第29話 嗜虐不遜の山本・一徹・ティーチシーフ

 ズドンッ! 重たすぎる物が、勢いに身を預け、床板を砕き深々と突き刺さった音。


「勝った!」


 そして勝ち誇った威勢の良い声が耳に入る。

 男の声は普通に聞こえるのに、どういうわけだか一徹には、その瞬間時間がゆっくり流れている気がした。


「この戦ぁっ!」


 いま、己が取りこぼしている時間の空白。ふと宙を見上げた先には……


「我らの勝利だぁぁぁぁ!!」


 高々と噴出した己の血しぶきが……


「……ゴメンなぁ? また、お前の力を使うことになっちまった……」


 目に入った。


「俺を癒せ! 属性ドライブ開放! 《銀の髪飾りリングキー・サイデェス》!」


 力ある言葉に呼応して、バァッ! と一徹のスーツジャケット、その胸ポケットから眩い光がはじけた。落ち着き、光量こそ落ちたが、やがて一徹を包み込みこんだソレは、柔らかさと温かさを醸し出していた。


「な! そんな!」


 埋まっていく。傷は埋まっていく。

 たったいま上段、それも死角から振り下ろされ、かわしきれなかったことで大量の鮮血すら噴き上げさせた大戦斧による傷が。

 肉は埋まり、血管も修復し、皮膚も閉じていた。

 今や……先の詠唱魔技による両腕の酷い火傷跡も、完全に消えていた。


 一撃で倒せなくてもよかったのだ、それだけ深手を受けたことで一徹の動きを封じ、さらに二撃三撃と手を休めず最終的に殺すことさえ出来れば。


「いま何か……したのか?」


「男が、《聖なる癒し手》とそれに準ずる者しか使えないはずの《治癒魔技術》だとぉ!? っ馬鹿なぁ!」


 そう考えていたからこそ、目の前で起きた出来事に、主犯格は声が裏返ってならなかった。

 そのショックの度合いなど一徹にはどうでもよかった。斬られた軌跡を指でなぞりながら、驚く男から視線を外した。


「その……髪飾りか……」


「ホウ? こりゃあまたまたゴイスーなイッケメンなこって」


 注目したのは、よく聞こえなかった何かを呟いた青年。

 仮面は既に外れていた。主犯格に捕まるまでは、かぶっていたはずだが。


「すんばらすぃ~恋人がいらっしゃいますね。貴方のために、ご令嬢は恥を偲んで私に謝罪した」


「貴殿に? それはどういう……」


「山本・一徹・ティーチシーフと申します。貴方をお守りするように嘆願されました。『王子殿下だからという以上に、大切なヒトなのだ』とね。そういうのに、私は弱い」


 左肩と腹に傷を負っているのか、両手それぞれで患部を押さえ、荒い息。苦しげな顔で片膝を床につけている様から、激しい戦いを繰り広げるさなかにアーバンクルスの仮面は飛んでしまったことが伺えた。


