Uta〜厄災竜の救世主〜

八ツ刻 粗茶

序章 厄災と夢見る少年

序章 1話 厄災は救済を願う

この物語は、厄災の嘆きから始まる。





ずっとむかし、おかあさんがいっていた。


『お前が誰かを救いたいと心から願った時、神様が別の世界から救世主をつれてきてくれるのよ』って。




あれから、なんねんたったのかな。


おかあさんがいなくなって、くらいところにとじこめられて。そして……


もうやだ。

もうだれもころしたくないよ。

もうだれたべたくないよ。



あのこを、たべたくないんだよ……


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


「厄災が逃げたぞ!」

「追え!」

「贄がまだ生きてる!こいつが厄災を逃がしたんだ!捕らえろ!」

「お前を喰わせれば儀式ができるところだったってのに、奴隷風情が巫山戯やがって!」




ごうごうとひがもえてる。

オイラのきらいなあかいいろ。

オイラとおんなじあかいいろ。

みんながたすけをよんでるのに、オイラはなにもできない。だれもすくえない。



ねえ、かみさまがほんとにいるなら、どうかたすけてください。

ジーナをたすけてください。


オイラがしんだっていいから、あのこを、みんなを、




「たすけてよ……」




厄災は心から救世主を望んだ。

それが、別の世界を巻き込むことになるとも知らず、そしてそれがどんな結果をもたらすことになるかも解らずに、切に切に願い、そしてーー



決して交わることなき世界は、繋がった。ある種の必然を引き寄せ、在り来りな物語のように、この世界と別の世界、2つの扉を開いてしまったのだ。


恐らく救世主が来るのは時間の問題だろう。



けれどまだ、厄災はその事を知らない。

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