act.25 ゼクローザスvs漆黒&シュバルツリッター

「あんたの相手は俺だ。火器どっちゃりの姉さん」

 リオネの眼前に着陸したのは漆黒。その真っ黒な機体は黒騎士よりは二回り小さい。その近代戦仕様といったロボットは名乗りを上げた。

「俺はプリンセス・フーダニット陣営の代理、進藤武蔵だ。俺と戦え」

「無粋な男ね。ぶっ飛ばしてあげるわ。私はビンイン・ジ・エンペラー陣営代理、リオネ・ガルシアよ。そこの黒いの。穴だらけにしてやるわ」


「デュエル承認されました。プリンセス・フーダニット陣営の代理、進藤武蔵様とビンイン・ジ・エンペラー陣営の代理、リオネ・ガルシア様のデュエルを開始します。5……4……3……2……1……開始です」


「須王龍野。喧嘩を買うのは構わんが、その操縦士を傷つけるなよ。俺は彼女達を救出しに来ている。進藤武蔵もだ」

「あいよ。分かったぜ」

「承知した」

「ゼクローザスの眼を奪え。そうすればモニターがブラックアウトする。胸にある操縦席の扉を開くはずだ。そこへ突入してベルを奪え」

「簡単に言うなって」

「困難だがやるしかあるまい」


 龍野の斬撃を二本の実剣で受け止めるビアンカ。それを合図に戦闘が始まる。

 リオネの乗るゼクローザスは両足が輝き始め若干宙に浮くと、猛烈な速度で後退を始めた。武蔵のマシンガンが火を噴くもその後退速度を見誤ってか照準はズレていた。リオネの放った120㎜ロケット弾が着弾するも武蔵は空中に飛び交わしていた。


「ねえ少尉殿。あの人たち知ってるんですか?」

「須王龍野は知っている。前回異世界へ赴いた時に顔見知りとなった。前は2m弱のパワードスーツを身に着けて戦っていたのだが、今回はかなり大きいな。デザインはほぼ同じだと思う」

「ふーん。じゃあ進藤武蔵の方は?」

「初めて聞く名だが、龍野と組んでいるから相応の者であろう。双方プリンセス・フーダニット陣営だと名乗っていただろう。それはララ様と同じで味方だという事だ」

「なるほどね。お、リオネ姉さんホバー走行してるじゃないの。あんな高等技術使えたんだ」

「短期決戦で砲撃戦をするなら賢明な選択だな」

「あー惜しい。APFSDS装弾筒付翼安定徹甲弾が掠った」

「どっちの味方してるんだ」

「勿論、リオネ姉さん」

「まったく」

「まあ、あの武蔵ってやつがやられたら俺がリオネ姉さんを静めてみせますよ」

「ふっ」


 龍野とビアンカの剣撃戦も白熱してきた。ビアンカの自在な打ち込みを捌ききれなかったのか龍野が後退する。そこへビアンカが右肩の機関砲で射撃するも巨大な盾で阻まれる。龍野の大剣が放つビームを実剣でいなし距離を詰めて剣撃を加えるビアンカだった。


「ビアンカ姉さんもやりますね。さすがラメル国防隊、一味違うね」

「良い腕だな。龍野の魔力量を見誤らなければ良いのだが」

「あ、少尉殿はビアンカ姉さんごひいきですか?」

「心情的には同郷の戦士を応援するだろう」

「まあ、そうですね」


 両足を浮かせ自在にホバー走行をするリオネに苦戦したのか、武蔵は空中からの射撃で対応している。武蔵は両脚についたコンテナから誘導弾を16発発射しコンテナを投棄した。計算づくとでもいうのだろうか、リオネの回避する方向を固定する射撃だった。空中から一気に距離を詰め斬撃を加えようとする武蔵に対してリオネは120㎜砲を投棄して光剣を抜く。