「教えて欲しい。その髪……」


「おしゃべりは後です殿下。《銀の髪飾りリングキー》、属性ドライブ開放。もういっちょ頼むわ」


 一応は自分で納得して受けた話。だから頼まれたことを全うしようとした一徹は、アーバンクルスに有無も言わせず髪飾り、一徹の言葉に反応して発せられた光を当てた。


「やはりこの感覚、間違いない。《治癒魔技術》」


 光を浴びるさなか、次第に辛そうな表情が溶けていくアーバンクルス。

 光がやんだ後に己の体、いたるところを見回し、傷が閉じ、出血が止まっているのを確認すると、惚けた表情で一徹に目を向け……


「さ……て? そいじゃあ……始めようかぁ?」


 ドクッ! と心臓は高鳴なり、ビクン! と背筋は改めさせられた。

 心臓が高鳴ったのとはちょっと違うか。心臓が強く握られた感覚。

 ゆえに満足に動くことの出来ない心臓が、何とか機能を保とうと、ドクンドクンと、必死に動いているように感じられた。


「貴様か」


「ん?」


「貴様だったのか!? 先の、あの魔族の女を両断しようとしたとき、私に凄まじい寒気をもたらしたのは!」


「こいつは重畳ちょうじょう。気付いてくれたのか」


 取り出した髪飾りをおもむろにもとの胸ポケットにしまった一徹。一つ溜息をついた。


 なんとも対照的だ。主犯格はあからさまに顔色を変えている。だが一徹は少しだけ嬉しげに口の両端を薄く引いていた。


「王子様を助ける助けないにしてもね、どちらにせよアンタにゃあ……ケジメェ付けてもらうつもりだった。うちのモンに手ぇ上げてくれたオトシマエだ」


「ぬかせ!」


 十分な踏み込み、ただでさえ怪力の男が存分に床板を踏みつけた事実。

 目を細めた一徹が認めるのは、秒も掛からず自身との距離を詰めきった主犯格。


 歯を食いしばる、血走った主犯格の目を捉えた一徹の表情は、好戦的にゆるんでいた。


「なんっ!」


 最後まで言が紡がれることは無い。初手、押し負けたのは主犯格。

 一徹に向かって両手で握り込まれた大戦斧は振りぬかれる……はずだった。

 腰をひねり、十分に出来た力のタメ。開放された力は、斬るにしても叩きつけるにしても絶大な効果があるはずだった。


 ……真後ろに弾き飛ばされた。


 横なぎにされた大戦斧。その取っ手と斧頭の間の柄を、前に蹴り込んだ一徹の足裏に押し返されたのだ。


「人の脚力は腕力の三倍。素材開放ソーサリー闘技で脚力は強化され、属性開放ドライブ闘技が素材の付与属性を発揮させる。俺の《脚装具カマイタチ》に組み込まれた魔獣素材ウェイブソーサリーの属性は風だ。高速化、機動力を司る。それならさすがに、あんたが幾ら怪力であっても腕力である以上負ける気はしないよ」


「ド、属性開放ドライブ闘技だと!? 貴様! 属性開放ドライブ闘技を使えるのか?」


 跳ね飛ばされ、背中から倒れこんだ主犯格の表情。

 絶対の自信があった力が返されたことにショックを受けていたようだった。その上で、悲鳴を上げた。


「ならば先ほどの《治癒魔技術》は! 貴様、なんておぞましいことを!」


「《聖姫エメロード》主催のパーティにカチこんだアンタがそれを言うかよ」


 すぐさま体勢を立て直し、猛然と突っ込んできた主犯格。大戦斧はまだ取りこぼしていない。

 上段から振り下ろされた一断。

 一歩脚を、主犯格へと踏み込んだ一徹は、それゆえ半身となったことでかわしきった。


 一徹は認めた。信じられないとばかりに瞳を剝いた主犯格を。

 理由はわかった。死の臭い迸る一撃に対して、一徹は前に出ることを選択したのだから。


「ガッ!」


 小さい悲鳴。しかし主犯格は床板に埋まった斧頭を引き抜き、無理やり下から、斜め上に跳ね上げるように一徹に振り切るのは止めなかった。

 ……かわしきった一徹が刺し込んだ、銀製の食用ナイフテーブルマナーセットを一本、上腕二等筋にやしながら。


「ッグゥ」


 フラァッと上半身をそらす要領で、外れた斧頭の軌跡を眺める一徹は、フワリと跳んで後ろへと体を移動し、着地した瞬間にはもう、フッと主犯格のすぐ目の前に距離を詰め、もう一方の腕へとさらに一本刺し込んだ。


