第41話 赤の大佐

 なんかそんな気がしたんだよ。いやな予感っていうの? 当たるもんだよねー、そういうのって。


「何をしている! 遊んでいる暇などないぞ!」


「はいっ!」


 蜂の王である俺は今、赤アリのコロニーで出荷作業に追われていた。酒の瓶の入った木箱や酒樽。そんなものをクロアリの眷属の引く荷車に運び入れているのだ。


『ゼフィロスさま、ファイトでありますよ!』


 俺の乗ってきたアイちゃんも荷車を取り付けられ、クロアリの隊商と共に先に女王シルフのコロニーに行かされてしまう。すべてはメルフィの適当さがもたらした事だった。


 メルフィの交渉した隊商は俺の護衛を引き受ける代わりに条件を出した。アイちゃんを赤アリのコロニーからの荷運びに使ってもいいのならば引き受けると。メルフィはそれに何も考えずに同意。赤アリのコロニーにはセリカもいるから移動は何とかなるだろうとのアバウトな感覚だ。そしてなんやかんや言い立てる俺とアイちゃんに胸をそらせてこう言ったのだ。「困ったことになったら殴ればいいのですよ」と。


 そして俺は、着くなり作業現場に放り込まれ労働を強いられる。働くこともできない奴と交渉などする意味はない。赤アリの女王、ソフィアは見下すような目でそう言った。対等に立ちたくはまず力を見せよと。例によってアリ族の超理論だ。


「三番の倉庫の分、終わりました!」


「よし、次は六番だ!」


 こき使われる俺を振り返りながらアイちゃんが出発する。俺は大丈夫だ、と親指を立てて笑顔で見送った。


 蜜のせいか力を増した俺は赤アリの人たちに劣らぬ働きを見せていた。とはいっても物を運ぶ、それだけのことだが。それでもシルフ女王のところで働かされた時とは雲泥の差だ。何となく一人前の仕事ができたようで内心ちょっと嬉しかった。ただ、首に巻いたマフラーがこの真夏には暑すぎた。


 日も暮れようとするとき、仕事の終了を告げるラッパが鳴り響いた。


「全員集合!」


 女王ソフィアの号令がかかり、俺たちは荷物のなくなった出荷場へと集まった。総勢で300人余り。


「同志諸君。本日の務めご苦労であった。体を休め、明日に備えよ」


「はっ! 食事は0600より第一班から! 風呂は第6班からだ! 各自片付けを済ませ、順次解散!」


「「はっ!」」


 夫らしきたくましい男が号令をかける。するとみんなは敬礼をしてきびきびと歩いて行った。なんだここ、軍隊? そういえばみんなカーキ色の軍服みたいの着てるし。


「さて、ゼフィロス殿といったか。貴殿は私と共にこちらに来てもらおう」


「あ、はいっ!」


 女王の後ろに俺と、そしてさっき号令をかけていた男の人が続いた。


「同志ネロス。貴様は彼を風呂に案内して差し上げろ。私も湯を使う。ゼフィロス殿、貴殿の働きは十分に確かめさせていただいた。風呂の後は酒でも酌み交わしながら話をしようではないか」


