第2話 コミックマーケット開催

イベントに向けて準備をしている中、同年代くらいの黒髪の女の子に出会った。



「初めまして、私はコスプレイヤーのユウナと申します」



ユウナさんは、丁寧に挨拶をした。それに習うように、イツキも挨拶を返した。



「こちらこそ初めまして、サークル月の星のイツキと申します。いつも、売り子をしてくださってありがとうございます」



そう言って、イツキはユウナに頭を下げた。



「い、いえ!私が好きでやっているだけなので、気にしないでください!」



ユウナは、胸の前で手振り恐縮していた。



「そう言っていただけると、嬉しいです。先ほどからきになっていたんですけど、その衣装はもしかして……」



ユウナの衣装は、黒いニーソックスに黒いミニスカート上半身にいくと、セーラー服を着てその上にクリーム色のスクールカーディガンを着ていた。ここまでは、普通の女子高生のコスプと同じだがイツキの絵のコスプレをしている、ユウナは違った。特徴的なのが、腰にレプリカだが日本刀を吊り、首に赤いスカーフを巻いていた。



「えぇ、イツキ先生が描かれた「ヒナ」のコスプレですよ!」



ユウナは、くるりと1周周りポーズを決めた。



「すごいね、よし今回も頑張ってもらおうかな」



二人は、談笑した後販売の準備のために段ボール箱の中から、厚い同人誌を取り出し机の上に並べた。



「大丈夫だよね……」



イツキの頭の中に去年のコミケの光景が、フラッシュバックした。その姿を見て心配したのか、隣にいたユウナがイツキの手を握った。



「大丈夫ですよ!私が売り子した時は、驚くぐらい買いに来てくれたんですから!」



ユウナは、笑顔でイツキのことを励ました。



「ありがとう」



イツキがユウナにお礼を言った時だった。チャイム音と共に、放送が流れてきた。



「間もなく、コミックマーケットC94を開催いたします」



会場全体から、拍手をする音と共に歓声が上がった。



「イツキさん!始まりますよ!」



ユウナは、興奮して手を胸の前で振っていた。程なくして、会場のシャッターが開きスタッフに連れられて行列が入場してきた。



「押さずに、ゆっくりと進んでください!」



スタッフが先頭を歩き、それに続いて行列が進み始める。



「走らず!ゆっくりと、サークルに向かってください!」先頭のスタッフが、列を離れると我先にと小走りでサークルに向かった。行列の数十人が、イツキサークルに向かってきた。



「えーっと、新刊とグッズを一種類ずつください」



イツキは、こんなにすぐ誰かが買いに来たことに驚いていた。



「イツキさん、お渡しをお願いしますね」



横では、ユウナが会計を行っていた。イツキも、机に並べていた同人誌とグッズを揃えて、頒布した。



「イツキ…!もしかして!これを描いた、イツキさんですか!!」



目の前で買いに来た人が、やや興奮してイツキに話しかけた。



「えぇ、イツキですが……」



目の前の興奮している客に。イツキは戸惑いながらも応答した。



「やっぱりイツキさんですか!いつも、同人誌見ていますよ!イツキさんの絵が、とてもその……かっこかわいくて大好きです!」



そこまで伝えたところで、前の前にいた客は列ができているのに気付き行ってしまった。



「僕の絵が、かっこかわいいか……うれしいな」



イツキは、誰に聞こえないように小声で呟いた。その後も、順調に売れ続け着々と用意した数は少なくなっていった。



「よし!!全部頒布出来たぞ!!」



コミックマーケット終了の三十分前に、全ての同人誌、グッズを頒布することができた。



「おめでとうございます!イツキさん!」



ユウナが、一緒に喜んでくれた。



「さて、僕はこの後他のサークルさんと打ち上げをするけど、ユウナさんも一緒にどうかな?」



イツキは、空になった段ボール箱などを畳みながらユウナを誘った。



「えぇ、ご一緒させてもらってもいいですか?」



ユウナは、笑顔で答えていた。コミックマーケット終了後、イツキとユウナは他のサークルと待ち合わせているお店に向かった。



「こんにちは~」



イツキが、ドアを開けて中に入った。



「こんにちは、もしかしてあなたがイツキさんですか?」



最初に挨拶をしてくれたのは、少し年上位の女性だった。

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売れっ子同人誌作家だけど売り子のコスプレイヤーが同じ学校の委員長だった 胡奈 @KONA2020

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