第40話

”なぜバスケットボールをするのか。

なぜ強くなりたいのか。”


そもそも、バスケがしたくてはじめたわけじゃない。


「え、サッカー部希望!?」

「あ、はい・・・」

「そっかぁ、部室間違えたんだな。」

「ええ〜、君、運動神経良さそうだから楽しみだったのに〜」


体験入部の時、部室を間違えてバスケ部の部室に入ってしまった。

その頃はまだ3年生がいて、2年はほぼおらず、

これから入部しようという1年がいた。


「本当に、サッカー行っちゃうの?」

「え?」

「いやだってさ〜、サッカーって夏きついよ?」

「え?」

「それに、ほら、フィールドはバスケの方が狭いし。」

「いやでも、僕は背丈が・・・」

「君のその、なんか滲み出るまじめそ〜な性格なら絶対バスケだって。

もうなんていうか、コートの裏の王様って感じ。」

「それは漫画読み過ぎ。」

「先輩たちおもいしれ〜、俺でもわかりますよ。藤真でしょ!」

「コート立ってないじゃん!」


パシっと、いきなりボールを投げられた。


「反射神経、いいね。」

「ね、体験だけでも!」


ずっとサッカーをしてきた僕にとっては

サッカー以外のスポーツは

興味がなかった。


「いや、でもスパイクもあるし・・・」

「ちょっとだけ、ね。」


この日はなぜか

試してみたくなった。

みんなとても、楽しそうだったから。


体験が終わって、休憩していたら3年のキャプテンに話しかけられた。

「どうだった?」

「あ、楽しかったです。」

「よかった〜、君が入れば部活存続できそうだな。」

「え、いや僕は。」

「2年がさ、いないから1年にかかってんだよ。」

「僕はいるって言ってないですよ。」

「津島くんだっけ、なんでサッカーがいいの?」

「ずっとサッカーをしてきたからです。それに道具もあるし。」

「それなら大丈夫。俺、バスケ辞めててさ、入部の手伝いだけしてるんだ。だから道具とか全部あげるよ。な、頼むよ。」

「僕は・・・」

「俺、君にチームを引っ張って欲しいんだ。」

「なんで、ですか。」

「君は覚えてないかもしれないけど・・・小学校がさ、同じで君凄く実は俺らの間では噂されてたんだ。」

「う、うわさですか・・・」

「そう、ミスしない上手いやつがいるって。友達がさ、サッカー部で君のことめっちゃ褒めてたの。どんな奴なんだろ〜って。」

「ミス、しますよ。しまくりです。今日だってパスとれなかったし。」

「初日だろ?!気にしすぎ!な。」

「どうしたら、楽しい部活にできますか。」

「え?」

「サッカーしてる時って、フィールドが広くてみんなのこと全然わからなくて。

チーム戦なのに、1人でやってる感覚があったんです。

でも今日はちがった。

なんか楽しかった。

バスケって楽しいですか?」

「そっか・・・1人か・・・そうだな・・・」

「はい・・・」

「楽しくプレーするにはだな、強くなったらい。」

「え?」

「仲良くするのもいいけど、強くなったらなった分だけ、楽しくなる、と俺は思う。」


”なぜバスケットボールをするのか。

なぜ強くなりたいのか。”


僕にはまだ全然わからない。


「2年おらんやん。」

でも関西弁の人が来てから、

笑う機会が増えた気がする。

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