第31話

「以外と広いのね……」


「まぁ、そのうち人も増えてくるけどな」


「最初は以外と明るいのね」


「そのうち暗くなる」


 俺は買ってきたポップコーンと飲み物を姫華に渡す。


「ん、ありがと」


 姫華は飲み物を受け取り、それを飲む。

 座席にあるホルダーに飲み物とポップコーンを置き、映画が始まるのを待つ。

 上映まではまだ十数分ある。


「これがポップコーン?」


「あぁそうだ、うまいぞ」


「まぁ、キャラメルの良い匂いはするけど……」


 姫華はポップコーンに手を伸ばし、口に運ぶ。

 

「ん……以外と美味しい」


「以外とってなんだよ……まぁ、上手いなら食っとけ」


 姫華はポップコーンを気に入ったようで、なんども手を伸ばしていた。

 あるあるだが、上映前にポップコーンが無くなってしまいそうだ。

 まぁ、俺は食べないから良いが……。


「ねぇ、いつ始まるの?」


「あと十分くらいだよ。少し待ってろ」


「なんか待ってばっかりね……」


「仕方ないだろ、そういうもんだ」


 スクリーンに流れる上映中の注意を見ながら、俺は姫華にそう言う。

 言われてみれば、確かに映画は待つことの連続かもしれない。

 

「今のうちトイレにでも行ってこい、上映中行きたくなると損だぞ」


「大丈夫よ! 大きなお世話!」


「はいはい」


 俺は注意してやったつもりなのだが、なんでこんなに怒るんだか……。

 少しして、辺りが暗くなり始めてきた。


「お、始まるぞ」


「結構暗くなるのね……」


 辺りをキョロキョロしながら言う姫華。

 本当に来た事がないんだな……。

 俺はそんな事を考えながら、スクリーンに注目する。

 映画の予告が数本分流れ、いよいよ本編が始まった。

 やはり人気映画だけあって、なかなか面白い。

 これは人気が出る訳だ……。

 約二時間という上映時間が終わり、再び辺りが明るくなる頃には、肩が凝ってしまっていた。


「あぁ~……どうだった?」


 俺は隣で見ていた姫華に感想を求める。


「結構おもしろかったわね、ポップコーンも美味しかったし」


 笑顔でそういう姫華に俺は一安心する。


「それは良かった。ポップコーンも全部食いやがったか」


「う、うるさいわね! 止まらなくなっちゃったのよ!」


「別にいいよ。ほらさっさと出るぞ」


 俺と姫華は映画館を後にし、外に出る。

 俺は体を伸ばし、次はどうしたものかと考える。

 時間的には昼食の時間だし、どこか店に入るのが妥当であろう。


「飯行くか?」


「ポップコーン食べて少しお腹いっぱいなんだけど……」


「じゃあ、軽く食べられるハンバーガーにするか」


「ハンバーガー? アメリカ人が良く食べてる?」


「日本人も結構良く食うぞ」


 昼にジャンクフードと言うのもあまり良くは無いのだろうが、たまには良いだろう。

 この様子だと姫華も食べた事はなさそうだし、あんまり腹が減ってないなら、ポテトでも食わせておけば大丈夫だろ。

 俺は姫華を連れてファーストフード店に連れて行く。


「あぁー、このお店ってハンバーガーショップだったんだ」


「まぁ、色んなところにあるからな、看板くらい見たことあるだろ?」


「車の中からね」


 俺と姫華は店の中に入り、レジに並ぶ。

 休日ということもあって、やはりここも混んでいる。


「並んでばっかりね」


「……確かに」


 休日にやることなんて、皆大体一緒なのかもしれない。

 俺はそんな事を考えながら、レジの上のメニュー表を見ながら、姫華に何を食べるのかを尋ねる。


「あんまりお腹減ってないのよね」


「そりゃ、あれだけポップコーン食えばな」


「う、うるさいわね!」


「はいはい、それで何にする?」


 結局、姫華はハンバーガー一個と飲み物、そして飲み物を注文した。

 俺はハンバーガーとセットを頼み、商品を受け取って席に座る。


「やっぱり、休みの日は混んでるな」


「人ってこんなに並ぶ生き物だったのね……」


「何疲れてるんだよ」


「疲れたか?」


「少しね……」


「なら、ここで少し休んで行こう。とりあえず食ってみろ」


 姫華が注文したのはスタンダードなハンバーガーだ。

 俺はテリヤキバーガーのポテトセットにした。

 俺が包みを開けて食べ始めると、姫華もそれを見てハンバーガーを食べ始める。


「ん……意外と美味しいのね……」


「以外ってなんだよ。美味くなかったらみんな並ばねーよ」


「まぁそうよね……少し味が濃いかしら」


「たまには良いだろ? それだけ細いんだから、少しは肉を付けろ」


「余計なお世話よ! アンタも細いでしょ!」


 数分で食べ終わり、俺たちは腹を膨らませる。

 

「ふー食った食った……」


「結構お腹に溜まるわね」


「まぁ、パンとハンバーグだがらな。次はどこか行きたいとこあるか?」


「そう言われてもねぇ……」


「まぁそうだよな。じゃあ俺に任せてくれ」


「どこ行くの?」


「まぁ、少しぶらぶらしないか?」


「ぶらぶらって、全く考え無しじゃない……」


「まぁ、そう言うなって」


 少し休んだのちに俺と姫華は店を後にした。

 別に計画が無い訳では無い、ただ姫華を買い物に連れていっても、買いたい物なんて無さそうだと思ったからだ。

 それなら、町を歩いて姫華が興味を示した場所に行くのが一番だと思ったからだ。

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能面少年と千変万化な少女 Joker @gnt0014

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