第2章 ブレイブ王国編

第17話 外見怖そうなやつも話してみればいい奴だったことが多い

「もう終わり? 伝説も案外たいしたことないってことなのかな」


 男は大剣を振りかざし残念そうにそう言った

 大剣にはどす黒い赤い血が付着しており異臭がその場に漂っていた


「グォォォォォォ」


 何かの咆哮が轟いた

 男は溜息を吐き残念そうな顔をした


「所詮は少し賢いだけのトカゲか、もういいよ」


 大剣をふるったぐしゃりと肉を切り裂く音だけがその場に響いた



 今日はなんていい日なんだろう

 犬耳族との交渉を経て俺は上機嫌だ


「連、なにニヤニヤしてるの気持ち悪いわよ」


 隣にいたエルフの女が引いた目でこちらを見ながらそう言った

 相変わらず胸はないが、戦わせてみれば強いの一言、我がご主人様のアルネシア・アルフレッドだ

 最近俺の中で彼女の株は上がりまくりだ

 もう彼女なしでは生きていけない体になってきている気さえする


「だってようやく帰れるじゃないですか、そりゃ嬉しいですよ」


「あんた、村のこと好きだったっけ?」


 彼女に頭にはてなマークが浮かぶ

 そりゃ好きに決まっている

 あそこには帰ったら食べようと思っていた残り少ないお菓子があるのだからな

 そろそろ賞味期限がやばいので早く帰って食べなければ


「おーい」


 呼ばれて振り返ったら白い体毛の犬耳族、シアンが笑顔で手を振りながらこちらに向かってくる

 彼は時期族長とのことでみんなから慕われていて村の者の移住を説得し納得させたのは彼だ

 まあ礼なんて言わないがな、こいつが勝手にやったことだしな


「何しに来たんだ」


「そろそろ出発するので案内をお願いしたいなと思いまして」


 もうそんな時間か

 よしよし帰るとするかね、僕はもうおうちに帰りたいよ

 俺はアルネシアのほうを見る

 彼女は頷いて


「私が案内するわ、連は私の後ろにね」


 アルネシアがそう言うので仕方なく従おう

 主人の命令は絶対だからな


「分かりました、僕は族長の所に行ってきますので後の事はよろしくお願いします」


 シアンがそういい族長の家へと向かった

 俺たちはシアンに言われた通りのするために村の入り口付近向かった

 そこには多分80人ぐらいの犬耳族がいた

 彼らは俺の事をまだ受け入れてはいないと思う

 目線が何というか鋭いままなのだ

 この一週間イメージ改善に全力を注ぐことはなかったので仕方ないといえば仕方ないのだがちゃんと言うことを聞いてくれるのか心配である

 やっぱり俺には荷が重すぎたか、姉御に任せるとしますかね


「アルネシア様、僕はどうにもよく思われていないので、あまり話さないようにしますね」


「そう」


 あっさりとした返事が返ってきたがいいだろう

 俺は犬耳族が荷物を載せていた台車を引く生物に興味がわいた


「アルネシア様あの生き物の名前は何というのですか」


「知らないの? カヴァスっていってこの森にも生息している魔獣よ」


 へ~、こんな大きな奴がね、でもどうやって従えさせてるんだろうな


「魔獣なのにずいぶんとおとなしいんですね」


「当たり前でしょ、子供の時から育てているんだから私たちに牙をむくことはないわよ」


 なるほど赤ちゃんから育てることができたら魔獣と言っても襲ってくることはないんだな

 しかし迫力あるなぁ、俺めっちゃみられているんだけど噛まれたりしないよね?


「さあ行くわよ、あんまり見てると噛まれるわよ」


 え? それ本当? やばいじゃんさっさと行こう行こう

 俺は先に先頭に向かっていたアルネシアを追いかけた

 


