その後の おとなりダーリン。

第1話

 はーい。新聞配達員でーす。

一世を風靡し、世界を席捲し、宇宙全土まで その名を轟かせた、

イケメン元天才作曲家=石神いしがみ亮太郎りょうたろうとはオレのコト。



 ……

 ……



 まぁ、ちょっと話しは盛りましたけど、

作曲の仕事を干されて新聞配達員 始めた元作曲家ナメんじゃねーよ。

世間サマが毎朝 朝刊読めんのは、朝っぱらから安全運転でバイクすっ飛ばしてるオレみてぇな配達員がいるからであってなぁ、

ホント、毎月 新聞とってくれてアリガトウゴザイマス!!


(ネム……)


 毎朝 町内1周、新聞のポスティング。

お陰様でボロアパを追ん出されずにおりまして、ゲロマブなユーヤ君のお隣りサンでいられるワケで、そのゲロマブなユーヤ君がオレみたいなオッサンをカレシにしてくれてから早3ヶ月が経ちましたよ。


(まさか、無職になった途端アイドル顔なカレシが出来っとは……

ホント、父サン母サンごめんなさい。

期待されてねぇのは知ってっけど、孫の顔は見せられねぇよ。

つか、カンドーされんのが目に見えるよ)


 言うても、



『いってらっしゃい! 朝ゴハン作って待ってますね!』



(今は帰りたい場所がある。ソレで充分でしょ)


 商店街の1店舗1店舗に朝刊を投下。最後の店はCDショップだ。

オレはバイクを止め、店頭に貼られてる大型ポスターを見つめる。


(この子、オレが曲提供してたアイドル……)



『新人アイドルの子もね、今回の作曲家の方が歌いやすそぉって言うんだよ』



(近頃 売れて来たな、)


 この子はカワイイ。一先ずナンパしてアドレスゲットしときたい程に。

売り込んだ分、元は取れる子だって最初から分かってた。そんな真正のアイドル。

今頃になって評価され出したってコトは、新しい曲がウケてるってのもあんだろね。


「ハァ……」


 溜息。

こうも あからさまな世間の反応を見ちゃうとさ、やっぱ凹むよねぇ。

オレの曲、受け入れられて無かったんだなぁ、って。


(アレでも売れ線 狙ったつもり何だけど、まぁ、しゃぁない……)


 こぉゆぅコトはさ、『つもり』じゃダメ何だっつの。

決定的にそうじゃなきゃダメ何だっつの。

自分の評価は世間が決める。

作曲家だけじゃない。誰もが そぉゆぅ土俵で戦いながら生きてる。



「帰んべ」



 配達所まで ちんたら走って、バイク返して、陽が登る頃にボロアパに到着。

時刻は7時。この時間には、ユーヤ君が朝メシ準備を終えていてくれる。

ホント、良く出来た奥さんタイプなユーヤ君。

あのカワイイ顔を早く見たい。でも、何つぅか、足が重い。

オレはボーっとボロアパ前に立ち尽くす。


(メシ食ったら、内職。一通り やっつけたら創作活動……)



『曲は、書くよ。ユーヤ君の為に』



(有言実行。

ンで、音源完成したら、手当たり次第に売り込みかけるって算段。

でも、ソレが進まない。もう3ヶ月も経つのに、3分の1しか進んでない)


 新聞配達やら内職程度でって思われるか知れんけど、

人生、音楽しかして来なかったオレには慣れないコトばっかで、気持ちと体がついてかない。

頭の中で曲の構想を練ってても、気づくと金稼ぐコトに集中しちまうんだよ。

いっそフルタイムで働ける場所 見っけて、寧ろ住み込みとかさせてくれそな会社があれば願ってもねぇ、とか。


 そんなコトをマヌケヅラで考えてると、ユーヤ君の部屋のドアが開く。


「あ! 今 帰りでしたか!

遅いなぁと思ったから、迎えに行こうかと思ってたんですよ!」


 オレのカレシ。ゲロマブなユーヤ君・20才

将来有望の、実家は金持ちボンボン。


(イイ社会人が大学生に世話かけとるとか、カッコワリぃの何のって、)

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