第2話・廃墟への落し物
砂が風に舞きあげられ、一帯には使われていると呼べるような建築物が少なく、更にいえば建物らしいものもあまり無い。いつ倒壊しても何らおかしくないように見える廃屋・廃ビル、そんなモノしかないこの土地だが一応は、大規模学園都市シザリアスに面した元繁華街だった。今はその面影もなく、街の衰退と共に一種の悪人達が住みつき始めたのが一体どれほど昔の頃だったか、それを知っている人間は、もう生き残っていないだろう。
太陽を遮るものなど殆どないと言うのに、この土地に住んでいる者達が放つ独特の
誰かに対する大掛かりな敵襲か、はたまた天災かと一瞬街中がシンと無音に支配されたが、いくら待っても何かが動く気配などなく、次第に人々が赤子の周りを取り囲むように集まってきた、それぞれの武器を手にした地下の住人の姿も見える。そして遂に意を決した者が、人間ではないだろう赤子の胴体の辺りにそっと金属バットを
それから数年後─すくすくと育った鬼っ子のもとに一人の来訪者が現れた、ストラーナとはまた別の
「この装置を使うと、見た目を操作出来る。身体能力は変わらないけれど、お前が人間と同じように歳をとらない事で不利益になるかも知れないからな、嵌めておくと良い」
「だれですか?コレをくれるんですか?」
彼女の名前はアデライン・ブラッドロー、通称[黒魔女]だ、紫陽花からは[アデリー]という愛称で呼ばれている。彼女は何故わざわざこの
「それもお前にやろう、困った時、どうしても欲しいものがある時はソレに登録してあるヤツへ言えばいい─最後に、お前に名前をやろう。鬼っ子のままでは困るだろう」
「なまえ」
「そうだ、願いを込めた名はその者自身を現すからな、この先─何が起ころうとお前だけは守りたいものを手放すな─[リューヴォ]強き者」
その名は黒魔女の
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