私、提案したり自爆したり。

「初詣、一緒に行かない?予定空いてれば、だけど……」


祐樹くんから嬉しいお誘いがあった。

いつも受け身の祐樹くんから誘ってくれるなんて!


だけど、生憎年末年始はおばあちゃんの家に行くことになっている。残念。


ちなみに、呼び方を変えたのに敬語なのは半ば癖だ。

あと後輩感がして良いというのもある。

私、何気に後輩彼女ってポジションが好きみたい。


仕方ないから私は、祐樹くんに無理だって伝えた。

祐樹くんは目に見えて落ち込んだ。

そこで私は、天啓のように降ってきたアイデアを提案してみた。


「年が明けるタイミングで電話とか、どうですか?」


「おぉ……!」


先輩がガバッと身を起こした、錯覚を覚えた。

想われているようでとても嬉しい。

もちろん私も同じくらい、いや、それ以上に先輩のことを想っている。

そんな二人はみんな認める仲良しカップル。


って、張り合っても仕方がない。

話を進めないと。


「何時頃なら大丈夫ですか?」


「年跨ぐ感じで電話できたらなーなんてですね……無理だよね、さすがに。」


先輩が申し訳なさそうに言う。

だけど、私はなんの問題もない。


というのも、どうせ家族はテレビで「いくねん、くるねん」を見てるから。

あの、お寺の除夜の鐘を流す番組。

名前はきっと橦木しゅもくが行ったり来たりする様子からだろう。


そんなことはどうでもよくて、早く祐樹くんを喜ばせてあげなければ。


「大丈夫ですよ。みんなテレビに夢中ですから、電話なら問題ありません。祐樹くんこそ大丈夫なんですか?」


そう、祐樹くんは家族と一緒じゃなくていいのだろうか。


「俺は毎年、年越しそば食べたら部屋で寝ちゃうから。部屋に行っても何も言われないよ。」


「それなら、私から電話します。寝てて出れなかったとか無しですからね。罰ゲームですよ?」


「罰ゲーム?」


「……ほ、ほっぺにちゅーしてもらいます。」


「えっ」


「とにかく、いいですね!」


なにが原因なのか、自爆してしまった。

恥ずかしさに耐えられなくなった私は、机に突っ伏すことしかできなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る