悪夢  スマホ・枕・人形

 トントン


 誰かが私の頭を叩いてくる。


 「なんだよもぉ…」

 私は眠い目をこすりながらも枕から頭を持ち上げ、辺りを見回した。


 「なんだ、クマ吉か。おはよ」

 そこにいたのは人の形をしたクマ吉だった。

 如何どうやら今日の予定に合わせて、私を起こしてくれたらしい。


 「って、そんなわけあるか!」

 クマ吉はこんなカッコいい人間の形はしていない。

 もっとモフモフとして、キュートなクマのぬいぐるみなのだ。


 それに第一、クマ吉が一人でに動いて、私を起こすわけがなかった。


 「あー。夢だ。寝よ、寝よ」

 私は再び布団をかぶった。


=======


 ピロリロリ~ン♪


 今度はスマホから流れて来たメールの着信音で目を覚ます。


 「なんだよもぉ…」

 私は眠い目をこすりながらも枕から頭を持ち上げ、スマホを手に取る。


 「眩しっ…」

 スマホの画面を点けると、その光で目がくらんだ。

 未だにチカチカする目を細め、メールの内容を読む。


 『今日補習サボリ?』

 友人からのメールだった。


 私はしまった!と慌てて支度を済ませる。

 この補習を逃せば単位が危ういのだ。

 ご飯なんぞ食べている余裕はない!


 「あ!行ってきますクマ吉!」

 家を出る寸前、いつも通りぬいぐるみのクマ吉に声を掛け、家を飛び出た。


 まだ間に合うはずだ!次の電車に乗ればまだ!


==========


「まだ、まだ間に合う…」


 ベッドの中でそんな寝言を呟く彼女。

 その横ではスマホから流れて来たメールの着信音が虚しく鳴り響いていた。


「えへぇ~。クマ吉ぃ」


 未だに目覚める気配のない彼女。

 そんな彼女にクマ吉は溜息を吐いて、美少年へと変身する。


 そう!クマ吉の正体は彼女を魔法少女にすべく、精霊界からやってきた妖精だったのだ!


 彼女の悪夢はまだまだ終わらない。


======================================


「なんで大学生の私が魔法少女なんてやらなきゃいけない訳?!」

「それはちょっとした大人の需要…じゃなかった。事情さ!ほら!そんな事より怪人が来るよ!」


「あぁ~!もう!これは悪夢よ!さっさと倒して目を覚ます!かかってきなさい!怪人ども!へぇ~ん、しん!」


===============

※おっさん。の小話


 はい、ギャグですね。


 彼女が魔法少女になったのは夢なのか…。

 夢でも現実でも悪夢には変わりありませんけどね…。

 

 御目通し、ありがとうございました。

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