「ちょこざいなぁ!」


 横薙ぎの一線、ギリギリの高さに飛び上がったことで避け、今度一徹がそれぞれ一本ずつソレを突き埋めたのは、興奮する主犯格の両肩。 


「おっのれぇ! ……ッガァ!」


 穂先を返し、今度は柄を棍として突き込まれたもの。冷静によく見た一徹の手のひらにて軌道を変更され……勢いに、前に体が流れた主犯格。

 今度はその二の腕に、一気に三本まとめて食用ナイフテーブルマナーセットは穿れた……だけじゃない。


 ここまでに数本、ところどころに深々と刺され、動きが鈍った主犯格。

 その隙を一徹は、見逃さなかった。


「大戦斧ね。いい趣味してるよアンタ。いい武器だ、危険な武器だ。だからさ……」


 どれほど持っていたのだろうというほどの束の食用ナイフテーブルマナーセットを、一まとめで握った一徹。それを立っている主犯格の丁度頭の上あたりに高くばら撒いた。


「ちょっくら手放してもらおうかぁ?」


 ジャラジャラと音を立てながら放物線を描いて高く上がり、そして松明、蝋燭の炎に当てられキラキラ明かりを反射させ、落ちて行く。


素材属性開放ソーサリードライブ《カマイタチ》ッ!」


 一徹は踏み込んだ。まずは主犯格の真後ろ、背中。


「グッ!」


 続いては真横、主犯格にとっては左手。


「ガッ!」


 当然……右手にも。


「ギ、ギ、ギイィヤァァァァァァァア!!」


 途切れ途切れだった悲鳴はやがて断続的、それも耳を塞ぎたくなるほどの声量で木霊する。


 当然だった。瞬動がなせる業か、主犯格の正面から左から右から背後から斜めを含めた全方位に至るまで、地面へと落ち行く食用ナイフテーブルマナーセットは、一本ずつ滞空中に拾い上げられ、そのまま反応が出来ぬ主犯格の肉体へと刃を埋めていかれたのだから。


 悲鳴に大気を振るわせる主犯格の大男。


 取り巻くは、光を跳ねさせる食用ナイフテーブルマナーセットと一徹の残像。

 コンマ数秒でいたる所に、数え切れないほど差し込まれたことで、全身から霧のように血華は噴出した。 


「あーしんど、もう二度とやらねぇ。半数近く取り落としたのも恥ずかしいし」


 その絶痛を、絶叫に還元して解き放つ主犯格を尻目に、ゼェハァと息を切らした一徹は、両膝に両手をおきうなだれていた。うなだれて、してやったりと口角を吊り上げた。

 痛みに耐え切れず、ガラァンと、主犯格が絨毯に大戦斧を取り落としたゆえだった。


「……っとに、この世界・・・・の隊長級ってのはタフだよ。ここまでやられてなお、ひざまずくこともなく堂々と二本の脚で床を踏みしめる」


 おもむろに、横たわった大戦斧を両手で担ぎ上げた一徹。主犯格に視線も合わせず背さえ向けて少しばかり離れたのは、明らかに相手に対する舐めがあった。


 いや、相手の嫌なことを徹底的に実践するいまの一徹にとっては、それをワザとやっている節があった。


 いたるところから血を流す、だが打ち込まれたナイフによって栓がなされ、まだ本当にまずいところまでは出血に至っていないからか、フゥッ! フゥッ! と主犯格は息は荒くさせ、殺意の篭った色で一徹を睨みつけた。


「へぇ? この大戦斧に組まれている素材の効果、重量増加。奇遇じゃないか。俺のも・・・なんだ」


「な……に?」


 だが、そこまでだった。


 まるで仲のいい友達が「お前のソレ貸して」、とでもいうように軽い口ぶりの一徹は、特段顔色も変えずに大戦斧を振り上げて見せた。


素材ソーサリー……開放!」


 一喝、そして一振……爆音。

 一徹が振り下ろした大戦斧の斧頭、それは主犯格が振り下ろすのと全く同じ深さまで床を穿っていた。

 それすなわち、主犯格と同じくらい、もしくはそれ以上に大戦斧を使いこなす証明。


「な、な……」


 信じがたい、ありえない出来事にまぶたを見開き、ワナワナと体が震え始めた主犯格。


「と、いうわけで武器はお互いなし。Fight like a man(男らしくこうじゃないか)!」


 英語で・・・呼びかけられて伝わるわけが無い。だが挑発するように吐き捨てるその様に激昂したゆえか、サボテン宜しくいたる所にナイフをはやした主犯格は、激昂のまま一徹の目の前に飛び込み、そしてスーツの襟元を力強く握り込むにいたった。


