禁固50年

 今、俺は6畳ぐらいの土壁の部屋に閉じ込められている。1面は格子状になっていて外を見られるけど、手がなんとか出せるぐらいの隙間しかない。しかも、この土壁、俺のありとあらゆる攻撃を受け付けない。実は、体の大きさを変える能力もあるのだが、体に合わせて、隙間は小さくなり出られない。


 で、なんで俺がここにいるか。さっきの、聖なんとか団に負けた?

 ブブー。なんとあの連中、俺に勝てないと分かると神に祈って助力を求めやがった。


 降臨した神は俺の悪あがきを歯牙にもかけず、慌てて飛んで逃げ出したもの、逃げられたと喜ぶ間もなく、巨大な山が降ってきて俺を抑えつけた。で、気が付けばこの6畳間に閉じ込められたわけだ。


 しかも、ついさっきまで、神に散々説教された。

「シューニャ。あなたは馬鹿なんですか。人が大人しく待ってなさいと言ったのにこれだけの騒ぎを起こして」

「いや、でもあれは不可抗力です」


 神はため息をつき、

「こんな短い間に、通貨を偽造する、偽造通貨を使う、いたいな少女の心に傷を負わせる、さらに30人近い人間を殺す。あなたは生まれながらの犯罪者なのかもしれませんね」

「いやいや、ちょっと待てよ。なんの説明も無しに放り出したのはお前だろ」


「さらにその責任を他人に転嫁する。とんでもない男ですね」

「だいたいさ、俺は最強なんじゃないのか?お前にあっさり負けたけど」

「ほんっとに馬鹿ですね。私が与えた能力ですよ。私より強くなるわけがないじゃないですか。うーん。これは交代が必要かもしれませんね」


「交代ってなんだよ」

「もちろん、あなたを処分して、新しい者を転生させるのです」

「え?それは大変なんじゃないかなあ」

「確かにそうですね。仕方ありません。ここで頭を冷やして反省してください」

 ふう、危ない、危ない。


「あなたに邪魔されたお陰で計画に支障が生じました。当初より長く待ってもらいますよ」

「ここで?」

「もちろんです。野放しにして、また邪魔されたくありませんので」

「なんか、ものすごーく反省できた気がする」

「そんなわけないでしょう。では、ここで50年ほど待っててください」


「ご、ごじゅうねん?」

「そうです」

「よぼよぼになって死んじゃうよ」

「大丈夫です。年を取らない魔法をかけておきますから。まあ、たっぷりと反省してください」

 そう言い残すと神は消えた。


 何もすることが無いのは辛い。不思議と腹は減らなかったが、暇つぶしの手段がないのだ。テレビもゲームも何もない。仕方がないので、マニュアルを隅から隅まで読み込んで、最後には暗記した。ここでできることは色々試してみた。


 10年経つ頃には、贋金で手に入れた服はすべてほつれてバラバラになった。めでたく生まれたまんまの姿にもどったわけだ。やっぱり人間、余計な虚飾が無いのが一番だね。そういって自分を慰めたが空しい。


 20年を過ぎることからもう日にちを数えるのをやめた。まだ、半分も過ぎてないと思うと気が狂いそうになる。でも狂えない。俺は神の手駒だからだ。使い物にならなくなって困らないように何かの力が働いていたのだろう。


 そして、更に月日が流れ……。

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