第17話 希望の世界4 三位一体

宙に舞った状態ではなす術もない。えぬが落下する。そのままミミズの口の中へと飲み込まれてしまった。


すぐに、ケイが掴んだままだった手綱を引き寄せ、空中でカナヘビに跨った。カナヘビは巨大ミミズの胴体に張り付くように着地し、そのまま胴体に沿うように移動した。


「この辺かな」ケイが巨大ミミズの少し膨らんだ部分に手を当てる。


「ワン、ツー、スリー!」


 ケイが声を上げると、さっき飲み込まれたはずのえぬがポンという音とともにミミズの腹から飛び出してきた。ミミズには傷一つついていない。そのままケイはえぬをカナヘビに乗せた。


「すごい、魔法みたい」


「手品さ」


 ミミズの粘液で制服がべたべたしていたが、それが気にならないくらいに三人の不思議な力にえぬは驚いた。ケイとえぬはカナヘビに乗ってミミズの背中を滑り降りた。他の2人も無事に着地していた。「あたしくらい足が速いと空中でもなんとかなるのよ」とアンナが自慢げに言った。


 ミミズ2匹は怒り狂った様子でうごめいている。再び狙いをさだめてえぬたちの方へ向かってきた。


 「よし、ショウ」

 

 「あいよ」


 「このハンカチにはタネも仕掛けもございません」


 そう言ってケイは1枚のハンカチを取り出した。どこにでもありそうな綿のハンカチ。


 「それが、あら不思議」


 ケイがショウにハンカチを被せた。すると、ショウの姿は突然消え、ハンカチだけがひらひらと舞った。舞っているハンカチの側を何かが素早く通り過ぎた。煌めきが残っている。アンナだろう。煌めきはまばたきをするよりも速くミミズの頭へとたどり着き、やがて止まったアンナの姿が見えた。すると、アンナが手にしたハンカチから、ショウが飛び出してきた。

 

 「こっちのほうがやっぱ素早く動けるな」

 

 そう言ってショウは力強くバットを振り下ろした。巨大ミミズは地面を揺らすほどの声をあげ崩れ落ちた。「2匹目!」とショウはガッツポーズをした。


 最後の1匹は身の危険を本能で悟ったのか、地面に潜り込んで去っていった。

 

 「とりあえず、片付いたな」


 ケイが安堵のような息を吐いた。流れるような3人の動きをえぬはただ眺めていることしかできなかった。


 「すごい。ヒーローみたい」と、3人の活躍に惚れ惚れとした。この3人といれば、この世界はしばらく安心できそうだ。


 





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