 女王ソフィアは口元に微笑みをたたえ、俺に握手を求めた。



「いやあ、ゼフィロス殿、大した働きぶりでありましたな」


 ネロスさんは、はっはっはっと笑いながら俺の背中を流してくれる。ここの風呂は機能重視の質素な作りだったがこういうのも悪くない。


「ははっ、たまたまですよ。力仕事だけでも役に立てて嬉しいです。前にクロアリのコロニーで働かされたときはヘロヘロでしたし」


「うちの女たちに比べても遜色ない働き。それに娘のセリカからも聞いておりますぞ? 北部の戦闘では自らエルフを」


「捕まってた奴を斬っただけですよ。褒められるようなことじゃ」


「ご謙遜を。……それよりも、」


 ネロスさんは急に低い声で俺の耳元にささやいた。


「蜂族を手中に収めたその実力、此度ももちろん発揮していただけるのでしょうな?」


 やや脅すような声でそういった。


「えっ?」


「勇者グランからは文が。現在このコロニーで成人した男は私一人。意味は、わかりますな?」


「いや、普通に挨拶に」


「意味は、わかりますな!?」


 短髪でいかにも軍人、といった強面のネロスさんに強く念を押され、俺は、「あ、はい」と答えるしかなかった。


「いやあ、さすがはインセクトの希望の星、ゼフィロス殿ですな。私もいささかそっちは強いほうではありますが、さすがに一人では」


「あの、ちなみにほかの夫の人は?」


「一人は病に倒れ、今一人は酒に溺れて転落死。残ったのが私、というわけですな」


「病はわかりますけど酒に溺れてってのは」


「そのことが女王の心の傷に。さ、そろそろ行かねば」


「そういえばセリカは?」


「ああ、あの子は今は閉じ込めてます。貴殿とは親しいようですが、あの子が騙されていて、それが貴殿、いや蜂族に優位に運ぶように仕組まれた謀略では? と疑われてね」


「誰にです?」


「決まってますよ、先ほどの酒に溺れた男も、そしてセリカも。と、いうわけですな」


「ははは」


 そう乾いた笑いを浮かべるしかない俺は体を拭いて、着替えを済ませ、マフラーを首に巻く。そして鉄でできた頑丈そうな扉をネロスさんがノックした。


「ネロスであります、ゼフィロス殿をお連れいたしました!」


 すると中から「入れ」という声が聞こえた。


「では、くれぐれもお頼みいたします。良いですね?」


 鉄の扉がぎぎぎっと開くと中は思ったよりも明るかった。調度品は実用重視、飾りっ気はまるでないが、一つ一つ丁寧に作られたもののようだ。いささか古ぼけたソファに先ほどまでの軍服と違い、真っ赤なドレスを着た女王ソフィアが腰かけていた。


「同志ネロス。ご苦労だった」


「はっ!」


 敬礼したネロスさんはさがっていった。


「どうした、そのような顔をして。私とて女だ。来客を迎えるに、衣装ぐらいは整える。まあ、座れ」


「はい」


 女王ソフィアの対面に腰を下ろすと、テーブルにあったグラスに透明な酒を注いでくれる。カチリとグラスを合わせ、乾杯し、まずは一杯酒を飲む。


「ふう、結構きつめですね、この酒は」


「私たちの命の水、ウォッカだ。中でもこれは特別な味付けでな。外には出さぬ逸品だ」


「へえ。そうなんですか」


 そういいながら俺は葉巻を取り出し、ライターで火をつけた。それを見た女王ソフィアがくすっと笑いを漏らした。


「あ、すいません、自然に。ここ、禁煙ですよね?」


「いや、かまわん。私も一服つけたかったところだ。だが、吸わぬものは嫌がるのでな」


 そういって自分も葉巻を咥えて火をつけた。


「で、本題に入ろうか。いったい何の用で我がコロニーに? ゼフィロス殿?」


 その声はとても冷たく俺の耳に響いた。


「あ、そのですね、北の城でこちらのセリカたちと一緒に戦ったので挨拶をと」


「ほう、蜂の王となられた貴殿がわざわざ単身であいさつに、か。実に光栄な話ではあるな」


 疑い100%のまなざしで女王ソフィアは俺を見る。


「その、蜂の王ってのも極めて内部的な話というかですね。ただのまとめ役というか」


「正直に申し上げよう。私は貴殿を信用していない。娘のセリカはうまくだませても私はそうはいかん」


「あの、だますって?」


「もっと言えばあの評議長も信用してはいない。我らが評議会に名を連ねるのはエルフ憎し、その一点のみだ。そのエルフと戦うに、エルフに近いトゥルーブラッド、貴殿や評議長を信用しろ? 無理な話だとは思わぬか? まして貴殿は始祖アイリスの兄だというではないか。いずれ我らをまとめて。私がそう考えるのもおかしくはあるまい?」