「捕まえたぞ貴様! このまま絞め殺してや……ダッダダッ! ガァッ!」


「……なぁんてアホなこと、真剣勝負で言うわけがないだろ?」


 捕えられたことでやっと見出した主犯格の余裕……も、一瞬のはかない夢。

 冷めた目で、口調で、一徹が呟いた途端、襟元を握った拳に痛みが走ったことが主犯格に悲鳴を挙げさせた。


「何が……起きているんだ?」


 二人の状況を傍から見ていたアーバンクルス、目を丸くするしかなかった。


 アーバンクルスは知っている。主犯格の怪力振りを。

 だからいまの光景はあまりに異質だった。一徹がスピードをもって圧倒する場面なら、まだ理解できた。


 違うのだ。

 転がされていた。いいように投げ飛ばされていた。


 不思議な光景だった。一徹は全く力を込めていないのに、彼が腕を引くと、引かれたその方向に向かって、主犯格は食らい着くように全力で飛び込んだ。


「やっぱり効くな。《指取り》」


 異常な光景だった。一徹はただ、主犯格の小指を握っているだけだというのに。


「これが兄弟フローギストに使えりゃいいんだけど。アイツも他の獣人族ヤツらも、小指エンコでだって人の一人は持ち上げるもんなぁ」


 一徹の発言は、あまりにもその状況に似つかわしくないような力が抜けたもの。


「……あ……」


 そのときだった。渇いた、小枝が折れたような、パヂィッ! という音が耳に入った。

 空虚空白、その場に降りた一瞬の……沈黙


「ゴメッ、折れちゃっ……」


「ッアアァァッァァァアアアァァァア!!」


 立って見下す一徹。跪き、変な方向へと折れ曲がった右手の小指を、もう一方の手で包み込み天井へと絶叫を上げる主犯格。  


 アーバンクルスは、違いすぎる二人の光景を目に焼きつけ、寒気が止まらなくなった。


 特に一徹に対して。いま軽い口調で謝ったさなかに浮かべた、ニヘラっとした表情のその裏に、何か途轍とてつもなくおぞましいものを感じた。


「アァッ! アァァァァァ!!」


 主犯格も一徹には、何か人間とは別の、恐ろしいものに見えているのだろう。

 恐怖の形相が顔に刻み込まれたまま、それでも引くことが出来ないのか、雄たけびをあげ、自身を奮い立たせながら一徹へと走った。


「大振りが過ぎる」


 小指折れていない腕を伸ばしてきた主犯格に対し、一徹は伸ばされた腕を、その側の、己の腕によって絡ませ、片足を軸に反転。向けた背が、主犯格の胸に触れた頃には、もう一方の腕を、先ほど捕らえた腕にさらに抱きこむようにして……


