第4章 ハッテン

第50話 急変(1)


 おいし~!

 リェンさんの作る料理は見た目も味も本当に素敵。

 私がこのお屋敷で働き始めた時よりも格段に美味しくなっている気がする。

 そんな料理を頂けるダイニングでの私の席が最近変わった。


 これまでは先輩女官三人とダンディーなリンさんと一緒に食べていた。

 それが、ある朝、ダイニングに行くと、「今日からお前はこっちで食え」と坊ちゃんに言われた。


「いえ、私、今までの席で大丈夫です」

「……采女ツァィニュのお前と相談したいこともある。俺は昼間はオヤジの所に行くからお前と顔を会わせる機会は、朝と夜くらいだ。なるべく話し合える機会を作った方がいいだろう」


 そう言われちゃうとね……。

 なんか断りづらいじゃない。

 そんな経緯で席を変わったんだけど。

 いざ席が変わっても、坊ちゃんから話し掛けられることは殆どない。

 話をするのは、もっぱら私とバオくんなのよね。

 この席替え、何か意味があったのかしら?


 そんな毎日のある朝食の席でのこと。

 私は、その席替えの意義を最大限に活用することにした。


 どうしようかな。

 早くどうにかしたいな。

 そう思っていたことを思いきって坊ちゃんに相談してみたの。


「あの~、天様。前から言ってたことなんですけど、増員をしたいな~って思ってて。ジャージがかなり人気らしいので、大々的に販売して、そこで得たお金で人を雇おうかなと思ってるんですけど、駄目ですか?」

「……ああ、金を工面できるなら問題ない。任せる。それとだ。天様と呼ぶのはやめろ! 堅苦しい」

「え!? えっと……、じゃあ、なんて呼べば?」

「そんなことは自分で考えろ!」


 え~。

 急にそんなこと言われても……。


 天ちゃん。ちょっと馴れ馴れしいよね。

 天さん。これは堅苦しいって言われそう。

 天くん。う……、ん~、じゃあ、天くんでいっか。


 自分で考えろって言ったんだからね。

 文句言わないでよね!

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