第八話「友達に心配される。でも、大丈夫」

――とまり@ソロキャン中:執筆キャンプ、ヤバイ。超進む。

――とまり@ソロキャン中:でも、テントの設営が超面倒。聖剣エクスカリバーじゃないと、テントが立たなかった。


――AKIRA@腹ぺこ!:アーサー王もビックリだな!


――とまり@ソロキャン中:さらに蚊に血を吸われた。泣ける。


――ハルハル@お休みです:えっ!? 大変ー!

――ハルハル@お休みです:血、全部吸われちゃったー!?


――とまり@ソロキャン中:どんな巨大な蚊に襲われたんだよ、わたしは……。


――ハルハル@お休みです:でもその蚊、とまとまの血を吸うなんて許せないわー。万死に値するわー

――ハルハル@お休みです:そのあたり一帯、今すぐ火の海にして始末してしまいましょうー♥


――とまり@ソロキャン中:わたしも死ぬわ……。


――AKIRA@腹ぺこ!:遙の発想がこえーよ!


――ハルハル@お休みです:でも、虫もいるし、いろいろ面倒でしょ。キャンプなんてやんなくてもいいのにー


――とまり@ソロキャン中:ほむ。確かに今のところなんか、良いことも悪いこともトントンで、金を払ってまでなにしてんだろうとは思っている。


――ハルハル@お休みです:でしょー。やっぱりそうよねー


――AKIRA@腹ぺこ!:それは同意だ キャンプなんてめんどくさそう!

――AKIRA@腹ぺこ!:しかも 飯はカップラーメンだろう?


――とまり@ソロキャン中:うん。今、温泉から出てきて涼んでいるところだから、これから帰ったら命を賭けてカップラーメン作りに励むよ。


――AKIRA@腹ぺこ!:ガス爆発させるなよ!


――とまり@ソロキャン中:わたしの異能が覚醒するぜ……。


――ハルハル@お休みです:ん?

――ハルハル@お休みです:ちょっと待って

――ハルハル@お休みです:そのキャンプ場のお風呂って、温泉じゃなかったわよね


――とまり@ソロキャン中:そうだけど……そんなことまでチェックしている、はるはるがマジ怖いわ。


――ハルハル@お休みです:うふふふふ……。

――ハルハル@お休みです:ということは、温泉にわざわざ行ったのねー?


――とまり@ソロキャン中:うん。ソロさんの車に乗せてつれてきてもらった。


――ハルハル@お休みです:……はい?

――ハルハル@お休みです:ソロさんって?


――AKIRA@腹ぺこ!:誰ぞ それ?


――とまり@ソロキャン中:隣のサイトにいた、見知らぬソロキャンパーのオジサン。ソロというのは、わたしがつけた名前ね。


――ハルハル@お休みです:へっ!?


――AKIRA@腹ぺこ!:ちょっ!

――AKIRA@腹ぺこ!:待てよ!

――AKIRA@腹ぺこ!:とまりん まさか知らないオッサンの車に乗って行ったのか?


――とまり@ソロキャン中:ほむ。


――AKIRA@腹ぺこ!:バカなの? バカだろう?


――とまり@ソロキャン中:失礼な。テストの順位、総合で三位から落ちたことないんだが?


――AKIRA@腹ぺこ!:うっせー! どうせオレは下からのが早いわ! 

――AKIRA@腹ぺこ!:じゃなくて 危ないことしすぎだと言ってんだ バカ!


――ハルハル@お休みです:そうですよー! なにかあったらどーするんですか!

――ハルハル@お休みです:湯上がりの、かわいいかわいい女子高生を車に乗せて、平静でいられるオジサンなんていないのですよー!


――とまり@ソロキャン中:そうなの?


――ハルハル@お休みです:どんなオジサンでもグヘグヘするのが当たり前ですよー!


――とまり@ソロキャン中:もうそれ、オジサン全体へのセクハラ発言じゃないですか、はるはるさん。


――AKIRA@腹ぺこ!:ともかく普通 知らないオッサンの車に乗るとかしねーぞ!


――とまり@ソロキャン中:まあ、そうなんだけどさ。今のところ大丈夫。これからキャンプ場に帰るところ。


――ハルハル@緊急警報!:待って!

――ハルハル@緊急警報!:そこで待っていてください!

――ハルハル@緊急警報!:今、我が家の私設警備隊所属・第三空挺部隊を現地に向かわせますから!


――とまり@ソロキャン中:いらんわ。


――ハルハル@緊急警報!:大丈夫です。その場に居合わせた者の記憶はすべて消し去ります!


――とまり@ソロキャン中:どんなテクノロジーだよ……。


――ハルハル@緊急警報!:もちろん、その不埒な中年男の存在自体、過去からきれいさっぱり消し去りますから!


――とまり@ソロキャン中:そっちのが怖いから落ちつけ。大丈夫だから落ちつけ。


――ハルハル@緊急警報!:大丈夫な訳ありません!

