第12話 バードウォッチングに行こう!

 結局、その日はみんなでしっぽや羽根を動かす練習をしたり、ティティアンノートについて色々と調べたり、デボリューション(変身解除)してお昼ご飯を食べたり、お互いのペット自慢や観察記録を付けたりなんかして過ごした。


 そうしながらティティアンノートの事を調べるうちに、色々と分かった事がある。


 まずはすでに分かっているように、動物以外のモノを書いても変身できない。ペガサスやドラゴンといった、架空の動物を描いてもダメだった。


 人間にない部位を持つ動物に変身したときは、その部位を使いこなせるようになるまでは練習が必要になる。


 嗅覚や聴覚などが人間よりも優れている動物に変身した時は、その感覚が鋭くなる。だけど比較する手段がないので、元の動物と同等かまでは解らない。


 一度描いた動物へは、そのページを開いて合言葉を唱えれば何度でも変身できる。しかし、ティティアンノートに動物を描いた本人のみが、その動物に変身できる。


 例えば、わたしが楓ちゃんの描いたキャラメルや、優衣お姉ちゃんの描いたちぃたんのページを開いても変身できない。同じ動物に変身したければ自分で同じ動物を描く必要がある。


 動物を描いたときに、浮かび上がってきた言葉をがまんして言わずにおけば、その場で必ずしも変身しなくてもいい。


 などなど。


 そうしてわたしたちは、部活の飼育小屋で飼っている動物たちを色々とスケッチしては、わたしの部屋に集まり変身パーティーを開いて楽しんだり。


 わたしも少しずつ、部屋の中くらいなら物にぶつからずに飛べるようになり、翼と腕を別々に動かせるようになってきた。


そして、




「わたしたちも鳥になってみたい!」




 そうした欲求が出てくるのも当然でした。楽しいことはみんなで分け合わなきゃね!


 そうして私たちは次の祝日、学校から歩いて10分ほどの「山下公園」にバードウォッチングにやって来ました。(優衣お姉ちゃんは用事があるらしく来られなかった)


 山下公園は海に面した公園で、氷川丸、水の女神像の噴水、赤い靴の女の子の像、沈床式花壇といったシンボルが並ぶ、横浜の観光名所のひとつだ。1周1kmと距離が計りやすいので、ジョギングをしている人もたくさんいる。


 そしてスマホで調べた所、運が良ければ10種類以上の鳥が見られるちょっとした探鳥スポットでもあるみたい。




 「あれがユリカモメ、あっちがウミネコ。見分け方は……」




 一学年上の彩先輩がみんなにレクチャーしてくれる。


 スズメ、ドバト、ハシブトカラスといったメジャーな鳥はもちろん、スズガモ、トンビ、ムクドリ、ツグミ、メジロ、シジュウカラといった鳥たちが観察できた。


 ティティアンノートにスケッチしている人以外のメンバーは、双眼鏡で鳥を観察したり、デジカメで撮影をしたりして楽しんだ。もっとも中学生なので高価な一眼レフなどではなく、コンパクトデジカメやスマホカメラで出来る範囲であるけれど。


 わたしたち以外にも、高価そうなカメラや三脚を持ってきて、鳥の撮影をしている人がたくさんいたりした。日本野鳥の会が定期的にガイドツアーを開いているのだそうだ。


 ノートの事を抜きにしても、生物部としてなかなか意義のある時間が過ごせたと思う。定期的に訪れれば部活動として学校に提出日する記録にもなると、彩先輩も言ってくれた。


 そして、楓ちゃんはモノトーンがクールなシジュウカラ、チャチャちゃんは海にプカプカ浮かんでいるスズガモ、彩先輩は独特の緑色が美しいメジロ、パフィンちゃんは氷川丸を陸地に係留している鎖に止まっていたユリカモメをスケッチした。


 野鳥なので基本的にじっとしてないので、みんな双眼鏡を覗き、ノートに目を移しの交互の動作でスケッチするのは大変だった。特にメジロはこの公園では珍しいらしく、彩先輩は何としてでも描いてやると公園の端から端まで駆けずり回っていた。うーん生物部根性を見た。




 「みんなスケッチ完成、おめでとー!」




 「「「「「おめでとー!」」」」」




 そう叫んだ頃には、公園はすっかり夕焼けに染まっていた。夕日に反射する水面と、ロマンティックに映える氷川丸やみなとみらいのビル群が美しい。


 目的を達成し、夕日を浴び、心地よい潮風を浴びる五人は、なんだかとても充足した気持ちに包まれていたのだった。


※※※※※※※※※※


主人公周りの設定ですー。


飛鳥川 鈴(あすかわ りん) 本作の主人公。フォッサ女学院中等部生物部に所属する中学1年生。不思議な本「ティティアンノート」を発見したことから、動物少女に変身できるようになる。

絵が下手なので、ティティアンノートにスケッチを描くのは一苦労。ペットはフクロウのスピックスコノハズク「スピピ」


下連雀 彩(しもれんじゃく あや) 中学2年生、生物部。しっかり者の優しい先輩キャラ。ペットは三毛猫の「マーブル」


燕昇司 楓(えんしょうじ かえで) 中学1年生、生物部。家はネットカフェチェーンを経営している。

昔のマンガなどに詳しい。ペットはウサギのネザーランドドワーフ「キャラメル」


馮 佳佳(フォン チャチャ) 中学1年生、生物部。中国系の女の子。 家は横浜中華街の料理店、「壱弐参菜館」。

料理が得意。お金が好き。ペットはヨツユビハリネズミの「小太郎」


パフィン・アルエット 中学1年生、生物部。外国から来た生徒。飛び級で進学しているため現在10歳。

日本在住5年。好奇心旺盛でツッコミ大好き。ペットはパピヨン犬の「パピ」


飛鳥川 優衣(あすかわ ゆい) 鈴の姉。フォッサ女学院高等部の高校2年生。ちょっと天然の入った性格。

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