 皆そろったので俺たちは犬耳族の元村を出発した

 一番先頭の馬車ならぬ犬車に乗った俺はアルネシアに案内を任せて話をすることにした

 3時間ぐらいかかるので暇なのだ

 普通ならば1時間半程度なのだが無駄な戦闘が増えるので大幅なロスになる

 大人数の移動も楽じゃないね

 ちなみにここにシアンはいないあいつは族長と一緒にいるのでたどり着くまで会うことはないだろう

 俺は隣にいた筋肉ダルマに話しかけることにした


「ゾラさんでしたっけ、あまり話す機会がなかったのですがすごい筋肉ですね」


「おう! そうだろ、鍛えているからな犬耳族一番の力持ちと言えば俺の事よ」


 ポージングを決めてニッと笑う

 彼は最初から俺の事を敵視していない数少ない犬耳族だ

 頭の中も筋肉でできているなと勝手に想像する

 だからこそ暇つぶしの相手になってもらおう


「でしたら今度鍛え方を教えてもらえませんか、この通り力に自信がないので」


 手を広げ自分の非力さを表す


「いいぜ! しかし俺の訓練はつらいぜ、ついてこれるのか?」


「努力します」


「ははは、そうか頑張れよ!!」


 痛い痛い背中叩くな、筋肉ゴリラ


「あまり乱暴にするなよゾラ、その方は黒龍の使役者、忘れたわけではないだろう」


 そう言ったのは黒い体毛の耳の短い犬耳族の名前は確かダックスだったか

 用心深そうにじっとこちらを見ている

 だがその瞳に敵意は感じられない


「おっそういえばそうだったな、あんた本当に黒龍の使役者なのか? あの時現れなかったが」


「自分でも驚いていますよ、でも戻れば証明できるますよ」


「それが罠かもしれない可能性もあるのですがね」


 ダックスは明らかに俺の事を疑っているな


「何事もまず疑うべきですからね、僕はあなたたちに信じてもらえるように頑張るだけですよ」


「そうですか、では一つ質問してもいいですか?」


「いいですよ」


「まずあなたは我々が自由に暮らせるようにするということですがそれは亜人の国を作るということでしょうか」


「ええ、そうですね一応そう考えてはいますが」


「そうですか......はっきりいうとそれは無謀ではないのでしょうか、亜人とひとくくりにされていますが我々はもともと人間族とは別の種族なだけであって仲がいいわけではないんですよ」


 確かにその考えは正しい

 もともと亜人とは人間と違う特徴を持っている人型の生き物なだけで勝手に人間がそう言ったからそう広まっているだけで彼らにはちゃんと種族名があるように誇りがあるのだ

 だけど今はそう言っていられる状況ではないことも理解してほしいところではある


「難しいことなのは分かります、でもやらなければいずれ滅びます、いつかではなく今、今からが始まりなんですよ、僕は精一杯手伝いたいと思います」


「なぜそこまでするのかと聞いても? あなたは一応人間族ですよね」


「僕は別に種族の違いなんてあまり関係ないと思っているんですよね、結局そこに生きているということに意味がある、そこに根ずくことさえできればそこはもうふるさとじゃないですか、そんな国を僕は作りたい、変えたいんですよこの世界を」


 彼は少し考えた後、笑顔を向けた


「面白い人ですね、今日あなたと直接話せる機会があってよかったです、これからよろしくお願いしますよ」


 手を出されたので握手をする

 手の裏とかに針とか仕込まれていないよなと警戒していたが杞憂だったようだ


「なんかよくわからねぇがよかったな! ははははは!」


「ええそうですね、まずは一歩前進したといえるでしょうね」


 ふっと笑いそういう犬に笑顔を作り


「そうですね」


 俺は二人の犬耳族と仲良くなることに成功した

 役に立ってくれることを期待しているよワンちゃんと裏では思っていたりする

 何はともあれ俺は仲良くなった彼らにいろいろ話を聞いた

 興味深い話は一つ

 かつての十の剣ガーディアンの話だ

 その十の剣の一人が犬耳族にいたらしい

 彼は身体能力もすごいらしいが上には上がいた

 そんな彼が十の剣に選ばれた理由

 彼は一匹の魔獣を従えていた

 その魔獣の名前はケルベロス

 この世界にかなり上位に君臨する魔獣らしい

 最近は確認されてないらしいから信じられないが存在が確認されたら即討伐に向かわないと国が亡ぶとまで言われているらしい

 三つの頭はそれぞれ、「保存」「再生」「霊化」の力を持つらしい

 保存

 相手の放つ魔法をくらい自分の体内に保存する

 再生

 保存した魔法を自分の魔法として再生する

 霊化

 保存した魔法を自分の魔力に変換する

 

 彼はどうやってかケルベロスを従え人間族と戦った

 まあ国を亡ぼせるほどの力を持った生物だ

 彼は人間族にとって一番の脅威だっただろうし勇者が出てくるまで誰も彼を止められなかった

 しかし彼は勇者の登場によって殺された

 

 

 ケルベロスか会いたいとは思わないがいたらかなりの戦力になるんだろうなと思っていたりする

 彼がどうやってケルベロスを従えていたのかは犬耳族でも知らないらしい

 残念だとはもうが彼らもそう思っているだろう

 しかし勇者どんだけ強いんだよ、絶対に会いたくないな

 やっぱりファフニールでも勇者が相手となるときついかもな

 はやく勇者対策を組んでおくべきだな

 よし帰ったらまずお菓子を食べながら考えよう

 やることを定め俺はしばしの間帰りの時を楽しんだ

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