第21話 作曲家、這いつくばる。

ピンポーン。



……

……



ピンポーン。



……

……



「だ、れ、だ……?」


 ゴボゴボ~っって、まるで溺れてるみたいなオレの耳。

インターホンが鳴ってるみてぇだけど、どちらサンでしょ?

新聞屋サンかな? うちのインターホン押すの何てソレっくらいだわ。


(つか、オレ、どれくらい寝た……?)


 相変わらず頭が痛い。つか、さっきより数倍 体が重いっつの。



ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。



「あぁ……しつけぇ、な……」


 這い蹲ってでも出て来いってか、チクショウめ。

しょうがねぇ、お望み通り這い蹲ってお出迎えしてやろぉじゃねぇかぁ。

ってコトで、オレは腹這いになって壁をよじ登って立ち上がってドア開ける。


「どちらぁ……?」


 って、開けたドアの先には、いつ見てもゲロマブなユーヤ君と、――はい?



「浅野、サン?」



 ユーヤ君なら兎も角、何で浅野女史まで いらっしゃるんだぁ?

オレが目をパチクリさせていると、ユーヤ君の眉間には徐々に徐々に深いシワ。


「ぃ、石神サン、俺の事……見えてます?」

「ぇ? ……ぁ、ああ、勿論、」


 勿論さ。勿論 見えてるさ。

つか、どったのよ、浅野サン、何でココいんのよ? って方が先なんスけど。


「ちょ、ちょと、由也クンと駅前でバッタリ会って、

……ホラ! 時間遅いし、送って上げようかと思って!

だったらついでに、石神サンに ご挨拶でもしとこぉかな? と思ってね!」

「ぁぁ、そぉ……スかぁ、」


 年上とは言え、女子に送って貰うとは、男としての風上にも置けんクソガキだな。

けしからーん。まぁ、カワイイから しょぉがないけども。

オレが通りすがりなら高い確率で襲っちゃいそぉですし。


 でもさ、取り敢えずさ、要件が済んだならドアを閉めたいんだけど。

重力に逆らって瞼 開けてんのも、今のオレには結構しんどいんですけど。


 そんなパッとしねぇオレの様子に、浅野サンは眉を顰める。


「ねぇ、石神サン、もしかして具合が悪いんじゃないの?」

「へ? ……ぁぁ……そぉかも……ね、」

「え!? ぃ、石神サン、大丈夫ですか!?」

「ぜーんぜん。平気、平気、」

「駄目よぉ! 私、看病するから、ホラ、部屋に戻って戻って!」

「ぃ、いや! だったら俺が看病します!」

「なに言ってんのっ、こうゆう事は女に任せてよ!」

「なに言ってんですかっ、こうゆう事は隣人に任せるべきです!」


 あ~~あ~~この2人、人んちの玄関先で何やってんのぉ?

ワチャワチャすんなってぇ、

あのねぇ、こんなボロアパの激セマ玄関に小競り合いしながら突っ込んだら、ドアが大破するっつの、



(って……)



 ダメだ……立ってられ、ね……



 落。




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