第3話

「ちぇっ、つまんないの。」

のぶくんはテレビをすとつぶやきました。それからまどのそばへくとカーテンをけてそと様子ようすながめました。

「たいふう、しゅごいね。」

サエちゃんもとなりそとながめめます。にわがザワザワとれて、おおきなおとてていました。そらあつくもにおおわれてひるでも薄暗うすぐらいかんじです。

「あ!」

サエちゃんがゆびさすほうにどこかからんできたスーパーのポリぶくろ空中くうちゅうおどっていました。まるでだれかが何度なんどふくろげてあそんでいるみたいな。サエちゃんはそうおもったのですが、言葉ことば出来できませんでした。

「おにわあそぶわけにはいかないね。なにしてあそぶ?」

のぶくんはちょっとだけおにいちゃんかぜかしてサエちゃんにたずねました。

「お人形にんぎょうさん!」

サエちゃんがいました。

「う〜ん、じゃあやろうか。」

のぶくんはすこし不満ふまんだったのですが、ここはおにいちゃんとしてこたえたつもりです。

「やろう、やろう。」

サエちゃんは大喜おおよろこびで子供部屋こどもべやへかけていきました。

 サエちゃんのお人形遊にんぎょうあそびというのは、ママにってもらうキャラメルのおまけのミニチュアの人形にんぎょう自動車じどうしゃ飛行機ひこうきなど、とにかくちいさくて可愛かわいいものをあつめていて、それをならべて勝手かってにストーリーをつくっていくあそびです。

「ここはね、動物どうぶつのおともだち。」

サエちゃんはちいさなぬいぐるみや木製もくせいうま置物おきもの、それとパパにもらっやったちいさな木彫きぼりのくまさんなどを輪投わなげのなかならべていきました。

「こっちは、おうちでしゅ。」

べつなかには冷蔵庫れいぞうこのミニチュアや叔母おばさんにもらったちいさな人形にんぎょう食器しょっきのセットをならべていきます。

にいやもならべて。」

そうわれてのぶくんもおまけのミニオモチャをならはじめました。

「じゃあ、ここは自動車じどうしゃのガレージ。」

ミニチュアカーを5だいならべます。となりにはキャラメルおまけのロボットと戦車せんしゃならべて。すこはなれたところにはロケットと飛行機ひこうきならべました。

 しばらくすると、子供部屋こどもべやゆかにはちいさなオモチャのくるま動物どうぶつやロボットや椅子いすやテレビが何十個なんじゅっこならんだのでした。

「じゃあ、今日きょう花火大会はなびたいかいだから、みんなでお弁当べんとうってきましょうね。」

サエちゃんがそううとお弁当べんとうつくりがはじまりました。

「はい、お弁当箱べんとうばこ。」

のぶくんがちいさなタッパのミニチュアをわたすと、サエちゃんはニコニコわらってります。

 サエちゃんの人形にんぎょうあそびの主人公しゅじんこうはママにもらったちいさなこけしです。もともとママが携帯けいたいストラップに使つかっていたのですが、金具かなぐちたのを、もらったものでした。

 サエちゃんはこのこけし人形にんぎょうになりきって、というよりこのこけし人形にんぎょうがサエちゃんになりきって、花火はなび出掛でかける準備じゅんびをしているのでした。

花火大会はなびたいかい花火大会はなびたいかい。」

サエちゃんのあたまなかではもうおおきなまる花火はなびがドドーンとがっていました。

「よし、戦争せんそうだ!」

突然とつぜんのぶくんがさけぶと、戦車せんしゃ花火大会はなびたいかいのお弁当べんとう蹴散けちらしました。

「ミサイル発射はっしゃだ。」

のぶくんはロケットを動物どうぶつたちのあたまうえみました。

「だめ! せんそうだめ、みんなで花火はなびるの。」

サエちゃんは必死ひっし動物どうぶつたちをまもります。でも、もうサエちゃんについてけなくなっていたのぶくんはミニチュアカーをすべらせると容赦ようしゃなくこけし人形にんぎょうにぶつけました。

交通事故こうつうじこだあ。」

悲鳴ひめいげると、サエちゃんはしてしまいました。

にいやのバカ!」

のぶくんはちいさなオモチャたちをがさがさっとかきぜると、

「もうやめだ。」

そうって部屋へやってしまいました。子供部屋こどもべやではサエちゃんがわんわんいています。

「もう、やってられないよ。」

のぶくんはソファに腰掛こしかけると天井てんじょうてひとりでそういました。のぶくんは小学校しょうがっこうの1年生ねんせいです。もう7さいなんです。随分ずいぶんびて、ボールをったりキャッチボールをしたりするのがきになっていました。

 サエちゃんとの人形遊にんぎょうあそびは去年きょねんまではきだったんですが、いまはあまりきじゃありませんでした。

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