第5話セスタリカの姫

  先ほどの謁見の間での一件で、セスタリカの姫、アリアが俺と同行することが決まった。


 俺はアーロンに先にパリスたちの元に戻り、これからの事を伝えるように向かわせた。

 俺は城内をスキップしながら品定め中。


 セスタリカにも可愛子ちゃんたちがいるじゃないか。

 通りすがりにメイドの尻を撫でる。


「っきゃ!」


 驚き、飛び跳ねる子猫ちゃん。

 ついでにスカートを捲り確かめる。

 紫です。


「離してください! 人を呼びますよ!」


 スカートの裾を引っ張り中を確認する俺に、涙目になりながら訴えかけてくる。

 ちとはしゃぎ過ぎたか。


「すまんつい手が動いた」

「な、何なんですか貴方わ!」

「アイーンバルゼンから来た、王子様だ!」


 俺が王子と名乗ると慌てて頭を下げ、謝罪の言葉を口にする。


「申し訳ございません! ご無礼をお許し下さい」


 無礼な事をしたのは俺の方だ、謝る事はない。


「無礼なのは俺の方だ! お前があまりに魅力的だったので、つい手が出てしまった。すまない」

「そんな! 魅力的だなんて。王子様にそんな言葉を言っていただけるなんて光栄です」


 桃色に頬を染め、両手で頬を隠し恥ずかしがる姿!

 堪らん! ここがアイーンバルゼンの王宮なら、直ぐに寝室に連れて行くところだ。


「ところでひとつ尋ねたい」

「なんでしょう王子様?」

「アリアは今どこにいる? これからアリアとココル村に行くのだが、支度にどのくらい掛かるか聞きたくてな」

「それでしたらご案内いたします」


 メイドに案内され、アリアの部屋の前までやって来た。

 メイドは部屋の前で立ち止まり「アリア様に確認するのでここでお待ちを」なんて言ってくる。


 確認など必要ない、アリアはもう俺のものなのだから。


「その必要はない」

「っえ!」


 メイドを押しのけ豪快に扉を開ける。


 バーン!


「アリア居るか?」


 部屋に入るとパンツ一丁のアリアが両手を広げ、両脇に控えるメイドが寝巻きに着替えさせているところだった。


「な、なんであんたがいるのよ!」


 赤面し、パンツ一丁のまま屈み込んでしまったアリア。

 そのアリアの前に立ち、両手を広げアリアの素肌を守ろうとするメイド達。


「アルトロ様すぐに部屋からおい出で下さい」

「アリア様は着替え中なのですよ」

「早く出ていきなさいよ」


 ヒヒ、ドSのアリアが涙目で恥じらっている!

 堪らん! 最高の眺めだ!


 こんな最高のシュチュエーション、出て行けと言われて出て行く俺ではない。

 俺は部屋の奥にあるベッドまで歩き、腰掛けた。


「な、何してるのよ! 早く出ていきなさいよ!」

「それよりアリア、着替えないのか? それとココル村に行くのは明日なのか?」

「こんな夜遅くに行くわけ無いでしょ! 早く出て言ってよ! あんたがいたら着替えられないでしょ!」


 極め細やかな透き通る肌、流石はお姫様だな。

 姉様たちにも負けていない。


 それに、寝心地が良さそうなベッドだ。

 両手でベッドの弾力を確かめる、申し分ない。


「じゃあ今日は俺もここで寝るか!」


 アリアは信じられないといった顔で俺を見ている。


「な、何考えてるのよあんた! 相変わらず頭おかしんじゃないの!」

「相変わらず? どう言う意味だ?」

「惚けるんじゃないわよ! 子供の頃散々いやらしい事しておいて!」


 輪廻転生で人に生まれ変わって以来、出会った女全てにしてきたからいちいち覚えてないな。


 でもそれで俺に敵意むき出しだったんだな。

 納得。


「すまんなアリア! 子供の頃のことは覚えていないんだ。だけどお前がずっと俺を思い続けてくれていたとは感激だな」

「はぁ? どこをどう聞いたらそうなるのよ」

「それに美しい体を隠すことはないぞアリア。未来の夫に見せてみよ」

「誰が未来の夫よ! あんたとなんて死んでも嫌だから!」


 散々文句言っていたが、諦めようで俺に背を向け、着替えを済ませたようだ。

 出発が明日ならアーロンたちにも伝えておかねばな。


「すまないが誰か城の前で待機している兵たちに、出発は明日だと伝えてきてくれないか?」

「かしこまりました」


 アリアの着替えを終えたメイドが迅速に対応してくれる。


 アリアは不満げに腰に手を当て、俺の前に立っている。


「いつまでここに居るつもりよ? 出て行ってくれる」

「未来の夫に随分じゃないか」


 あきれ果てたのか、深く溜息をつくアリア。


「申し訳ないけど私には心に決めた人がいるの」

「知ってる、俺だろ!」

「違うわよ! ファゼェル国の王子、セストよ」

「そいつはお前とお前の国の窮地に駆けつけてくれたのか?」


 俺の言葉にアリアは苦虫をか噛み潰したように顔をしかめ、拳を握り締め黙ってしまった。

 言いすぎたか。


「悪かった、でも俺なら惚れた女の為なら戦火の中にも飛び込むぜ!」


 黙り込んだまま一切反応しなくなってしまったアリア。

 俺の声などもう聞こえていないのかもしれない。


 俺は残っていたもうひとりのメイドに、客室に案内するように告げ、アリアの寝室を後にした。


 案内された部屋のベッドに転がり、久々に独りきりの時間を過ごすことになる。


 ――翌朝、ココル村に向かうため飛空艇に乗り込むが、アリアは俺の顔を見ようともしない。

 完璧に怒らせてしまったようだ。


 悪いのは全部ファゼェル国のセストとかいう奴だ!

 心を鎮めるため近くにいたパリスの尻を撫で、気持ちを落ち着かせる。


「な、なにするんだアル!」


 女の尻は精神安定剤だな!

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