め……」


「イッ! ヒャァアアァァァ!!」


 背負い、投げて、極めた。


日本・・……柔道連盟流・・・・・《背負い投げ》」


 投げられた主犯格の背中が床に落ちきる直前、捉えた男の腕の、丁度肘を支点に、一気に吊り上げる。


 耳障りのよくない音。一徹が開放した主犯格の腕は、肘が決して曲がってはならない方向に折れていた。


「立て」


「……待て」


 フゥッ! フゥッ! と荒い吐息。

 強者としてこれまで生きてきたことで、培われた強面の主犯格には、似つかわしくない珠が目の淵に浮き出ていた。


「待ってくれ山本一徹! もう、ここまでやれば十分だ!」


「十分? 何を仰っているんですか殿下?」


 顔を真っ赤に、痛みに食いしばった歯の隙間からは涎を溢れさせた主犯格。

 痛々しい様相、恥に塗れていた。それがなんとも哀れにもアーバンクルスには映った。


「十分だと……」


 ここで声を張り上げたのはアーバンクルス。険しい顔を主犯格に見せながらすばやく剣を握りなおして……


「言っているっ!」


 終わらせてやろうとした。騎士の情けのつもりだった。


「そりゃ……困っちゃうなぁ」 


 空ぶった。理解が、追いつかない。

 空ぶったのは一徹が、アーバンクルスの動きを封じ込めたからではない。

 振るう先だったはずの、殺してやるはずだった主犯格を、たった一蹴りで数メートル蹴り飛ばしたことで的が失せたのだった。


お前・・は確かに私を助けてくれた! この男だってもう、まともに動くことは出来ないだろう! 彼女の懇願は成されたんだ。だから……戻ろう!」


「まだね、全然足りてない」


「もう十分だろう!?」


「いんや。もっと苦しんでもらう必要がある。うちのモンに手ぇ出すということがどういうことなのか、もう少しばかり刻み付けたい。なに、安心してください。他の襲撃者同様……殺しはしない。殿下は助かった。私もご令嬢への義理は果たした。早く恋人の下へと向かわれると良い。《私のシャリエール》と襲撃者の対応に当たっているでしょうから」


 一徹と、アーバンクルスの会話はまるでかみ合うことは無い。


 アーバンクルスにとっては、いまや狂いに狂った襲撃者や主犯格ではなく、仮面で顔を隠す黒衣の男、山本・一徹・ティーチシーフの方が恐ろしく映った。


 両者は無言、そして見つめあった。一徹の口は薄く横に広がっている。しかし仮面からのぞける瞳は笑っていなかった。


 そこから声を出すこともさせず、身動きも取らせず、いまは呼吸すらさせてくれないほどの圧を放つ一徹は……しかし次の瞬間姿が消えた。


「ウォォオォオォ! ウォォオアァアァ!!」


 完全に意識をアーバンクルスに集中していた一徹の死角を、主犯格がタックルをもって攻めたのだ。


「ハァァッァァッァアアァ! アァァッァァァァ!!」


 一徹を捉えた主犯格の雄たけびは増すばかり。 


 一徹を担ぎ上げたまま、暴走しているかのように廊下を駆ける主犯格は、そのまま、窓にいたり、突き破り、そうして、一徹を連れて行ったまま外へと姿を消した。


 ……なんとも、後味の悪い命の救われようだった。


 二人の姿が見えなくなったのち、アーバンクルスはおもむろに周囲に視線を巡らせ、顔をくもらせた。


 散らばるは、銀の食用ナイフテーブルマナーセットの数々。

 床に深く斧頭の埋まった大戦斧。

 ここで撒き散らされた血の跡が、一徹が駆けつけてからこれまでの10分に満たない出来事を、アーバンクルスの脳裏に沸き立たせた。


 漠然とした、されど大きな黒い不安を胸に抱えたアーバンクルスは、二人が消えた、突き破られた窓へと視線を送った。


 不安。それは一徹への心配ではない。まさかの……主犯格への心配だった。


 体中にサボテンの針が如く数え切れぬほどの、食用ナイフテーブルマナーセットが生えていた。

 それでいて一方の腕は手の小指が折られ、もう一方の腕は、肘から凄惨にひしゃげさせられた。


 間違いなく、もう武器はを持つことはできないだろう。


 ……アーバンクルスは見逃さなかった。


 タックルを決められ、会場の外に連れて行かれるさなか、一徹が「コイツっ! ヤルっ!」とばかりに楽しげに口元を崩していたことを。


 ゆえに心配だったのだ。何を思って主犯格が突っ込んだのは定かではないが、《黒衣の仮面男》、山本・一徹・ティーチシーフを相手に、武器を持たないハンデは、絶望的過ぎたから。


 ……そうしてしばらく、アーバンクルスは動き出す。

 彼が心の底から愛する女のもとへと。


 ルーリィ・セラス・トリスクトのもとへと。

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