第1話 エキドナ

「おっ、お前ら来てくれたか。今ちょうど大変なところなんだ。あのエキドナが暴れててよ。」

知り合いの警官であるラックさんが手招きをしている。

「大変なのは見れば分かりますよ。それで、エキドナはどこへ逃げたんです?」

「ここから東の方向だ。あの野郎、穴堀りしながら暴れてるから警察も近づけなくてよ。」

「サンキュー…後は任せて。」

「これ解決したら美味いテンプラの店奢ってくれよ!」

「おいおい勝手に約束してんじゃねぇ!」

全くジェイの奴…人にタダ飯奢らせてるんじゃないわよ…


ー東の街道ー


「いた!!」

エキドナ…本名は「ディギング・エキドナ」。ハリモグラの名の通り、穴堀りが得意な犯罪者だ。こいつとは何回も対峙しているから慣れたことに越したことはないが…

「よし、まずは俺にやらせてくれ。モグラの野郎を引き付ける。」

「頼んだよ、ジェイ。」

ジェイはチーム1のムードメーカーで尚且つ良く喋る。相手を手玉に取った戦法は彼ならではと言えよう。

「おいモグラ野郎!今日の調子はどうだ?」

「なんだテメェかよクソ忍者。」

「お前また逃げ出したんだってな?これで何回目だよ。」

「まぁざっと10回目とかそんなとこじゃねぇの?」

こっちとしてはその都度倒しているんだが…本当に懲りない奴…

「どうだ、これから俺達のプレゼントをたっぷりやってやるよ。」

さて…そろそろ私の出番か。

「最高の拳をお前にプレゼントさせてやるぜ!!」

バッ!!

「ジェネシ…」

「させねぇぜ!!」

ボコボコ……

「スマッシュ!!!」

ドゴォォォォン!!!

掘り起こしたコンクリートでスマッシュのダメージを和らげたか。こいつにしちゃ中々に粋な防御だ。

「あちゃー…こりゃ今回は一筋縄じゃ行かなそうだわ。」

「何言ってるの!速く止めるよ!」

「へいへい、じゃあいっちょハデにかますか!!」

カチャン…

ジェイは背中に背負った二本の刀を引き抜いて構えを取る。

「こういうのはコンボなんだよ!コンボが大事なんだよ!」

それ二回も言う必要あった?

ジャキィン!!

「うらぁ!!」

「危ねぇな、刃物ブン回すなよ。」

「犯罪者がどの口で言ってんだ!?」

コォォォ…

「見せてやるぜ…俺の最強の技を!」

ブゥンッ!!!

「ブライショット!!!」

バゴンッ!!

「クソッ…!押されて…ぐああ!!」

さすがはジェイのブライショット…コンクリートの壁もなんなく貫通する斬撃は相手に効いているようだ。

「こうなりゃ…逃げるが勝ちか…」

ボコボコボコ……

「やべぇ!モグラ野郎が逃げるぞ!」

「いや、あのまま逃げさせればいいよ。今追いかけると勘付かれて逆に捕まらない。」

「おいロザ、何か策は練ってるのかよ。」

「ここからは私に任せて。」

ギュンギュン…バッ!!

「チーターダッシュ!」

チーターの力を使ってエキドナの逃げた方向へと走る。奴はまだ気付いてないみたいだ。

「出てこいエキドナ!!エレファントストンプ!!」

ドガァァァン!!!

ゾウの力を入れた凄まじい足で地面を上空から思いきり踏み鳴らし、地面にいるエキドナを高く浮かせる…

「のわっ!?何が起きた!?」

「ラビットジャンプ…」

ギュウン…ドンッ!

高く浮いたエキドナ目掛けてウサギの力を使ったバネのような跳躍で一気にエキドナよりも上へと舞い上がる。

「ジェネシ……」

「やめろ…やめろォォォォ!!!」

「スマァァァァァシュ!!!!」

ズドォォォォォン!!!

モグラは空中では何も出来ない。エキドナはスマッシュを食らって泡を吹いている。

「そのまま大人しくお縄につきなさい!」




「いやー助かった。またお前達にエキドナを任せちゃってすまないな。」

「いいですよ、アイツのことは私達が良く分かっていますし。」

「そんでさぁ…事件解決のお礼はまだすか?」

「まぁ安いトコなら奢ってやる。」

「よっしゃ!!んじゃ速く飯行こうぜラック刑事!!」

やれやれ…決断が速いバカね。

「すみません!遅れてしまいました…あれ?もう事件は解決したんですか?」

息を切らして入ってきたのはチームメンバーのサキだ。この子は日本人で、現地でもロサンゼルスでもソロアイドル活動をしている女の子。私とジェイより一つ年下の後輩だ。

「事件ならもう終わったから心配しなくていいよ。」

「そうなんですか!でも先輩達の元に駆けつけられなくてごめんなさい…!」

「急な事件だったから仕方がないし、それに今回はさほど大きな事件ではなかったからね。」

「分かりました!次は先輩達と一緒に行けるように頑張ります!」

そう言うと彼女はニコッと笑顔を見せた。

続く。

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