 うわやっべー、帰りてー。そもそもここではセリカにちょっと挨拶して、そのままクロアリのコロニーに行く予定だったのに。


 ソフィアはソファから立ち上がり、女王らしい大柄な体でコツコツとヒールを鳴らしながら話をつづけた。


「私が思うに貴殿や評議長は対エルフで我らをまとめ上げ、エルフに対し優位に。そしていずれ弱ったエルフもを傘下に加え、この世界に覇を唱えるつもりでは? 貴殿はすでに蜂族を掌握した。次は我らアリ族というわけだな」


「えっと」


 答えに詰まり言いよどむと、女王ソフィアはぐっと俺の襟首をつかみ上げ、その右手に剣を作り出す。そしてそれを俺に突き付けながら言った。


「答えろ、トゥルーブラッド! 貴様らは何を企んでいる?」


「あのですね、そんなことは全くなくて、俺もカルロスもただ、エルフを」


「エルフを?」


「その、討滅したいかなって」


「何故だ」


 そう問いかけるソフィアの目はどこまでも残酷だった。下手な答えをすれば殺す気満々。


「理由はいろいろ。カルロス、いや、評議長閣下はエルフとは考えが合わずにクロアリの一族になったと」


「そう聞いている。もうかなり昔の話だがな」


「そして俺は、」


「貴様は?」


「エルフが嫌いなんですよね。匂いも、声も」


「はっ?」


「くさいんですよ、あいつら。生臭いというか。耐えられない臭いが」


 ソフィアは目を丸くして俺を見ると、不意に剣を消失させ、襟元をつかんだ手を緩めた。


「ははっ、はははは!」


 そういって額に手をやりながら笑うとそばの机に浅く座りながら葉巻を大きく吸い込んだ。


「なるほど、なるほど。匂いが嫌いか。よくわかる話だ。貴殿らトゥルーブラッドにあの醜悪な匂いがわかるとは思わなくてな」


 そう言うとソフィアは転がったグラスを俺に持たせ、酒を注いでくれた。


「今までの失礼は詫びよう。あの匂いがわかるのであれば疑う余地はない。奴らは滅ぼさねばならぬ。そうだな?」


「そう思います。普通に共存とか無理ですよ。だから東の集落も潰しましたし」


「その話も聞いている。それも我らをたぶらかす為の策かと思っていた。だが匂いがわかるのであれば当然だな」


 ソフィアは急に相好を崩し、酒を飲み始めた。



「だからぁ、って、っちょっと聞いてんの?」


「ふぁい、聞いてますよぉ」


 しばらくすると俺たちは完全に酔っぱらっていた。


「わたしぃずっとさみしくてぇ。ひっどいと思わない? あんなに愛してやったのに逃げ出すなんてさぁ」


「おもいまふぅ」


「捕まえたと思ったら今度は酒浸り。最っ低な男なのよぉ」


「死んで当然です!」


「そうよねぇ。で、あんた、この真夏になんで襟巻なんかしてんのよぉ!」


「俺だってこんなのしたくないんですぅ! 暑いし」


「だったら取ればいいじゃない。傷でも隠してんの?」


「でもだめなんですぅ」


「いいから取りなさいよ!」


 あっ、だめ! と言ったときはすでに遅かった。俺のマフラーはソフィアに取られ、そのソフィアはぽーっとした顔をしていた。


「なにこれ、すっごく素敵な匂い」


「あのですね、俺、体が変化してるみたいで」


「どういうことよ?」


 酒に酔った頭で適当な説明をする。インセクトの尻尾から出る蜜が気に入ったから片っ端から吸ってやったらこうなったと。


「あはははは! そんなことすりゃ体が変化して当然よ。んで、どうなの?」


「どうなのって?」


「わたしの蜜も吸いたい?」


 一瞬うん、と言いかけたが丁重にお断りした。なぜなら女王ソフィアはめんどくさそうな感じがしたのだ。そう、俺の男の勘が告げていた。


