


「連なら構わん」


(あっそうすか、わかりましたよ~)


 俺はファフニールの寝床に向かった

 そこには黄金の宝がつまれておりこの中から水の入ったツボを探し始めた

 

 一分後......


 十分後......


 三十分後......


 一時間後......


 二時間後......


「嫌どこだよ!!!!!!!」


 周りを見てもどこもかしこも黄金で見分けがつかない

 ツボも見つかったが中身は空だった

 本当にここにあるのかよ......


「ここにはないのかもな」


 そもそも雑に置かれた宝の山の中にそんな大事なもの置いておくわけがないよな

 だとしたらいつもあいつがいるところに


「あった」

 

 よく見るとファフニールがいつも寝ている場所にへこみがあり持ち上げてみると金色のツボが隠してあった

 ツボの蓋を取ってみると中にはとても透き通った水が入っていた


「でもなんで......いや今はいい」


 俺はすぐにツボをファフニールの所に持って行った


「おいこれでいいんだよな」


「うむ、それを掬い取り我の体にかけてくれ」


 言われた通りに水を掬ってファフニールにぶっかけた

 するとファフニールの体が虹色に光り傷口がふさがっていった


「おおおお、めっちゃファンタジーしてんなおい」


 原理は魔法と同じなのだろうか? いや見た感じただの水だぞ

 どうやって傷を治したのか気になって仕方ない

 でもファフニールに聞いたところで知らんと答えられるのはわかっている

 この龍、長生きのくせにずっと引きこもっているらしいから知らないこと多いんだよな


「助かったぞ、連、どうした? 何か考え込んで」


「ん、ああなんでもない、よかったな、元通りになって」


「うむ」


 まあいいか、なんにせよこいつが生きていたことに意味がある


「なあ、一つ聞いていいか? ここにエルフ族は避難してきたか?」


 俺は恐る恐る聞いた

 正直望み薄なのはわかっている、ファフニールをぼこぼこにできる存在が見逃すわけもない


「ああ、避難してきたやつらなら全員守ってやった、約束だからな、全員奥にいるぞ」


(まじか、さすがっすね、僕は信じてましたよ、君はできる子だってね)


 俺はファフニールの寝床の奥に避難監禁されていたエルフ達に会った

 がそこにギール・アルフレッドの姿はなかった

 避難していたエルフ族にきいてもわからないと言われた

 まだ問題だらけの状況でエルフ族族長の不在、事態は悪いといっていいが彼のおかげで何とかエルフ族の被害は最小限に抑えれたということは素直に喜んでおくことにする

 これからすることを頭の中で整理して俺は深呼吸をした


 

 

 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る