ある家族の話―プロローグ―

 ――――家族のことは覚えていない。

 ただ、知識としては知っている。

 日本有数の、魔術師の家系。

 その家の、どの辺りに位置する人間かは知らない。

 だが僕の父親はそこから飛び出し、旅をしていたそうだ。

 旅先で一人の女性と結ばれ、その女性とも旅をするうちに――四人の子が生まれた。

 おそらく僕は三番目の子だろう。

 名前が秋人。

 季節が名前に入っていることから、春だの夏だのとつけてきたに違いない。

 それなら秋は三番目だ。

 父が僕のような、よほどの変人でなければ、だが。

 僕の名前は飛鳥井秋人。

 夏が舞台のこの物語にはちと相応しくない名前だが、それは仕方ない。

 文句を言うなら今どこでなにをしているのか分からない僕の両親に言ってくれ。

 ではそろそろ始めよう。

 久々の、魔法使いの物語。

 ある町で出会った、一つの家族の物語。

 少し長くなるけど、そこはどうかご容赦を。

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