第7話 日本好きのアメリカ人たち

 僕のまわりには日本好きのアメリカ人が多い。もしかすると、僕が日本人だからたまたまそうなっているだけなのかもしれないが、彼らは本当に日本の文化をリスペクトしてくれているし愛してくれている。「ああ、日本へ行きたい」というのが彼らの口癖だ。


 なかでも日本のアニメやマンガが好きだ、という人が特に多い。かく言う僕もアニメ、マンガ共に大好きなので、この手の話は大いに盛り上がる。今期のアニメシリーズは一通りチェックしてるよ、なんてフリークな人もいたりする。


 今回はそんな日本好きのアメリカ人を二人紹介しよう。


 一人目はジェイ。髪型はベリーショートで耳にはいくつものピアスをつけている、ちょっとパンキッシュな感じの女性だ。彼女の車にはゴジ〇とエヴァンゲリ〇ンに出てくる特務機関、ネルフのステッカーが貼ってある。特にゴジ〇が大好きでDVDは全て持っているという。


「ねえミト、あなたシ〇・ゴジラは見た?」


「もちろん見たよ。そうか、あの映画の監督はエヴァンゲリ〇ンの監督とおんなじだったね」


「そうなのよ、本当に最高。私はもう3回は見たわ」


 興奮気味に語るジェイ。


「ジェイ、あの映画で破壊される日本の街があるだろう。実はあれって僕の実家の近所なんだ。自転車で10分くらい行ったところにある場所が実際に撮影で使われてた。映画で防衛線が張られてた川なんて、子供の頃よく遊びに行ってた場所だよ」


「嘘でしょっ!? ああ……なんてうらやましい。私たちの街にもゴジ〇が来てくれればいいのに」


 なんて物騒なことを言う。


 そんなジェイの最近のお気に入りは歌手でもありタレントでもあるG〇CKT

だ。超一流芸能人と呼ばれる彼にどっぷりはまっているらしい。なにがきっかけでファンになったのか今度聞いてみようと思う。


 続いて二人目。


 彼女の名はクリス。僕の部下だ。


 クリスは日本のゲームとアニメが大好き。日本産の有名どころのRPGはほとんど全てプレイしている。彼女のデスクにはいくつものフィギュアが並んでいるのだが、ク〇リンやベジー〇といった、日本のものもしっかり混じっている。クリスは日本に短期留学していたこともあり、カタコトの日本語を喋る。


 この間こんなことがあった。

 

「ミトサン、シツモン、アリマス」


「どうしたの?」


「アノ、グルテンフリーは、ニホンゴデナントイイマスカ?」


 僕は笑った。


「グルテンフリーはグルテンフリーだよ。そのままで通じる」


「……ソウデスカ、ニホンゴ、ムズカシイデスネ」


 しょんぼりした様子のクリス。


 どうしてそんなことを尋ねるのか聞いてみた。どうやら今度友人が日本へ旅行を計画しているようで、彼女のために調べてあげようとしていたらしい。


 クリスはジブリの大ファンだ。先日休暇を取って日本に一時帰国していた僕は、秋葉原へ立ち寄って、ホウキに乗った魔女の女の子と黒猫のフィギュアのセットを買った。アメリカに戻って彼女にプレゼントしてみた。


「うわあ、可愛い! キ〇とジ〇じゃないですか!」


 目を輝かせて大喜びしてくれる。こうして新たに2つのフィギュアが彼女のコレクションに加わることになったのだ。


 そして彼女のデスクにはもう一つ、驚くべきものが置いてある。


 京都のお寺をモチーフとした、手のひらサイズの枯山水庭園のミニチュアだ。そのミニチュアには、実際に細かい砂粒が敷き詰められており、ご丁寧に砂紋をつけるためのホウキまで付いているのだ。こんなもの一体どこで買ったんだろう?


「イライラした時は枯山水の庭に砂紋を描いて心を落ち着けるんです」


 などと言う。


 爪楊枝のようなサイズのホウキをつまんで、せっせと砂紋を描くクリスの姿を何度か見かけたことがある。そんな時は、僕は決してクリスに近寄らないように気をつけている。

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