第51話 急変(2)


 その知らせは突然だった。

 坊ちゃんのお父さん、天帝様がなくなったとのことだった。


 そのあとのことは正直あまり覚えていない。天様付きの采女ツァィニュと言うことで、葬儀の準備や関連各所との取り纏めを任された。

 それが目の回るような忙しさ。

 殆ど寝る暇もなかった。

 葬儀が終わって、一息ついた時には放心状態だった。

 坊ちゃん邸の居間のソファにくたりと座る。

 頭が回っていない。

 これ以上身体を一ミリも動かしたくなかった。


 そんなところに突然坊ちゃんが入ってきた。本当なら立ち上がって出迎えるべきなんでしょうけど。

 ごめんなさい。

 ムリです……。


「大丈夫か? いろいろ任せて悪かったな。お蔭でスムーズに葬儀が終わった。助かった」


 ……。

 人間、弱っているときに優しくされると弱い。

 あれは本当だわ。


「い、いえ。言われたことをやっただけなので。天さ、天くんこそ大丈夫ですか?」

「ああ、ありがとう。大丈夫だ」


 う……。

 ち、近い。

 いつもの自分ならさっさと逃げていたと思う。

 でもその時はもう身体が動かなくて……。


 え!?

 ん……。

 んんん~!


「ちょ、ちょっと! きゅ、急に……、なにを……」

「いや、弱ってるお前の姿が余りにも可愛くてな」


 そ、それでキスって理由になってないわ。

 お父さんが亡くなったばかりなのに。

 不謹慎だわっ!


「少し気が早いかもしれないが……。オヤジが死んで次の天帝は俺だ。ついてきて欲しい」

「はあ」


 これまでと一緒ってことよね?

 天様付きの采女だもんね。

 何も変わることはないわよね?

 坊ちゃんが、困ったように頭を掻きむしっている。

 ん? なに? 違うの?


「通じてないな。……ずっと傍にいて欲しいんだ」

「はあ」


 やっぱりこれまでと一緒ってことよね?

 坊ちゃんが、仏頂面になる。

 ん? なに? なんで怒るのよ~?

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