「ちょっと待て。私の蜜は吸う価値もないって?」


「えっ、いや、恐れ多い的な?」


「もう一度だけ聞いてやろう。私の蜜を吸いたいか? よーく考えて答えろ」


 女王ソフィアは恐ろしい顔で再び俺の襟首をつかむ。


「あ、あははは、吸いたいです!」


 そういうとニコッとほほ笑んだ後、恥ずかしそうに身をくねらせた。


「えー、どうしよっかな。なんかぁ、恥ずかしいし、それに男の人に吸わせるのって初めてだしぃ」


 めんどくせー! ちょーめんどくせえ! イラっと来た俺はすべては酒のせい、酒の上での過ち、そう思うことにしてソフィアの尻尾をぎゅっとつかんだ。


「あ、ちょっと! ダメよ! いきなり!」



 翌朝、俺は知らないベットの上で目を覚ました。


「おはよう、ダーリン。よく眠れた?」


 そこにはエプロン姿の女王ソフィア。見た目少し熟女入ってる彼女の姿は趣向によって好みの別れるところだ。俺は肯定派であった。そのソフィアは昨日と違って朝から甲斐甲斐しく俺の世話をする。


「昨日、あんなことがあったんだもんね。もう、私たちは他人じゃない。…やだ、恥ずかしい」


 酔っぱらってやっちゃった次の日の朝。女はその既成事実を万全とすべく行動する。女王ソフィアにはそんな強固な意志が感じられた。


「ははは。その、仕事は?」


「そんなものはネロスに任しておけばいいのよ。ほら、こっちに来て。食事にしましょ」


 うーん、俺と交わった蜂族は働きはじめ、アリ族は堕落するのかな。なんとも不思議な現象だ。それにしても、ここはおそらく女王の寝室。それにしちゃあやたらに質素だ。


「私たちは皆で働き平等に分かち合う。そうやってやってきてんのよ。だから女王だからっていい生活をしているわけじゃない。ここが蜂とアリの違いかもね」


「そういうのもいいんじゃない?」


「悪くはない、これが正しい、そう思ってきたけどね」


「ん?」


「蜂族の女王は皆着飾ってる。それに負けたくはないのよねぇ」


「なんだ、そんなこと?」


「私も女なの! ダーリンにあいつらより劣るって思われたくない」


「ソフィアの軍服姿は十分に素敵さ」


「そうなの?」


「そうそう、だから無理にあっちの価値観に合わせる必要なんかないよ」


「でもぉ。ダーリンは王で、蜂の連中から一杯貢物だってもらってるんでしょ? 私たちはそれほど余力もないし、せめて見た目くらい」


「貢物って?」


「えーっとなんだっけ。昔の言葉でいうと税? 王ってのは税をとってそれで暮らしてるって」


「あの、そういうことは一切。うちのコロニーはうちの人たちの働きで暮らしてるけど?」


「あはは、それじゃ王様じゃないわよ」


「まあね。でもそれでいいんじゃない? 食い物に困るわけでもないし、着るものもお酒もみんなあるんだから」


「なるほどね、そういうこと。いいわ、私もダーリンを王と認めてあげる。と言ってもエルフとの戦いに人を出すだけしかできないけど」


「それで十分さ。みんなで一緒に戦えるなら助かるし」


「そうねえ。王ってのは私たちには抵抗があるのよね。貢物を出さなきゃいけない感じで。だからこうしましょ、あなたは私たちの大佐。大佐ってのは昔の言葉で兵を率いる偉い人のことらしいわ。それがいいわね」


「あはは、王でも大佐でもどっちでもいいさ。どっちも俺には過ぎた役だし」


 それから二日ほど、赤アリのコロニーで過ごし、その間ソフィアは俺にべったりだった。そして自分たちの着ているのと同じ軍服を俺に誂えてくれて、そこにソフィアが高級軍人っぽい装飾をあしらってくれた。


