第6話

「大人げないなぁ、マグは。まぁでも、改めてデュオは気心の知れたパートナーじゃないと駄目だって分かったよ」

 いつも毒舌なレイにしては珍しい台詞だ。

「なぁ、明日からはパス決めてチーム作ろうよ。俺、やっぱりレイじゃないとダメだわ」

 俺も、釣られて台詞を言ってしまった。レイが爆笑している。まぁいいや。結局のところ、考えている事は同じだ。

 その後もレイは事ある毎に思い出し笑いをしていた。意外と笑い上戸なのだ。

 俺は何だか恥ずかしくなってきて、奇声を上げて敵に突っ込んでいった。


 ユーナの一件があってから、俺はそれまで以上に真剣にゲームに取り組むようになった。レイの足を引っ張るのが嫌だったのだ。

「マグ、最近テンパること少なくなってきたね」

 そう、俺は敵に遭遇すると焦ってミスすることが未だにあった。

「一拍置いて相手の動きを見るように意識してるんだよ。偉いだろ」

「感覚派のマグにしては凄い進歩だね。偉い偉い」

 あまり褒められている気がしないのは何故だろう。

「レイは完全に理数系だよな。敵の動きも計算して撃ってるんだろ?」

「そうだね、数学は得意だよ。マグはどちらかといえば文系か」

「これでも現国だけは学年トップクラスの成績だからな」

 今はそうでもないが、昔は周りから本の虫と言われる程の読書家だったのだ。


「現国だけね。そういえば、全編英語詞の曲は好きじゃないもんな」

 図星だった。一応、訳詞を見ながら聴きはするのだが、やはり日本語の方が好みだった。

「でも、僕はマグの歌詞の解釈とか聞いてると凄いと思うよ。曲の感想も、詩的っていうのかな。意外とロマンチストだよね」

 意外と、は余計だ。

「レイとは正反対だな。でも好きな曲のテイストは似てるんだから、根底は同じなんだよ、きっと」

「それはそうかも。なんだかんだ言っても、お互いなんとなく通じるところはあるもんな」


 それからも俺達は、ゲームを通じて声だけでコミュニケーションを取り合った。話題といえばゲームと音楽、アニメくらいのもので、不思議とプライベートなことは知らないままだったし、趣味の話をしているだけでいつも時間が過ぎていった。

 ただ一点だけ、俺はレイに関して気になっていることがあった。ゲームのプレイ時間が異常に長いのだ。

 俺達はゲームIDでフレンド登録しているが、これには相手がどれくらいの時間何のゲームをプレイしていたのか分かる機能がある。

 レイのIDは、マトモに学校に通っていたら有り得ない時間数が表示されていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る