――ハルハル@緊急警報!:絶対に、とまとまはオジサンの慰み者に……あ、空挺部隊にビデオ撮影を頼まないとー……うふふふふふ……


――とまり@ソロキャン中:おまえはどこまで本気なんだ……。

――とまり@ソロキャン中:ともかく大丈夫だ。そういう人間じゃない。


――AKIRA@腹ぺこ!:また そんな根拠のねーことを言うし


――とまり@ソロキャン中:わたしの人を見る目、今まではずれたことあった?


――AKIRA@腹ぺこ!:それはねーけどさ これからもないというわけでもないだろうが


――とまり@ソロキャン中:ほむ。それはそうだけど。

――とまり@ソロキャン中:ただね、たぶんソロさんは、わたしの小説に出てくる、【刹那】ってキャラいるじゃん? あれみたいな感じ。


――AKIRA@腹ぺこ!:え? あんなカッコイイ感じのクールキャラなの?


――とまり@ソロキャン中:……いや、見た目は特にかっこいいわけではないし、クールと言うよりダルそうな感じだけど。


――AKIRA@腹ぺこ!:ぜーんぜんちがうじゃん!


――とまり@ソロキャン中:ほむ。なんだろう。

――とまり@ソロキャン中:他人と不用意に距離を詰めたりしないところとかね、似ている。

――とまり@ソロキャン中:ただ確かに、刹那は二十歳で、ソロさんは三十路に入ったばかりぐらいのオジサンだから全然違うけどさ。


――AKIRA@腹ぺこ!:おい! 待て、とまりん!

――AKIRA@腹ぺこ!:三〇歳はオジサンじゃないぞ! 訂正求む!


――とまり@ソロキャン中:オジサンだろ?


――AKIRA@腹ぺこ!:三〇歳は オニイサンでもオジサンでもない 脂ののった微妙なお年頃なんだ!

――AKIRA@腹ぺこ!:一番カッコイイ時期なんだぞ! 三〇歳をオジサン呼ばわりは オレが許さん!


――ハルハル@緊急警報!:あら。あきあきったら、オジサン趣味なの?


――とまり@ソロキャン中:初めて知る、親友のストライクゾーン……。


――AKIRA@腹ぺこ!:今は そんなことはどーでもいいじゃん!


――ハルハル@緊急警報!:まあ、そうね

――ハルハル@緊急警報!:とまとま、とにかく危ないわー。男は魔物なのよー

――ハルハル@緊急警報!:巨大な蚊の針より怖いモノ、刺されちゃったらどうするの!?


――とまり@ソロキャン中:なんじゃ、そりゃ。どんな化け物だよ。

――とまり@ソロキャン中:ともかく平気。心配してくれてありがと。


――ハルハル@緊急警報!:一応、行く前にスマホにインストールしたあのソフトで、GPSをオンにして一分ごとに情報を送ってねー。位置情報がキャンプ場に行くまでにとまったら、そこに指先ひとつで大陸間弾道ミサイルを撃ちこむから


――とまり@ソロキャン中:そんなもの簡単に撃ちこむな。


――ハルハル@緊急警報!:なら、連絡するだけにしておくわー


――とまり@ソロキャン中:ほむ。それなら了解。やっとくよ。

――とまり@ソロキャン中:でもさ、たぶんいい人だよ。


――AKIRA@腹ぺこ!:なんでわかるんだ?


――とまり@ソロキャン中:だって、わたしの話をきちんと聞いて、細かいボケにもちゃんとツッコミいれてくれるもん。

――とまり@ソロキャン中:晶と遙みたいに、ちゃんと向きあって会話してくれるんだ。


――AKIRA@腹ぺこ!:……その言い方はずるいな


――ハルハル@緊急警報!:本当よねー


――AKIRA@腹ぺこ!:ってか オレたちの会話の時 とまりんがツッコミじゃん


――とまり@ソロキャン中:ほむ。そういえばそうだった。

――とまり@ソロキャン中:つまり、わたしがいい人なのか。


――AKIRA@腹ぺこ!:おひ!


――ハルハル@緊急警報!:やれやれねー




「おい。帰るぞ」


「あ、はい。了解です、ソロさん」


「……本当にその呼び方なのか」


「いいじゃないですか。……ところでこの温泉、居心地いいですよね。根が生えそうですよ」


「まあな。だけど早く帰らないと暗くなりすぎる。飯の支度が遅くなると困る」


「ほむ。でも、まだ一八時前ですよ」


「キャンプは早めに行動しないとだめだ。もうすぐに外は真っ暗になる。というか、もう暗いな」


「え?」


「雨が降ってきている……」


「マ、マジですか……もう?」


「そう言えば、テーブルや椅子とかしまっておいたか? タープがないのだからビショビショになるぞ」


「……あ……」


「バイクにカバーはかけたか?」


「……あ……」


「そう言えば傘とか雨具は持ってきているのか?」


「……あ……」


「やれやれ。この後、地獄が待ってるぞ……」


「ほむぅ~んっ!」

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