第43話

「田村コーチの息子さん、元気そうで安心しました。」

「ああ、この間までは落ち込んでましたけどね。

合宿の話をしたら、見に来てみるって。来てみたら結構乗り気で助かりましたよ。」

「怪我、よくないんですか?」

「いえ、足はもう大丈夫ですよ。まあただ、メンタルがねぇ。

まだ大学生だから急ぐ選択をさせる気はないが、

あいつは俺に似て指導向きなんじゃないかってねぇ。」

「コーチの鬼指導、伝授ですか。俺でもきついのになぁ。」

「何言ってるんですか、もうそんなのしてませんよ。何ハラって訴えられますからね。君の時とは違いますよ。」

「俺は結構応えましたよ。現役のとき、コーチいっつも眉間に皺よってて。」

「君がいうこと聞かなかったからでしょう。今なら苦労、わかるでしょう。」

「はい、子供相手でも、大人相手でも、苦労しますね。」


そろそろ戻ってくるかな、と

ボールを2人で磨き終えて門にむかう。


「県内でも西部地区の学校は、上位に食い込んでこない。

それを県内全体で平均値をあげたいって思い素晴らしいです。

俺にできることがあればなんでもやります。」

「ええ、だけどね八木先生。中学は学区で決まるが高校は選択だ。必然とばらつく。強いところに、強い者は集まる。

平均をあげる、なんてこと厳しいかもしれん。

色んな思いがある。だけど、全国に行くのは必然だ。俺たちが目指すのはその先だ。今年はいいメンバーが集まってる。いいチームを、つくろうな。」

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