「大佐殿、よくお似合いですな」


「そうだろう? 同志ソロス。我らはこれより大佐殿の同志としてエルフと戦う。そのつもりでな」


「はっ! 中佐殿」


 俺は大佐でソフィアは中佐、そういうことにしたらしい。ソフィアは俺のいつも着ているコートにも手を加え三ツ星の階級章を肩と胸に縫い付けた。


「ねえ、ソフィア。そういえばセリカは?」


「あら、すっかり忘れてたわね。同志ソロス!」


「はっ!」


「セリカを私の部屋に出頭させろ。身ぎれいにしてな。30分の猶予を与える」


「了解であります、中佐殿」



「ねえ、どう? 似合う?」


 ソフィアは俺のコートを羽織ってくるりと回転する。冬になったら自分も俺とおそろいでコートを作りたいらしい。


「うーん、やっぱり、背中は裾から腰まで切れ目を入れたほうがいいね。尻尾のところがもこもこしてる」


「そうよねえ。そうするしかないか」


 大柄なソフィアには軍服姿がよく似合う。みんなの前でははきはきとした軍人口調なのに、俺にだけは甘ったれた声なのもいい。ソフィアは今度は俺にコートを着せかけて、口元に指を置いて考え始める。


「うーん、やっぱり問題は襟巻よねえ」


「外に出るにはあれをしとかないといろいろ問題が」


「そうよねえ。けど暑いじゃない」


「仕方ないさ。そこは我慢しないとね」


 そんな話をしていると、鉄の扉をたたく音がする。


「セリカ、出頭いたしました」


「入れ」


 ソフィアがそう答えるとぎぎぎっと扉が開いて軍服姿のセリカが顔を見せた。


「あ、ゼフィロス殿!」


「気をつけい!」


 ソフィアの怒号にセリカは踵を鳴らして直立する。


「同志セリカ。ゼフィロス殿は我らが大佐殿となられた。口の利き方には注意しろ」


「はっ! お母様」


「馬鹿者! 私は中佐である!」


「申し訳ありません中佐殿!」


 なんかコントっぽいことが始まった。


「同志セリカ。貴様はわがファーストである。いわば士官だ。よって貴様を少尉に任ずる」


「はっ! ありがたき幸せです!」


「では同志少尉。貴様に任務を与える」


「はっ!」


「部下を率いて大佐殿をクロアリのコロニーまで送り届けよ。無論、失敗は許されぬ」


「はっ! 一命に替えましても!」


「うむ、出発は1300。部下の選定、必要な装備すべて貴様に任せる。滞りなく準備せよ」


「はっ!」


「ではさがってよろしい」


「失礼いたします!」


 ぱたんと扉が閉まるとソフィアはふうとため息をついた。


「大丈夫かしら、あの子。あったま硬いのよねえ」


「あはは、確かに」


「それに変に正義感が強くて。北の城に巣分けを、なんて面倒なこと勝手に引き受けてきちゃうし」


「俺もさ、あそこはどうなのって思うんだ。獅子族はわがまま言ってあそこに移住したわけだし。それを守ってやる必要なんかって。キイロスズメバチもあそこにコロニーを、って言ってたけど」


「そうよねえ」


「おかげで俺も冬はあそこに行く羽目になりそうだしさ。迷惑な話だよ」


「あら、ダーリンも行くの? ならうちも」


「けどさあ、冬は寒そうだし。エルフが冬に来たらどうすんのさ。言っとくけど蜂族は冬はあてにならないからね」


「私たちも冬は得意じゃないのよね。でも、何もなしって訳にはいかないわ。巣分けとまではいかなくても何人かは置いておかないと。寒くても蜂よりは動けるし。厚着すれば少なくとも凍死することはないわ」


「まあ、居てもらったほうが助かるけどさ」


「その時になったらセリカに一隊をつけて同行させる。ダーリンを獅子族なんかに任せておけないもの。そんなことより、行っちゃう前にもう一回。ね?」



 その日の午後、俺はセリカと一緒に赤アリにまたがり、十人ほどの赤アリの同志を護衛に旅立った。

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