 一瞬の差で武蔵の乗る漆黒の右腕が切り落とされた。

「ふん! ハーゲンにだって負けないわよ」

「まだまだ」

 盾を投棄した武蔵はさらに距離を詰めてハンドガンを抜きゼクローザスの顔面に数発撃ち込む。ゼクローザスは仰向けに倒れてしまった。

「しまった。何も見えない」

 咄嗟に操縦席の扉を開くリオネだったが、そこへすかさず武蔵が飛び込んでいく。リオネの胸にぶら下がっていたベルを掴んで引きちぎった。

「ベルは貰ったぜ」

「返せ。このやろう」

 武蔵に掴みかかろうとするリオネであったがそれを制したのは黒猫の光剣だった。

「姉さんこれまでですよ」

「くそ」

 武蔵がベルを破壊しアナウンスが流れる。

「只今、ビンイン・ジ・エンペラー陣営の代理、リオネ・ガルシア様のベルが破壊された事を確認しました。繰り返します。ビンイン・ジ・エンペラー陣営の代理、リオネ・ガルシア様のベルが破壊された事を確認しました。デュエルの勝者はプリンセス・フーダニット陣営の代理、進藤武蔵様です。デュエルの勝者は進藤武蔵様です」


 一方、龍野とビアンカの対戦も激戦となっていた。ビアンカは実剣を二本とも折られていたが、その切っ先の両方が龍野の大盾に突き刺さっていた。

「霊力を込めた剣の威力は聞いていたが、これほどとは……。鋼鉄人形侮りがたしだぜ」

「障壁だか何だか知らないけどね。あたしの霊気は何でも貫くんだよ」

 背中に背負っていた大剣を構え、龍野に突っ込んでいく。龍野はそれを正面から大盾で受け止めた。龍野の大盾は大剣に貫かれたが、それは左手から既に離れていた。シュバルツリッターの左手がゼクローザスの顔面を掴む。そして顔面を掴んだままゼクローザスを持ち上げた。

「やめろ。何も見えない」

「あんたの剣技は大したものだ。見習いたいくらいだったぜ。しかし、この戦いは俺が勝つ」

 シュバルツリッターの左手の指がゼクローザスの頭部に食い込んでいく。ゼクローザスの頭部から火花が散りその目の輝きが失われた。

「くそ。ここまでか」

 操縦席の扉を開いたビアンカの前には既に剣を構えた龍野がいた。

「ベルを貰うぜ」

「私の負けだ。好きにしろ」

 喉元に剣を突きつけられたビアンカは胸のペンダントを引きちぎり龍野に渡す。

 ビアンカからベルを受け取った龍野はそれを握りつぶす。


「只今、ビンイン・ジ・エンペラー陣営の代理、ウーサル・ビアンカ様のベルが破壊された事を確認しました。繰り返します。ビンイン・ジ・エンペラー陣営の代理、ウーサル・ビアンカ様のベルが破壊された事を確認しました。デュエルの勝者はプリンセス・フーダニット陣営の代理、須王龍野様です。デュエルの勝者は須王龍野様です」


「黒猫、どうした」

「いやね。こっちが突っ込んでいないんだけど、向こうの陣地が混乱してるみたいなんですよ。さっき紫色の光球が飛んでいくのが見えて、今、黄金の光球がそれを追っかけていくのが見えました」

「どうしたんだろうな。それなら今が突撃のチャンスだが」

「勿論、撤退ですよね」

「ああ」

「残った鋼鉄人形はどうしますか」

「機を見て奪い返す。今は人質の救出が優先だ」

「了解」

「ハーゲン少尉。あんたらが良ければだが、俺達の拠点に来ないか。補給と修理ができるぜ。鋼鉄人形も預かってやれるはずだ」

「ほう。拠点があるのか。一時預かってもらえるだけでも助かるな」

「ならば話は早い。座標を送るぜ」

「受け取った。俺達は一旦本隊と合流した後そちらへ向かう」

「じゃあな。武蔵いくぜ」

「了解」


 シュバルツリッターと漆黒が浮き上がり南へと飛翔していく。

 地面の中から帝国の特殊艦ケイオンが浮上してきた。四機の鋼鉄人形と四人の操縦士ドールマスターを収容しケイオンは南へ向かった。


※リオネとビアンカは既に有原様のエピソードで敗北済みなのですが、こちらのストーリーの都合上改めて対戦し敗北させています。

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