第12話 『どろろ』手塚治虫

 今回は小説ではありません。漫画です。鉄腕アトムやジャングル大帝でおなじみの、手塚治虫さん原作の漫画『どろろ』の感想を書いていきたいと思います。


 この本を手にしたのは、今年の1月から6月にかけて放送していた、リメイク版アニメの『どろろ』を視聴したのがきっかけでした。このアニメは原作をリスペクトしつつも大きく変えている箇所もあるとのことで、是非原作も読みたいと思い、本屋さんで一気に購入してきました。


 さて、この『どろろ』。どのような話かざっくり言いますと、主人公が妖怪に取られた自分の身体を取り戻すお話です。(舞台は戦国時代の日本)

 主人公の名前は百鬼丸。取られた体の数はなんと48ヶ所。(なので手足も耳も目も鼻もその他いろんなところがない)なんでそんなにも取られたのかというと、これには彼の父親・醍醐景光が大きく関わってくるのです。

 

 この醍醐景光、自身の野望のためにとんでもないことをしてしまいます。それは妖怪との取引き。取引きした妖怪の数は48体。自分の望みを叶えてもらう対価として、生まれてくる息子、つまり百鬼丸の体を妖怪たちに与えてしまったのです。で、百鬼丸が生まれます。もう見るも無残な姿で。産んだ母親は我が子を慈しみますが、父の景光は妖怪が約束を守ったと喜び、百鬼丸をタライに乗せて川に流してしまいます。要は捨ててしまったんですよね。


 体のあちこちを欠き、親に捨てられた百鬼丸。その後、彼は育ての親となる寿海という医者によって、義手や義足を与えられ、14歳で自分の体を取りもどす旅に出ます。自分の体を奪った妖怪を倒すと、その妖怪が奪っていた体の部位を取り戻せるんです。倒すしかないですね。

 

 そして百鬼丸は、旅の途中で「どろろ」という名の孤児と出会います。タイトルにもなっている「どろろ」はこの子の名前です。最初はどろろを邪険にしていた百鬼丸でしたが、だんだんいいコンビになっていきます。そして、二人の妖怪退治の旅が始まります。


ところでこの百鬼丸、手も足もないのにどうやって戦うのか......。

その方法はズバリ、義手に仕込んだ刀です。右腕も左腕も、肘関節から外すことが可能で、その中には日本刀が仕込まれているんです。腕の刀以外にも、作り物の体の中にはいろんなギミックが仕込まれています。ちょっとサイボーグみたいですね笑この腕に仕込んだ刀で戦うのがめちゃめちゃかっこ良くてハマりました。(ちなみに百鬼丸、こやつとんでもないやつで、目も耳もないのに普通に歩けるし話せます。話すときはテレパシー使ってるみたいです。すごい)


 腕に仕込んだ刀で、妖怪たちを次々と倒し、奪われた体を取り戻していく百鬼丸。腕が戻れば「俺の腕だ」と喜び、目が戻れば一緒に旅をしているどろろを見て、「お前案外かわいいな」なんて言ってみたり、そうやって素直に喜ぶ百鬼丸が、年相応にはしゃぐ子供のようで微笑ましい。さあ次は一体どこを取り戻すのだろう。彼が初めて目にするもの、耳にするもの、触れるものは何なのだろうと、わくわくしながら読み進めていくうちに、どんどんどろろと百鬼丸の絆も深まってくるのもまた良いのです。


 どろろは最初、百鬼丸の腕の刀が高く売れそうだから、隙を見て盗んでやろうという魂胆で彼についていくんですよね。でも、だんだんそうじゃなくなってくる。百鬼丸と離れがたくなってくるんです。でも素直じゃないので「おいらはあにきの(百鬼丸)の刀が欲しいだけだい」とかなんとか理由をつけて、結局一緒に旅をする。百鬼丸だって、色々辛いことがあってどろろと別れたいとか言い出すこともありましたが、なんだかんだ言って、きっとどろろのことを旅の相棒だと思っているのでしょう。百鬼丸が体を取り戻す過程も見ものですが、それ以上にこの二人の関係性が、微笑ましくて大好きです。


 そんな彼らの旅の行く末は……。結末がすごく気になりますが、この話、なんと未完。一応終わってはいますが、打ち切り感が否めない。しかもその終わり方がめちゃくちゃ切ない。どっちかが死ぬとかじゃないけれど、すごく悲しい終わり方でした。なので、余計に心に残りました。



 でもそれはあくまで原作の話。『どろろ』には、たくさんのリメイク作品があります。実写映画、ゲーム、リメイクアニメ、リメイク漫画。それぞれ結末が少しずつ違っていて、原作を読んで悲しくなったらそれらを見ることにしてます。漫画の方は単行本が一巻出たところなんで、どういう終わり方を迎えるのかはまだわかりませんが。


 6月に終わったリメイクアニメの方は、まだ救いのある終わり方だったかなと思います。このエッセイは読書日記ということになっていますが、番外編ということでリメイク版アニメの感想も近々書いてみてるのもいいかなと思っています。

 



 

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