第2話 転移先

目が覚めると目の前には豪華な服を纏った背の低い太った男が立っていた。


 「ふむ、一体そなたらのどちらが勇者なのだ?」

 

太った男がそう問いかけると横から叫び声の様な声で騒ぎ立てる男が俺に掴みかかってきた。


 「お前は違うよな!な!そうだろう!」 

 

圧倒された俺は、首を縦に振ってしまった。

 

「これでわかっただろう!俺が勇者なんだ!こいつは呼ばれた俺とは違って、間違えた来ちまっただけだろ!」

 

何を言ってるか理解出来ないが馬鹿にされてるって事は理解できる。

騒ぎ立てる男に対して太った男が呆れたように強い口調で言う。

 

「どう見たって貴様が威圧してるようにしか見えんわ。 とりあえず名前くらい聞いたらどうなんだ。彼には我々の言葉がわからないんであろう?」

 

しかし騒ぎ立てる男は一向に黙ろうとしない。

見かねた太った男が指を鳴らして掲げた腕を振り下ろすといきなり騒ぎ立てていた男が地面に突っ伏して静かになった。

太った男はやれやれといった様子でこちらに向き直った。


 「私の話す言葉に反応はしてるんだがな…。どうしたものか…。」

 

太った男困ったように言う。

 

「あの…どちら様ですか?」 

   

 俺の問いかけに太った男は驚いたように言う。

 

「おぉ。こちらの言葉が分かるのか?それなら話が早い……私はこの国、新聖典王国ダンデスベルの第24代国王のクルノール・ダンデスベルである。そなたらをこの世界に召喚した者だ。」

 

先ほどの男に対してのような強い口調ではなく優しい口調で問いかけてくる。

 

「あ…あの、ここって日本じゃないんですか…?」

 

俺がそう言うと国王は首を傾げながら言ってくる。

 

「確かニホンとはそなたらが住んでいた島の名前だと記憶しているが…そうだなここはそなたの知っているニホンではない。まだ名も無き星の大陸の上にある国じゃからな。」

 

 

その後いくつかの質問をしてわかったことがある……どうやら俺は異世界に来てしまったらしい。


 「それで、あの…さっきから言ってる勇者ってどう言うことなんですか?」

 

俺の問いかけにさっきまで静かだった男がかなり苦しそうに立ち上がりながら言ってくる。


 「目の前に出てるステータスバーをさっさと押せよ!!」

 

そう言われ視界の端っこに浮き出ている棒のようなものに触れる。するとその棒が広がり1枚に石の板のようなものになって地面に落ちた。俺がそれを拾うと何も書かれてなかった石が俺の手が触れているところから光の線が出来ていき何やら文字が記されていく。


うん…読めない。

 

読めないのでそのまま国王に手渡した。それを見た国王の眉間にシワがよった。


「そなたは一体何者なのだ…?」

 

なんかすごい驚いている国王に聞いてみた。


 「なんて書いてるんですか?」

 

俺の問いかけに国王が石を俺に手渡しながら聞かない方が言いとか言ってはぐらかそうする。やはり気になるので国王の隣に立っていた護衛のような人に渡そうするが自分では読めないと言われ返された。その時、不意に後ろからあの騒ぎ立てていた男が俺の石を取り上げ読み始めた…と思った瞬間いきなりの大爆笑。

 

「ハハハ、何なんだこのステータスはオールGなんてそこら辺の農民とかよりも弱いじゃねーか。しかもジョブが空白、スキルも持ってない。ただの雑魚じゃないか。こんな奴が勇者なわけねえ。なぁ、国王様よー。こんな奴ダンジョンにでも捨てて来ちまえよ。アハハハハ」

 

とりあえずなんかすごいむかつくので1発がら空きの腹に俺の渾身の右ストレートを打ち込んでみた…が男は一切動じず男が軽く俺の手を払っただけで俺は簡単に吹き飛ばされた。

 

「雑魚が何、たて突いてんだ!お前みたいな雑魚が勇者様に触れていいと思ってんのか!あ!」

 

そう言いながら男は俺を蹴飛ばした。壁際まで蹴飛ばされた俺は肋骨が何本か折れているようで腹の中が焼けた様熱さを感じる。

なおも蹴ろうと近ずいてくる男を国王が止めた。


 「そのへんにしておけ。貴様が勇者と分かったのならもういいじゃろう。さっき通した部屋に戻るがいい。おい、衛兵、連れていけ!」

 

男は3人がかりで羽交い締めにされ連れていかれた。

 

「すまんな。今、治療出来る者を呼んだ。もう少し我慢してくれ。」


そう言われた俺はそのまま意識を失った。          

 

          

  

  

          

  

 

 

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