mixing 第3話

トコトコと歩き、日もすっかり落ち飲食店が並んでる中心部へ。

昼間は解らなかったが、夜になると意外に飲食店がある事に気付く。小さなスナックの看板が結構あちこちで明かりがついていた。

炉端焼きっぽい居酒屋の向かいに、友人がやってるという店があった。

[Pig pen] ピッグ ペンというお店。

入ってみると結構広く、中央にスペースがあって贅沢な空間の使い方をしてるお店。

居酒屋には、見えずパブの様なお店。

パン屋さんの店主とは、また雰囲気の違うちょっと無骨な感じ。

「お〜。いらっしゃい」

「人連れて来るなんて珍しい」マスター。


「いや、うちに来てくれるお客さんなんだけど。転勤で来て詳しくないって言うから、ここのお客にしてあげようかと」

パン屋さんの店主。


「何も無いけど、ゆっくりしてって」

と、忙しそうに下拵えをしているマスター。

「ここ、只の飲み屋に見えるけど彼、元々料理人だから何でも食べる物作ってくれるよ」パン屋さんの店主。

「ふざけんな。何でもは作らない。客来ないのに、色々作ってたらやってけない」

マスターの口調から、親しい関係がわかった。

パン屋さんの店主。

「同級生なんだよ、彼。ユウちゃん。ユウイチで、ユウちゃん」

「もう田舎に戻って来て結構経つから、色々この街の事詳しいし、情報通だし交友関係広いし」


「情報通って。噂話が好きなんだよ、この街の人は。ていうか、アキが友達いないだけだろ。店やってるくせに」マスター。


『アキ…… 』

「アキさんて言うんですか?名前」


「うん。秋本だからアキ」「宜しく」

パン屋さんの店主 (アキ)


「あっ、俺は…… 田辺 誠 (マコト) です。宜しくです」なぜか慌てふためきながらの自己紹介だった。

色々話を始めると2人とも自分より、ひと回りも上の年齢で少し驚きながらも意外にリラックスでき、普通にお話し出来ていた。


「 (パン屋) アキさんは、前から此処に居たわけじゃないんすか? 」ビールをグビグビ飲んだせいかズケズケと人の事を聞き始めた。


「まぁ〜ね」ぼそりとアキさん。


あれ。何かマズったかな。


すかさずマスター (ユウさん)

「あはは、まーねー。帰って来たのは割と最近だね。色々あってねーー 帰って来る時と帰って来た後も」


アキさんの苦笑いを見て、あまり触れない方がいいのかなと。少し酔いも醒めた気がした。


ていうか。お客さん来ないんだけど。


広い店内を見渡してたら、

「お客来ないでしょ、この店」

「でも、何だかんだやっていけてるんだよねーー 不思議」と、アキさん。


「アキが来る時だけ、たまたま来ないだけなんだよ」と、美味しそうな骨付きの地鶏の唐揚げを出してくれた。

熱々揚げたての唐揚げを、ほうばりながら

ふと思った。

この街は…… 美味しいものあるし、何か…… 楽しい感じがしそうな…… 予感。


第3章 終

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