Stairway to Heaven

和泉瑠璃

 九月十四日 午後十一時四十三分のことだった。

 前の手術が予定外の出血のために長引いて、まあ、そうでなくとも逃しがちな院内の食堂での食事に間に合わず、カップラーメンをすすっていると、看護師の岡崎さんが駆けこんできた。

「若先生! 急患です!」

 けだるい三分を待ち、最初の一口をまさにすすった瞬間だったので、岡崎さんにはそうとう滑稽な姿に見えただろう。けれども、彼女はかなり切羽詰まった表情をしていた。

「飲酒運転事故の被害者です。たったいま搬送されたばかりなのですが、その方が……」

 口の中のラーメンを飲みこみ、立ち上がったところで、岡崎さんの次の言葉は電撃がはしったように俺の全身を震わせた。

「お名前が、八神雷男さん、です」

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