第31話

だだっ広い田んぼの中をひたすら走る。

ペーサーとしてサブコーチが前を走ってくれている。

なんだか、1人で走るより楽だった。

そりゃそうか。


「梅ちゃんは、大阪出身なんすか?」

「梅ちゃんって、まあええけど。そや、今年転校してん。

向こうでは結構有名やったんやで〜俺。」

「梅先輩は、関西のユースだったんです。うちの部、2年が少なかったんで、こっちに来てからすぐレギュラーなって、合宿もすぐ決まりましたね。」

「少ないってほんまに少ないんやで?ほぼ幽霊やったしなぁ、苦労したなぁ、津島ちゃん。」


「なんで、そんなユース選抜される人が、弱小部に・・・」

「ちょっと小牧!失礼な言い方だよ!」

「ええねん、ほんまの事やしな。親の事情やし、しゃーないやん。

でもな、2年いないだけで、津島のチームは強いで。」

「へえ、やるじゃん。楽しみだなぁ、ハルヒ。」

「俺たちだって1年っすよ!なあ!」


話に夢中になって2列を忘れて走っていたら

前から「おい!はぐれるなよ!」と声をかけられた。


「ペーサー、ありがとうございます。」

「いいんだよ、しかし君速いな。ジョーくんだっけ。」

「はい、徳中です。」

「八木先生がさ、おもしろい奴がいるって喜んでたんだ。頑張れよ。」


嬉しかった。


「ずりー!コーチに媚び売るなよ!」

「そんなんじゃないって。」

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