Inktober 2018

齊藤 紅人

1.Poisonous(毒々しい)

 毒々しいと言われて最初に思いつくのは自分の中ではヤドクガエル。

 ご存じない?

 酔狂な水族館とかだったら熱帯地方の水槽あたりに何匹か展示されていたりするのですが、これがまたなかなかに毒々しい。

 んー、何というか、アメリカのキャンディみたいな色とでも言うか。

 ストロベリーレッド、マスタードイエロー、コバルトブルー。そしていかにも毒々しい斑点やまだら模様。

 なんしか、こんなものが生きてていいの? みたいなデザイン。

 それでいてやじりにちょっぴり塗るだけで致死量となる凶悪な毒性。んー、かっこいい。ポイズンアローフロッグって英名もこれまたかっこいい。

 まあさすがに家で飼うのは危険すぎるので(飼ってもどうやら違法ではないみたい。大丈夫なの?)、また彼らを眺めに須磨水族館に行きたいと思う。


 ところで。

 毒と言えば、まだ作品に出来ていないお気に入りのプロットがありまして。

 短編です。

 駆け足で語ってみるなら以下のような感じ。


        ◆ ◆ ◆


 剣と魔法のファンタジー世界。

 主人公はデザイナーの男。

 誰も見たことがない鮮やかな色の布を織り上げ、前衛的な服をデザインし、民衆の支持を集めていた。

 現在、熱心に手がけているのが毒を使った染め物。

 数滴で死に至るという致死性の高い毒を使って新たな染め色を研究しているところだった。

 が、男は病に冒されていた。目の病。日に日に失われている視覚と色覚に男は焦燥するも誰にも打ち明けられずにいた。

 そうしてだまだまし仕事を続けるのだが、助手の少女にそれを見破られる(目の前にあるのは紅茶かコーヒーかと問われ、答えはただのお湯だったみたいなのをイメージ)。

 少女は言う。自分が貴方の目の替わりになる、と。

 どこまで出来るか分からないが精一杯努力するからと。

 デザイナーは少女の必死の説得に応じ、二人三脚で仕事を続けていくことを一旦は約束する。

 だが眠れぬ夜を明かし、翌朝。

 色彩を失った自分の道を選びあぐねる男の前に、キラキラと輝く毒の瓶が置かれている。

 男は毒の入った瓶を手に取る。

 色彩を失っても明度は分かる。

 男の目には朝日を浴びたその瓶が、自分を導くようにキラキラと輝いてみえるのだった。


        ◆ ◆ ◆


 というお話。

 最後まで書かず読者に想像させるラストシーン。典型的なバッドエンドで、誰に話しても受けないし、反応はすこぶる悪い。

 でも自分としては、古谷実の『ヒミズ』へのオマージュも含んでいる非常に気に入っているプロットで、いつかなんとか形にしたいと思っている。

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