ハイスペック園児 まさや君 其の9

あきらさん

第1話

「ねぇ、より子先生! 聞いて聞いて! みどりんね、ワンちゃん飼ったの!」

「あら、そうなの!? 良かったわね! どんなワンちゃんなの?」

「フレンチブルドッグ! 真っ黒のフレンチブルドッグなの!」


 みどりちゃんは、私とまさや君とゆうき君に、初めて犬を飼ったという事を楽しそうに話してくれていた。


「凄いちっちゃくて、こーんななの! ちょー可愛いの! お姉ちゃんが犬飼いたいって言ってたから、みどりもずーと一緒にお願いしてたんだけど、やっとママが飼ってくれたんだよ!」

「い~な~みどりちゃん。ボクも犬飼いたいな~」

「ゆうき君家は動物飼ってないの?」

「ウチはママが面倒見れないから、飼っちゃダメって言ってる。それに死んだ時悲しいから嫌なんだって」

「確かにね。先生も子供の頃に犬飼ってたけど、死んじゃった時悲しかったわ。だからその気持ち凄く良く分かる。まさや君家は何か動物飼ってるの?」

「ボクの家も柴犬飼ってます。ボクの教育の為にも動物を飼う事は大事だって言って、パパはボクが生まれてからすぐに、ケンタウロスを飼ってくれました」

「ま……まさや君。ケンタウロスってワンちゃんの名前よね?」

「そうです」

「な……何か人の言葉を喋りそうで、賢そうな良い名前ね」

「ありがとうございます。それにしても、ゆうき君家のママは弱い人ですね」

「どういう事、まさや君?」

「死を受け入れられないなんて弱い人間の証ですよ。生き物っていうのは生まれた以上、死ぬ事は当然なんだ。死を受け入れられないなら、確かに動物なんて飼うべきじゃないと思いますね」

「え~……みどりもマイクロファイバーが死んじゃったら、ちょー悲しいー!」

「み……みどりちゃん家のフレンチブルドッグはマイクロファイバーって言うの?」

「うん。まだ子供だから、10年以上は生きるって言ってるけど、もしマイクロファイバーが死んじゃったらみどり、生きていけないかも!」

「みどりちゃんもそんな事言ってちゃダメだよ。マイクロファイバーだけじゃなくて、ボクもゆうき君もみどりちゃんもいつ死ぬか分からないんだよ。だからみんな一生懸命に生きるんだ。それにボク達は、今だっていろいろな命を奪って生きているんだよ」

「どういう事、まさや君?」

「みどりちゃんだってお肉を食べるだろ?」

「うん。食べる」

「鶏肉だって豚肉だって生き物を殺して、その肉を頂いているんだよ。スーパーでは精製されたお肉が売られているから実感がないだろうけど、ちゃんと命を頂いてボク達は生かされてるって事は、人として知っとかなくちゃダメだよ」


 ま……まさや君……

 べ……勉強になります……


「より子先生……ボク……」

「そうね。まさや君の言う通りね。生き物の命を頂いてるっていうのは、本当に大事な事だと思う」

「……より子先生……あの~……」

「だからお弁当は残さず食べましょうね。まさや君!」


 不満気な表情で、それとこれとは話は別という顔をしながら、今日もお弁当の片隅に残っているピーマンと、ずっとにらめっこをしているまさや君でした……

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ハイスペック園児 まさや君 其の9 あきらさん @akiraojichan

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