mixing 第2話

数日後「after - eve 」のパンの美味しさに、すっかり虜になってしまった自分。

他のパン屋さんの様に沢山の種類がある訳でもなく、シンプルなパンばかりではあるけれど1度食べてしまったらまさにやみつき。

フワフワ、しっとりの食パン。カリっとして顎をガシガシ動かしつつ、止まらない美味しさのバケット。シンプルだからこそパン其の物の味が、わかる感じ。最近、こんな感じをあまり感じる事無くパンを食べてたな〜〜 と思う。1つ残念なのは、カレーパン好きの私にとってカレーパンがない事。

確かにカレーパンは、あまりあの店には合わない感じなので仕方ないか……

改めて思うと、パンだけでなく革製品も今頃になって気になってきた。

パンに夢中で素通りだったけど、のどかな田舎の街に革製品を売ってるのも、珍しいので余計に気になる。値段くらいチェックしとけば良かったかな? やっぱりいい値段するのかな? 手作りだし。

まぁ、今度見るだけ見てみようと思う。


次の日。

仕事が早く終わり、「after-eve」に足を向けた。仕事が早く終わったといえ、もう夕方。日も暮れてきた頃。今迄は休みの日に来てたので、パンを買う事が出来たけど。流石にこの時間では、もうパンは売り切れてるかな? 沢山焼いてる訳では無さそうだし、あの美味しさなので街の人もわかってるはず。お店の前に車がズラリと並んでる時も見かけた事あるし。

パンが売り切れていても革製品でもチェックでもしようと思い、いざ「after- eve」へ。

ドアの入り口に何かある。


[本日のパンは、売り切れました]


と、書かれたボードが置かれてた。

「あちゃ〜〜 」

まぁ やっぱりか…… 仕方ない。

せっかくなので顔だけ出して、革の製品みてこよ。

「今晩は〜〜 」

まだ2回しか来てないのに、常連気分で挨拶しながら入ってみた。

ん?

革製品があるので革の匂い、微かにパンの香り、それと…… コーヒー⁈ の匂い?


「いらっしゃい」と言った店主の手には銀色のケトル。誰もお客がいない中で、ゆっくりとペーパードリップで、コーヒーを落としていた。

「パン売り切れちゃったけど…… 」店主。


「あは。そうみたいですね、残念」

「せっかくなので革の製品見ていいすか?

見るだけですけど」


「どうぞ、大した物じゃないけどね。

あっ…… コーヒー飲みます? 」


まさかのコーヒーのお誘い。なんか嬉しくて即

「いーすか。飲みたいです」

つい、言ってしまったけど図々しかったかなと反省。

コーヒーを頂く。うは、いい香り。

「いい香りですね。コーヒーも詳しいのですか? 」


「いえ、たいして。好きなだけです。たまたま高い豆を貰ったので。高い豆は香りがいいですよね」店主。

仕事終わりに、高級豆のコーヒー。

…… しみます。

誰もいないせいか、少し色んな話をしつつ

ゆったりとした時間が過ぎた。

突然、店主が

「お酒は飲みます? 」


「飲みます。何でも」

その言葉に少し笑みを浮かべながら、

「まだ、この街詳しくないでしょ? 友達が飲み屋やってるんで軽く一杯いきません?

飲み屋とかは、なかなか1人だといきづらいでしょ」


うは〜〜 有難い。確かに田舎の店だからこそ、敷居が高いというか入りにくい所があったし。

「嬉しいです。…… えと、ここのお店何時に閉めるんでしたっけ? 」


「もう売るパン無いし。すぐ閉めますよ」


何故か、店主の顔が嬉しそうな感じ。


お酒好きなのかな?


第2章 終

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